兵庫医科大学上部消化管外科

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十二指腸腫瘍 Duodenal Tumor

どんな病気?

十二指腸はもともと腫瘍が発生しにくい臓器で,とくに乳頭部(膵液や胆汁の十二指腸への開口部)以外の場所から発生するものは非常にまれですが,最近,内視鏡(胃カメラ)検査で偶然発見される腺腫やがん(表在性非乳頭部十二指腸腫瘍)が増えてきました。ピロリ菌感染者が減ったことや除菌により酸度の高い胃液が十二指腸に流れ込むようになり,それを中和するための十二指腸腺(Brunner腺)に負担がかかって発生しやすくなったとも考えられています。ただし,本症の生物学的悪性度や治療の適応、予後などについて医学的根拠はいまだ乏しいのが現状です。

治療

早期胃癌のように内視鏡を用いて腫瘍部分の粘膜を切除する(内視鏡下粘膜下層剥離術)ことで,ほとんどの場合根治が得られますが,この操作はかなり難しく,偶発症の発生率の高い治療法です。理由は,

■腫瘍が十二指腸の曲がり角があるため、内視鏡の操作性が不安定

■粘膜が固いので、あまり浮き上がらない

■筋層が薄いので、操作中に穿孔(穴が開くこと)しやすい

■膵液・胆汁などの消化液の出口に近いので,弱くなった部分がしばらく経ってからから穿孔する・・・その場合は急性腹膜炎に対する緊急手術が必要になりますが,致死的な状態に陥ることもあります

一方,外科的に切除する場合は,十二指腸の外側からでは腫瘍がどこにあるかがわかりにくいため,きれいに取り切れなかったり,逆に過分に切除しすぎて膵臓まで切除するような大きな手術になってしまったり,という問題点があります。

このように,本来それほど悪性度の高くない腫瘍であるにもかかわらず,安全で負担の少ない治療方法がこれまでありませんでした。

当院では消化管内科とチームを組み,腹腔鏡と内視鏡で挟み撃ちにして腫瘍を切除することで,この問題を克服しています。全身麻酔下に,まず経口内視鏡で腫瘍の輪郭を確認して粘膜剥離を行った後,腹腔鏡で剥離部分の筋肉を縫縮し,補強します。新しい方法ですが,2020年4月より保険診療で受けていただけるようになりました。