外来案内 Outpation

生殖医療センター部門

兵庫医科大学病院不育症外来について

 不育症は、妊娠はするけれど2回以上の流産・死産してしまい、児が得られない場合と定義されます。不育症は、子宮筋腫や子宮内膜症の様な単一の診断名ではなく、様々な病態を含んだものです。現在、不育症の原因(リスク因子)とされているものには、甲状腺機能異常、抗リン脂質抗体症候群、子宮形態異常、夫婦染色体異常があげられます。これらのリスク因子は、それぞれの治療方針が一定していない場合もありますし、それぞれが複合する場合もあります。また、これら以外にもストレスなどの要因が病態をさらに複雑にしている場合もありえます。また、たまたま胎児異常が繰り返されただけの偶発的な流産も含まれることなどより、なかなか治療がうまくいかず、患者様の心を悩ませ苦しませてしまうことが多い疾患です。
  また不育症の原因を調べても60%ほどの患者さんはリスク因子不明(原因不明)と診断され、不安を多く抱えたまま治療に望まれている方も多いかと思います。しかし適切な検査と治療を行うこと、適切なフォローアップを行うことにより多くの方々は赤ちゃんを得ることができることも知られています。   

経験豊富なスタッフ

  不育症には、不妊症と非常に近接した部分があります。排卵や妊娠の維持に関わるホルモン産生の異常や免疫の異常などが時には不妊症の原因となり、また時には不育症のリスク因子となることもあります。実際、両者の原因を持ち合わせている患者さんも少なくなく、その原因を総合的に診断し、治療していくことが重要となります。兵庫医科大学は不妊診療、不育症診療双方に力を入れて診療にあたっており、妊婦健診中も定期的に生殖外来でもフォローアップするなど妊娠の成立から出産にいたるまでのシームレスな診療を心がけております。兵庫医科大学産科婦人科では日本生殖医学会生殖医療専門医(6名)と日本内視鏡外科学会技術認定医・日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医(2名)を中心に不妊・不育症外来を運営しています。また不育症診療に関しましては、米国有数の不育症診療施設であるRosalind Franklin University / The Chicago Medical Schoolにおいて不育症の診断・治療法を学んだ福井淳史准教授を中心とするスタッフが対応しています。

最新の治療成績と研究データに基づいた診断と治療

 一般に、不育症治療は妊娠前の治療および妊娠成立後の治療の双方が必要になります。例えば、血が固まりやすくなってしまう血液凝固異常を有する不育症患者さんに対して、私どもは妊娠が成立する前から治療法としてヘパリンの着床補助作用に注目し、積極的に妊娠前からのヘパリン療法、アスピリン療法を行っております。本治療法により92.3%の方が妊娠の継続あるいは生児獲得をされております(染色体異常により再び流産となった症例を除きます)。
 兵庫医科大学産科婦人科の不育症外来の特徴のもう一つは、不育症の検査・治療を生殖免疫学の視点から研究し、臨床応用していることです。少し難しい話になりますが、私どもは1997(平成9年)から子宮および末梢血に存在する免疫担当細胞であるNK(ナチュラルキラー)細胞という細胞に着目し診療・研究を行ってまいりました。NK細胞は妊娠の成立や維持に必須の細胞です。妊娠が成立時には、実に子宮に存在する免疫に関与する細胞の7割以上がNK細胞です。私どもはこれまでに、流産患者さんにはNK細胞の機能異常が認められること、NK細胞の機能異常の正常化を目的とした治療が着床不全や不育症に対する治療となる可能性があることなどを報告してまいりました。そして、これらの研究結果から、免疫異常を有する患者さんを特定することにより、特殊な薬物療法(ガンマグロブリン療法、脂肪乳剤(イントラリピッド)療法など)を行うことで良好な成績が得られることを明らかにしています。

おわりに

 不育症外来は主として火曜日と木曜日の午後に開設しておりますが、ご都合により曜日を変更しても対応させて頂きます。私どもの不育症患者さんへの取り組みや研究が少しでも皆様のお役に立ち、一人でも多くの患者さんに喜んでいただけることが私たちスタッフ一同の願いであり喜びでもあります。これからも関西エリアの中核的施設としての役割を果たしつつ、さらには日本中、世界中の方々に皆様に福音をもたらすことができるよう努力していきたいと思います。