ロールモデル紹介
イクボスの取り組みイクボスの
取り組み
イクボスの取組み紹介
職場も、家族も共に笑顔に!
兵庫医科大学 内科学 糖尿病・内分泌・代謝科 講師
庄司 拓仁
女性医師も多く所属する診療科の上司として、部下のワークライフバランスや働きやすい職場風土づくりに取組む。
自らも父親として子育てに奮闘。2019年7月には、兵庫県医師会イクボス大賞 特別奨励賞を受賞。
取り組む前と現在で、働き方や考え方にどのような変化がありましたか?
取り組む前
現在
休暇
【取り組む前】
休めるわけない。穴埋めどうするの。他の先生も忙しいのに、迷惑かけられない。外来を閉じる方がしんどい。
【現在】
若手のためにも休めるときは休まないと!お互い様。意外に、なんとかなるみたい。
退勤時間
【取り組む前】
みんな仕事しているのに早く帰れるわけがない。
【現在】
今日は勘弁!六時半までに保育園に行かないと!
ワークライフ
バランス
【取り組む前】
正直、仕事>家庭。
【現在】
仕事の代わりはしてもらえるけど、夫/父の代わりはいない。
職場での雑談
【取り組む前】
プライベート?こっちも話さないし、相手にも立ち入らない。
【現在】
プライベートのことをある程度知ってもらえる方がお互いの事情がわかっていい。
育児
【取り組む前】
子育て?なんとかなる。(正直、妻任せ)
【現在】
しんどい!両親どっちも協力しないとこれはムリ。(当事者意識を持たないとヤバイ!)
イクボスとしての取り組みを行うきっかけとなった出来事はありますか?
育児の難しさは経験しないと想像しづらいですが、苦労が目に見えると、周囲は思いやりを見せてくれます。昨今の認可保育園入園は、4月の0歳時クラスでなければ困難です。私の娘も入園できませんでしたが、幸いにも当院の提携認可外保育園で何とか娘を預かって頂き、妻が復職できました。
保育園へは自転車にチャイルドトレーラーという荷車を付け職場隣接の保育園に送迎しました。ものすごく目立つせいか、通勤・通園中に好奇の目で見られ、最初は気恥ずかしく思いました。ですが、乗っているのが幼い娘だとわかると誰もが笑顔になり、育児の「見える化」が思いがけず周囲とのコミュニケーションツールになり、これが大きな転機となりました。
医局員のワークライフバランスに対して、どのようなことを心掛けていますか?
近年、男女比率の変化だけでなく様々な価値観をもつ医局員が増え、考え方の転換が必要になっています。もちろん仕事を頑張ることは個々人にとって非常に重要であることに変わりありません。
その上で、医局員のワークライフバランスを確立するためには、「明らかに過剰な仕事に関しては無理しない」「プライベートを優先しても罪悪感を抱く必要がない」ということを、上級医を含めた医局全体が自然に思える環境が必要ではないでしょうか。
最近は積極的に家庭で困ったこと、特に自分の失敗談や楽しかったことなどを、誰彼となく話すように心がけています。そうしているうちに、普段から医局内でプライベートについても話せる雰囲気になりました。
ご自身の仕事と家庭の両立においてどのような工夫をしていますか?
そういえば何を工夫しているんだろう?と考え込みました。思いつくまま列挙してみます。
- なるべく就業時間内に仕事を終わらせること(まあなかなか終わらないですけど。)
- スマホアプリで、妻や家族の予定と自分の仕事の予定を家庭内で共有し、カンファレンスや会議・研究会等の仕事と保育園お迎え日などの調整を妻と行っていること
- 保育園のお迎えで帰宅時間が比較的早くて遅くまで働けない分、朝型の生活にして家でできる仕事はそこで行う(娘の寝かしつけで疲れ果てて起きられないことも。)
- なるべく心と家庭にストレスを貯めこまず、「楽しい!わははっ」と笑える精神状態の維持管理(なかなかこれも難しいですが。)
ワークライフバランスや医師の働き方に関して、今、感じておられること・今後実施していきたいことがあれば教えてください。
私が働きやすさを真剣に意識し出したのは恥ずかしながら比較的最近、自身が育児に悪戦苦闘する中間管理職になってからです。女性医師が働きやすい環境とは、誰にとっても働きやすい環境であり、制度のみでは職場・家庭を支えきれません。
短い睡眠時間でバリバリ働きながら家庭と両立するスーパーダディ・スーパーマミーもいますが、誰もがそうはなれない。「普通の医師が過剰に頑張らずとも働き続けるには?」この問題が自分事になりました。すぐに答えは出ませんが、今自分ができることをやるしかない。お互いさまと思いやれる心の余裕や、誰もが気兼ねなく休みを申し出られる状況が重要と考え、医局の雰囲気作りを試行錯誤中です。
メッセージをお願いします。
働きやすい職場環境は制度としては整ってきています。ただ、制度のみでは不十分で、職場全体の意識が変わることが必要です。「自身のワークライフバランスへの意識がどのように変化したのか?」一つの決定的な出来事があったわけではなく、ささやかな事柄、例えば日々の娘の送り迎え、入園式に外来を閉じざるをえない時の同僚の先生方の温かい反応、妻の海外出張時のドタバタや、男女共同参画への参加等がありました。
また、意外に多くの医局員がいろいろな事情を抱えていることを知り、いつでも誰にでも育児・介護・病気等で困ったことになりうるという危機感も考え方の変化につながりました。何事も“自分事”、という感覚が重要ではないでしょうか。