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胃がん Gastric Cancer

当科で行っている胃がん手術の特色① 胃をできるだけ残します

胃は食べたものをいったん貯留し,粥状にして少しずつ腸に送りだす役目をもった臓器です。そのため胃を切除すると食事量が少なくなって体重が減り,体力が落ちて術後の生活の質に大きく影響します。胃を全部取る胃全摘では20%近くも減ることがあります。当科ではがんのできた場所や広がりを考慮しながら,可能な限り「胃を残す」ことを目標として診療にあたっています。

とくに近年増加している胃上部や食道胃接合部がんに対しては、通常胃全摘術が必要と判断されるような症例でも、噴門側胃切除術によって「胃全摘を避ける」ことができる可能性があります。この術式では残した胃を食道と直接つなぐことによって発生する逆流性食道炎が問題でしたが,当科では手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使って逆流防止機構を作成することでこの課題を克服しています。また,ご高齢の胃がん患者さんの中には,心臓や肺などの併存疾患や認知機能の低下などのために,手術を受ける体力や自信がないという方がいらっしゃいます。もし範囲が小さくリンパ節への目だった転移がなければ,がんの場所だけを部分的に切除して「胃を大きく残す」こともご提案します。

「胃を残して欲しい」というのは当科にセカンドオピニオンを求めて受診される患者さんの最も多いご要望です。できるだけお応えできるような方法を検討いたします。

当科で行っている胃がん手術の特色② 進行した胃がんもあきらめませんーコンバージョン手術

ステージIIIB/C, IV胃がんは手術だけでは根治が難しい病気です。そこで,いろいろな抗がん剤と組み合わせた集学的治療を受けていただくことになります。その際,患者さんお一人お一人の治療方針は消化器内科,病理診断科などと連携したキャンサーボード(多部門の専門家による症例検討会)において決定します。発見時に切除不能と診断されたステージIV胃がんでも抗がん剤治療が著効し,切除できるまで小さくなることもあります。当科ではコンバージョン手術とよばれるこのような手術を多く手掛けています。 また,より治る可能性の高い治療,より延命効果が期待できる治療,より合併症(副作用)の少ない治療を、全国のがん専門病院や大学病院と連携し臨床試験として行っています。治療法として期待されてはいるものの保険診療では承認されていない薬剤/投与方法も,一部治験や先進医療として実施しています。どうかあきらめずにご相談ください。

当科で行っている胃がん手術の特色③ 精度の高い内視鏡手術,ロボット支援手術を実施します

内視鏡手術は創が小さいので術後の痛みが少なく,早く離床でき回復が早いのが利点です。高齢患者さんでは術後せん妄の予防に有効です。外科医にとっても、高精細スコープによる拡大視によって精緻な手術を行えるというメリットがあります。さらに手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使うことにより,あたかも外科医の手を小さくしてお腹の中で操作しているかのような,自由度の高い手術ができるようになりました。当科には日本内視鏡外科学会の技術認定医が4名在籍し,熟練したスタッフで手術を行っています。

  ・・・腹腔鏡下胃切除術のビデオです。

  ・・・手術支援ロボット「ダヴィンチ」を使った胃切除術のビデオです。

実際の手術映像が流れますので,気分の悪くなる方はご遠慮ください。

ロボット胃がん手術について,詳しくはこちら

どんな病気?

胃はおなかにある袋状の臓器で,入口(噴門部,左の図の赤い丸)は食道と,出口(幽門部,青い丸)は十二指腸とつながっています。胃の裏には膵液(消化液)やインスリンを作る膵臓があります。胃の右上には肝臓があり,そこで作られた胆汁は胆管に集められ,膵液と一緒に十二指腸に流れます。胆管の途中には胆汁を一時的に貯めておく胆のうがあります。

胃は食物を一時的に貯蔵する臓器です。食道を通って胃に入った食物は,胃酸と混ざり合って粥状になり,適量ずつ十二指腸へ送り出されます。胃にはタンパク質を部分的に消化する働きはありますが,主な役割はこの「食物を攪拌して粥状にする」ことです。

胃壁の厚さは3mmほどで,内側から粘膜,粘膜下層,筋層,漿膜下層,漿膜の5層からなっています。胃がんはこのうち最内層の粘膜から発生します。発生原因としては塩分の多い食事,野菜や果物の摂取不足,喫煙などの生活習慣に加え,ピロリ菌の感染と強い関連があります。健常な胃にピロリ菌が感染すると胃粘膜の炎症を起こし,さらに慢性に経過すると胃粘膜の萎縮をきたすことから,これが胃がん発生の素地になると言われています。日本人,特に中高年者はピロリ菌の感染率が高いため,胃がんはとても頻度の高い病気の一つです。

胃がんの進み具合を決めるもの:①どれくらい深く潜っているか

胃がんは,はじめは粘膜内にとどまっていますが,進行するにつれ次第に深くなっていきます。深さが粘膜下層までのものを早期胃がん,筋層よりも深く入ったものを進行胃がんとして取り扱います。

胃がんの進み具合を決めるもの:②転移の有無

胃がんが進むと,いろいろな経路を通ってがん細胞が胃を離れ,別の場所にいわば植民地をつくるようになります。これが転移です。経路としては次の3つがあります。

1)血管(静脈)

胃は主に4本の血管(動脈と静脈)で栄養されています。動脈は胃に入る血液,静脈は胃から流れ出る血液が通る管です。原発巣(もともとがんができたところ)を離れて静脈に入ったがん細胞は,血液の流れにのって全身をまわります。途中,自分たちが住みやすい場所(臓器)を見つけるとそこに入り込み,仲間を増やして腫瘤をつくります。これを血行性転移といいます。胃がんの場合,血行性転移をしやすい臓器は,肝臓,肺,骨などです。



2)リンパ管

胃には血管に沿ってリンパ管が走っています。リンパ管には途中に節があり,これをリンパ節と言います。正常なリンパ節は米粒ほどの大きさですが,そこにがん細胞が攻め込んで来るともともといたリンパ球を追い出して増殖し,小豆大,そら豆大と大きくなります。さらにリンパ管伝いに転移リンパ節の数が増え,原発巣からより離れたものにまで広がります。胃の周りには,先の4本の血管の根元を城門とするリンパの“縄張り”があり,この中におよそ60個のリンパ節があります。ただし,大きさだけでは転移しているかどうかわからないのと,リンパ節は脂肪の膜に埋もれているので,手術で転移しているリンパ節だけをとることは困難です。そこで,がんの進み具合や原発巣の場所に応じて縄張りの範囲を決め,血管ごと切除します。もしリンパ節にすでに転移があったとしても縄張りの中にとどまっていれば,手術で取りきることができます。しかしリンパ節転移の数が多くなるにつれてがん細胞は城門を突破し,縄張りの外に出て行ってしまいます。そして胃から遠く離れた(逆に言えば体の中心に近い)大動脈の周りにあるリンパ節などに転移をきたすようになります。そうなると転移リンパ節を手術で残らずとることは非常に難しくなります。

3)播種(はしゅ)

さらに最外層の漿膜を破った胃がんの細胞は,本体から剥がれて腹腔内を浮遊したのち,他の臓器の表面(腹膜)に種を播いたように付着し増大します。これを腹膜播種といい,それによって引き起される病態をがん性腹膜炎といいます。腸閉塞,水腎症(尿の排出路の閉塞),黄疸(胆汁の排出路の閉塞)などの症状が出ます。

胃がんの進行度(ステージ)

胃がんの進行度はこれら「深さ」と「転移の有無」で決まります。日本胃癌学会では図のように,IA,IB,IIA,IIB,IIIA,IIIB,IIIC,IVの8つのステージに分類しています。

ステージによって以下のように治療方法が変わってきます。

胃がんの治療

1)内視鏡(胃カメラ)で剥がし取る

粘膜にとどまる浅いがんの場合は,病変部分を内視鏡(胃カメラ)で剥がしとることでがんを治すことができます。

2)手術

胃がんの標準的な治療法で,転移している可能性のあるリンパ節を含めて胃を切除します。

3)化学療法(抗がん剤治療)

胃の縄張りから離れたリンパ節への転移や腹膜播種があるステージIVBの場合は,手術の前に抗がん剤治療を行います。その際,あらかじめ転移の有無を診断するために,全身麻酔下の腹腔鏡検査で直接おなかの中を観察させていただくこともあります(審査腹腔鏡といいます)。

発見された時点で既に遠くの臓器に転移していて切除不能な場合や再発の場合には,抗がん剤治療を行い,生活の質を良好に保ちながらできるだけ長期間過ごしていただけるよう治療にあたります。

主な術式

1)幽門側胃切除術

胃の下部から中部にできたがんに対して行う,胃がんでは最も多い術式です。

1)幽門保存胃切除術

胃の中部にできた早期がんに対して行う術式です。

1)胃全摘術

胃の中部から上部にできたがんに対して行う術式です。

1)噴門側切除術

胃の上部にできた早期がんに対して行う術式です。

おなかの中へのいろいろな到達法

手術の方法には開腹手術と腹腔鏡手術,ロボット支援手術があります。

腹腔鏡手術とは?

お腹にあけた小さな穴からカメラを挿入し,内部の様子をテレビモニターに映し出しながら,専用に作られた手術器具で操作を行います。この方法は傷が小さくてすむため痛みが少なく,術後の回復も早いという利点があります。高精細の内視鏡で細部を拡大しながら操作を行えるため,外科医は精緻で出血の少ない手術ができます。

ロボット支援手術とは?

お腹の中で,より正確な操作を実現する手術支援ロボット”da Vinci”を用いた手術です。詳しくはこちら

手術によって起こる可能性がある合併症(リスク)

胃がんの手術ではいろいろな術後合併症が発生することがあります。このうち縫合不全と膵液漏れが,とくに起こりやすい合併症です。

心臓や肺,腎臓などにもともと病気がある方,糖尿病,肥満症のある方,高齢患者さんは,それ以外の方に比べて手術のリスクが高くなります。手術による利益(がんがより確実に治ること)よりも不利益(手術によって術前よりもかえって状態が悪くなること)が上回ると判断された場合は,手術以外の治療法をご提案させていただくことがあります。

患者さん向けパンフレット

当科では初診時に,治療(手術)を受けていただく患者さんが病気の状態や手術の内容を十分理解していただけるように,独自で作成したパンフレットをお渡して説明しています。 次回外来受診時や入院の際にお持ちください。

クリニカルパス

クリニカルパスとは,入院から手術,退院に至るまでの医療行為を順序立てて示した行程表です。患者さんにお渡しするクリニカルパスには,入院中に受ける検査や手術の予定に加え,いつから食事が取れかとか,いつから入浴できるかといった入院生活の基本的なことまで詳しく説明されています。また退院日の予定もわかるため,その後の計画も早くから立てることができます。

当科では,術後3日目から食事が始まり7日から10日で退院できるようなクリニカルパスを用いています。

地域連携パス

当科では,がん患者さんの術後に継続的で質の高い医療を提供できるよう,かかりつけ(紹介元)の先生と連携のもと治療・経過観察を行っています。連携診療をスムーズに行うため,当科では手術後5年までの診察・検査を実施していくための冊子をお渡ししています。手術の結果や治療経過,また,かかりつけ医での診察・検査結果などの患者さんの情報を共有しながら診療にあたらせていただきますので,来院時には必ずこの冊子をお持ち下さい。

アクセス Access

電車でお越しの方:阪神電車・武庫川駅下車すぐ

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