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高度肥満症・糖尿病 Severe Obesity・Diabetes Mellitus

高度肥満症と糖尿病

近年,日本でも肥満の方が増えてきています。肥満は糖尿病,高血圧,脂質異常症などの生活習慣病に罹っていることが多く,そうした一連の健康障害をメタボリック症候群といいます。体格の基準としてBody Mass Index (BMI = 体重(kg)÷[身長(m) X身長(m)] という指標が一般的に使われており,これが35を超えると高度肥満とされます。高度な肥満を伴っている方の糖尿病は,食事療法や運動療法,一般的飲み薬やインスリン注射などの内科的治療では改善しにくいことが知られていますが,最近,手術によって肥満,糖尿病を治療する方法が注目されています。

肥満や糖尿病を手術で治す?

肥満の手術というと,おなかの脂肪を吸いとる手術をイメージする方も多いかもしれません。確かに美容面で一定の効果はみられるかもしれませんが,内臓脂肪は簡単に取ることができないのでメタボリック症候群の治療にはなりません。そこで外科治療として主に行われているのは胃を切除して小さくする手術です。高度な肥満の方のほとんどが食事を過剰に摂取してしまう習慣があるため,より少ない量で満腹感を得られるようにすることによって日々の食事量を制限しやすくすることを目的とした方法です。近年になって腹腔鏡手術が開発され,肥満の方に対する手術の安全性や術後の体の負担が開腹手術よりも改善されたため,世界的に普及してきました。2013年時点で,全世界で年間47万人程度の方が肥満手術を受けたと推計されています。わが国ではいまだ年間200~300例にとどまっていますが,近年この手術の需要が高まり,2014年度より,以下に示す腹腔鏡下スリーブ状胃切除術の保険診療が認められました。

保険診療で手術を受けていただけるのは次のAもしくはBの,3つの条件すべてにあてはまる方です。

どんな手術?

現在,わが国で行われている肥満手術の約90%は腹腔鏡下スリーブ状胃切除術という方法です。これは,胃の外側の部分を約80%程度切り取ってバナナのように細くし,3~4口(約100cc)も食べればお腹がいっぱいになるように胃の容量を小さくする手術です。洋服の袖(スリーブ)のようにたるんだ胃を切り取ることからこの名称がつけられました。切り取った胃は手術器具を入れるために挿入した筒(トロッカーといいます)を抜いて,そこから引き出します。術後は胃の容量が小さくなり,食事が少しずつしかとれなくなるので摂取エネルギーが減り,結果的に体重が減少します。個人差がありますが,平均30%の減量につながります。また,胃に入った食物は長時間とどまらず,素早く腸に移動します。結果,糖を代謝するホルモンの分泌が変化して糖尿病が改善すると考えられています。手術の後,それまで使っていた糖尿病内服薬やインスリン注射が少なくなったり,不要になったりすることが数多く報告されています。

 ・・・腹腔鏡下スリーブ状胃切除術のビデオです。

実際の手術映像が流れますので,気分の悪くなる方はご遠慮ください。

TEAM GENRYO(チーム減量)

兵庫医科大学病院では,実際に手術を行う外科医,糖尿病内科医,精神科医,管理栄養士,手術室看護師,病棟看護師,理学療法士からなるTEAM GENRYOを結成し,定期的にカンファレンスを行いながらチームで減量手術にあたっていますので,安心して治療を受けていただけます。

初診から手術,退院までの流れ

減量手術外来

スケジュールを円滑に進めるため,糖尿病・心疾患など持病をお持ちの方,心療内科・精神科に通院中の方は,かかりつけ医より診療情報提供書をご持参下さい。

・糖尿病内分泌代謝内科の受診・・・糖尿病,脂質異常症などをチェックします。

・精神科の受診・・・手術で問題となる精神疾患がないかをチェックします。

・これまでの食習慣・生活習慣についてお伺いします。

この時点で手術の適応があると判断された場合は,次の検査・減量入院に進みます。

検査・減量入院

約2週間,糖尿病内分泌内科に入院し減量を行います。また,手術を安全に受けていただけるかどうかを調べるためにいろいろな検査を行います。その結果によっては手術適応がないと判断される可能性もございますのでご理解ください。

通院

数ヶ月~半年の間,5~8%を目標に減量をしていただきます。BMIが45を超える方は,45以下を目指します。この間に糖尿病や高血圧などの治療も行います。

手術が決まったら

これまでの検査結果,経過から手術適応があると判断されたら上部消化管外科の外来を受診いただき,手術の準備を進めていきます。

手術が決まったら4~6週間ダイエット食(実費負担)を使用していただきます。

入院から手術まで

手術日の1~2週間前より(肥満度やそれまでの減量具合によって異なります)上部消化管外科に入院していただきます。入院後,食事の最終調整,手術室で手術体位のシミュレーション,リハビリ,必要があれば追加の検査などを行います。

手術後から退院まで

手術の翌日より少量の水分摂取可能です。術後3日目に造影検査を実施し,問題がなければ流動食から食事を始めて徐々に形態をあげていきます。術後5日ほどでの退院を目指します。

以下に該当する方には手術が行えません

18歳未満もしくは65歳以上の患者さん,重度の臓器障害(肺,心臓,肝臓,腎臓など)のある患者さん,重度精神疾患(統合失調症,コントロール不良のうつ病,人格障害など),アルコールや薬物への依存症がある患者さんは,手術自体が危険,もしくは効果が期待できないため手術を受けていただくことができません。また,当院では術前減量を行ってもBMIが45以下にならない方には手術を実施していません。

起こりうる合併症

大量の内臓脂肪が障害となるので,決して“胃を細く切り取るだけの易しい手術”ではありません。腹腔鏡手術に熟練した外科医が行うことが大切です。そうであっても,他の一般的な手術と同様,手術自体の危険性はゼロではありません。合併症が起こると入院が長くなったり,再手術や再入院が必要になったりします。

以下のような合併症を起こす可能性があります。

・全身麻酔に伴う合併症:通常よりも呼吸管理・循環管理・輸液管理が難しく,麻酔に伴うリスクが上昇します。

・縫合不全:自動縫合器の縫合線にほころびが生じ,「もれ」がおこります。糖尿病を合併している場合は縫合不全のリスクが高いとされています。術後早期だけでなく,数週間後に発生することもあります。保存的治療(絶飲食)では改善せず,ドレナージや再手術,場合によっては胃全摘が必要になることもあります。(発生頻度;0.9%)

・胃管狭窄:残った胃に狭い場所が出来たり,捻れることによって食物の通過が妨げられたりします。バルーン拡張などの治療が行われますが,最終的には再手術で胃全摘が必要となることもあります。(発生頻度;1.3%)

・胃食道逆流症・逆流性食道炎:術後20~30%の症例で起こります。胃管狭窄が原因になることもあります。プロトンポンプ阻害剤などで保存的に治療しますが,重症の場合は再手術でつなぎかえが必要になることもあります。(発生頻度;0.4%)

・その他 一般的な合併症:術後出血,呼吸器合併症,循環器合併症,下肢静脈血栓症・肺塞栓など

手術を受ける際に留意していただきたいこと

患者さんは術後に食事量が極端に低下するので,食事を少ししかとれないというストレスを必ず覚えます。それ自体が治療効果ではありますが,切り取った胃は元に戻らないので覚悟して手術を受ける必要があります。逆に,患者さんによっては食べられる量が徐々に増えて結局元に戻ってしまう「リバウンド」が起こることがあります。従って,術後も食事制限を守る努力が何よりも重要です。

この手術を受けたことで人生が変わったとおっしゃる方が多くいらっしゃいます。高度肥満,糖尿病でお悩みの方はこうしたことをよくご理解いただいた上で手術をご検討ください。

アクセス Access

電車でお越しの方:阪神電車・武庫川駅下車すぐ

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