2023.06.27

2022年度「女性医師・研究者顕彰」の授賞式を開催しました

2023年3月7日、2022 年度兵庫医科大学(医学部)「女性医師・研究者顕彰」授賞式を執り行いました。

本顕彰は、研究・臨床・教育活動において優れた業績をおさめた女性医師・研究者、熱意をもって研究に取り組む若手、またダイバーシティ環境実現への取り組みを顕彰するものです。
当該女性研究者自身とこれに続く若手女性研究者の励みとし、研究意欲の向上や将来を担う優秀な人材の育成につながることを目的としています。
2022年度は「トップリーダー部門」「女性研究者学術部門」の2 部門を設置し、合わせて6 名の女性研究者が受賞しました。

表彰に続いて、各部門の受賞者代表として、髙雄 由美子 教授、中山 真美 准教授よりスピーチが行われました。
最後には鈴木 敬一郎 副学長より、受賞者一人ひとりに対する講評と励ましの言葉がありました。

受賞者のご挨拶

トップリーダー部門  ロールモデル賞

高雄 由美子 (ペインクリニック部 教授)

この度は名誉ある賞を受賞させていただき、大変光栄です。
私は、2019年に兵庫医大ペインクリニック部に異動してまいりました。現在はペインクリニック部の長として、痛みの診療、若手の先生方の指導、痛みの臨床研究を行っています。本院のペインクリニック部は全国的にみても規模が大きく、特に脊髄刺激療法に関しては突出した症例数を誇っており、臨床研究に加え基礎研究も開始しております。数年後には成果をご覧いただけると思います。また兵庫医大では、臨床疼痛学を設置し、学生時代からの痛みの教育に力を入れていますが、われわれは学生への痛みの教育やBSLを担当しています。痛み、特に慢性難治性疼痛はいろいろな因子が絡み合い集学的な治療が必要です。ペインクリニック部は、厚生労働省の慢性疼痛診療システム普及・人材養成モデル事業に長年参画していることもあり、2022年からは院内に慢性疼痛集学的治療チームを立ち上げています。
今後の目標は、若手や後輩の育成です。本校出身の先生が将来大学病院を担っていけるようお手伝いできればと考えています。2023年4月より本校のダイバーシティ推進室長を拝命いたしました。ダイバーシティとは多様性のことですが、個人個人が性別や人種、信条、能力などの差異で差別や区別をされず、優秀な人材や頑張っている人材に活躍の場を提供するのが推進室の仕事です。本校は女子学生の比率が年々増えていることもあり、解決すべき重要事案の一つに男女参画問題がありますが、男女問わず正当な評価を受ける土壌をしっかり作ることがわれわれの責務です。大変な重責ですが、母校のために努力していく所存ですので、今後ともご支援宜しくお願いします。

トップリーダー部門  次世代リーダー賞

柏 薫⾥ (医学教育学 / 整形外科学 講師)

2022年度は、医学教育にキャリアシフトした1年目で、教育実務が中心であった。1年目から多くの科目(9科目の責任者、7科目の担当者)を携わる機会を得ることができた。課題作成・評価、TBL運営、図らずもチーム医療演習(参加学生400名以上)の運営を経験し多くの教職員と協力し完結できたことは大きな経験となった。担当科目だけでなく、試験問題のブラッシュアップ、成績不良者合宿への参加、学修指導(面談)、国家試験受験者の宿泊施設での当直など、いただけるお役目には積極的に取り組んた。CBT、Pre/ Post-CC-OSCE、模擬患者に関する理解を深めCBT統括実施責任者、標準模擬患者養成担当者の認定を受けた。今後の目標としては、昨年経験したことを効率的・効果的に実施するために深く学ぶ必要がある。まずは、指導方法や評価法であり、一つは外科系の教員として外科系教育法を習得することである。また、学外の医学教育に携わる先生方との関係も構築し学ぶ機会を増やしたい。2023年度は担当する「チーム医療演習」において、机上での学修の集大成さらには多職種連携総合臨床実習(篠山)の前段階に位置づけられる魅力ある演習となるよう、ICTによる学修効率アップ、チーム討議や発表会の評価方法の検討などを行い、さらなる内容の充実を図る。学修指導については、年度早期の実施など実施時期の検討や1on 1指導の技術を高め丁寧に効果的に取り組みたい。研究に関しては、臨床だけでなく医学教育を対象とした研究に取り組まなければならない。診療については現状維持であるが、医学教育のためにも大学の臨床現場で学生と関わる機会を持てる方がいいと思っている。医学教育センター、学生部委員会、ダイバーシティ推進の立場から、様々な環境の学生の支援ができるよう取り組んでいきたい。

トップリーダー部門 次世代リーダー賞

吉原 享⼦ (血液内科学 助教)

・取り組み概要 CART療法後の造血障害発生機序に関する研究
【概要】CAR-T細胞治療は2019年認可された新しい細胞療法である。その抗腫瘍効果は強力である一方で通常の化学療法と異なった様々な副作用を生じることがある。遅発性血球減少はその一つでありその発症機序は未だ明らかではない。我々はその免疫学的機序による骨髄抑制の可能性に着目し当院にてCAR-T療法を行った17症例において微小PNH血球と遷延性血球減少との関連を検討した。
【結果】遅延性血球減少が出現する投与後1-2カ月の間にPNH血球が出現し、回復期である2カ月後以降でPNH血球が減少していることより免疫原性血球減少の可能性を伺わせた。これらより、CAR-T治療による免疫の活性化が、免疫原性造血障害を引き起こした可能性があると考えられ、実際難治性の血球減少を来した際に免疫抑制剤を使用することで血球減少が回復する症例も経験した。
本報告は2021年 HemaSphere 2021 Aug 11;5(9):e628 に論文化している。
【今後の目標】多数の症例からさらに多くの臨床研究に取り組み病態解明や治療効果の層別化に役立てたい。また血液内科の魅力を多くの学生や若手の医師に伝えるよう努力したい。内科医は忙しくライフワークバランスが良くないと思われがちであるが、2人の子供を育て内科診療を行っている自身を将来に不安を抱える若い医師へのロールモデルとして自信をもってもらえるように頑張りたい。

女性研究者学術部門 優秀賞

中⼭ 真美 (地域総合医療学 准教授)

子育てと家事をこなしながらの臨床業務と研究の両立は、振り返ってもかなりの精神的身体的負担であった。論文アクセプトの瞬間の喜びと興奮が忘れられず、つらいながらも今まで継続できたのは婦人科外科医の夫の存在によるところが大きい。現在の自身の研究業績は、英文62報、total impact factor 211点となり、「一応研究をやっています」と言えるだけの業績は積み重ねられたのではないかと思う。手術数4300件、英文250報、total impact factor 1000点を超える夫には到底及ばないが、最も身近な存在である夫の頑張りが私にとって大きな励みであり、モチベーションである。また、留学時代のボスや仲間とは現在も研究を通したつながりが続いており、これも大きな支えとなっている。自身の研究テーマは「癌創薬の基盤研究」と「高齢者の体組成と疾患の関連性」であるが、常に臨床に還元できる基礎研究、臨床研究を意識しながら継続していきたい。今後の目標は、現職のささやま医療センターでの研究基盤の構築と、女性医師研究者の育成である。同期の女医を見渡すと、大学人として研究を継続している人はほぼゼロに近い。女性医師にとって、臨床は当たり前であるが、これに研究も継続するというのはかなりのハードルである。学位論文のための腰掛研究の後、年配になってから再度研究を始めることはほぼ不可能であり、ある程度若いうちに研究の立案、実践、論文作成、という一連の基本的なノウハウ(基礎研究はとくに技術や知識の習得が大変)を学んでおくべきである。そして、研究を国際誌に発表するワクワク感も体験しておくとよいと思う。30-40代は女性にとって、結婚・出産・子育てとライフイベントが多く、多忙を極める時期でもある。これらすべてを経験した私だから理解できることが大いにあるため、次世代の女性研究者の育成にも携わることが出来たら嬉しく思う。

女性研究者学術部門 若手未来賞

佐伯 彩乃 (⿇酔科・疼痛制御科学 助教 ※受賞時:病院助手)

Rubinstein-Taybi症候群を含む複数の奇形を合併した症例における気道評価と戦略に基づいた麻酔管理についての研究発表を行いました。最近ではMcGRATH®をはじめとした新しいデバイスが開発され、困難気道に遭遇する頻度が減少しています。しかし、その結果として困難気道への経験も減ってしまったため、術前の気道状態を慎重に評価し、麻酔中に起こり得る気道の困難な状況に対応する戦略をより緻密に立てる必要があります。
私は昨年度に学位を取得し、臨床麻酔・ペインクリニック診療に加えて現在は緩和ケア医療にも関わっています。痛みはもちろんのこと、QOLを著しく下げる様々な身体症状や精神症状を緩和して、癌治療をスムーズに行えるように、あるいは終末期も患者様らしく過ごせるようなお手伝いをすることに大変充実感を感じています。今年度からはフルタイムで働くことになり、子育てと仕事で疲れることもあるかもしれませんが、家族や同僚、上司にサポートしていただきながら、感謝の気持ちを忘れずに取り組んでいきたいです。今後も臨床、研究、教育のいずれもスキルアップを目指し、また次の後輩に繋げていきたいです。

女性研究者学術部門 若手未来賞

⻄村 理恵 (臨床疫学 博士研究員)

所属の研究室において実施している、研究者に対する研究公正・倫理に関する学修プログラムの開発は、これまで疎まれていた(?)倫理・公正について能動的に学修できるものであり、他に例をみないものになっています。一般医師を対象とした研究公正に関する経験や意識に関する調査を実施し、一般医師が研究公正に対して抱く認識等を把握し、学修プログラムの開発に活かしました。今後もさらに学修の利便性や内容の質を高めてまいります。公正な研究は質の高い研究につながりますので、研究者の方々に能動的に研究公正・倫理のセンスを身につけていただき、本学の、本邦の、研究の質が高まることに間接的に貢献できればと思います。
教育面では、研究公正に関する専門性を生かした活動はできておりませんが、医学教育センターの非常勤講師として、鍼灸師という資格を生かして、4年生に対する講義を担当しております。患者のニーズは多様化しており、西洋医学の枠を超えた広い視点から患者さんに対応できること、また、他職種連携に対する意識の醸成の一助になれば幸いです。
今後の目標は、現在実現できていない、研究公正に関するFDや鍼灸に関する研究、東洋医学サークル支援なども行いたいです。いずれにしても、教員ポストは必須です。学内において、医師でないからこその柔軟性や客観的な視点を生かした仕事があると思っておりますので、そういった立場で、自身の立ち位置を見つけていきたいと思っております。

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