研 究(研究プロジェクト・研究資金)

感覚生理、特に末梢―脊髄、脳に至る感覚情報処理機構、疼痛、掻痒や鎮痛の発現機構、自律神経による内臓の中枢性制御機構、さらに、情動形成と記憶・学習の関係や意識・覚醒など脳機能を統合的に理解する研究、発達障害など脳機能異常の研究などを行っています。
生理学研究所神経シグナル研究部門HPの情報も掲載しています。

研究プロジェクト

光操作による青斑核ニューロンの活動制御とIn vivo シナプス伝達調節機構の解析
レンチウィルスベクタを用いて、青斑核にチャネルロドプシンを発現させ、光刺激による活動制御 を行っています。現在は、青斑核から脊髄へ下行する痛覚抑制系を光操作で活性化し、in vivo パッチクランプ法を用いて脊髄における抑制作用を解析しています。慢性疼痛を有効に抑制する鎮痛法の開発も目指しています。 また、青斑核ノルアドレナリンニューロンは大脳皮質など脳の様々な部位へ投射し、意識や覚醒などにも重要や役割を果たします。これら様々な脳機能における青斑核の役割について、行動実験など個体レベルの統合的な解析に加え、in vivo パッチクランプ法を用いたシナプスレベルの詳細な機能解析を行いたいと考えています。

自閉症モデルマウスにおけるシナプス伝達異常の解析
未だ不明なことが多い発達障害によるシナプス伝達の変化に着目し、我々は脆弱X症候群のモデルマウスの1つであるFragile X knockoutマウスを用いた解析を行っている。大脳皮質におけるシナプス伝達とシナプス可塑性の欠損および異常の仕組みを明らかにしています

自律神経系を介した内臓器官活動の中枢性制御機構
脊髄における副交感節前ニューロンは、膀胱における排尿や大腸の蠕動運動を指令することが知られています。しかしその機構の詳細については、多くの点が未だ不明のまま残されています。そこで、この副交感節ニューロンを対象として、内臓器官活動の脊髄における制御機構をシナプスレベルで詳細に解析しています。IR-DICを用いて脊髄スライス標本節前ニューロンから記録を行いシナプス回路の同定を行っています。また、新規に副交感節前ニューロンからの in vivo パッチクランプ法も開発しました。免疫組織化学染色法なども用いた統合的なアプローチで排尿の中枢機構や大腸の運動制御機構を明らかにしています。
情動形成と記憶・学習のメカニズム
種々な感覚入力から情動・感情が形成されます。その情動・感情の形成過程の詳細を明らかにするために、我々は感覚入力と情動の双方に関わりを持つ前帯状回に着目し、感覚ー情動の神経回路を明らかにしようとしています。また、感覚―情動系と記憶・貯蔵の関連にも着目し、海馬を含めた研究分野を新たに立ち上げています。

In vivo パッチクランプ法を用いた痛覚及び掻痒シナプス伝達抑制機構とその異常の解明
独自に開発したin vivo パッチクランプ法を用い,感覚情報、特に痛みや痒みの伝達と、未だ多くの点が不明なその抑制機構に迫っています。GABAニューロンに蛍光タンパクを発現したVGAT-Venusラットを用い、痛覚抑制に重要な役割を果たすGABAニューロンの役割を調べています。また、痛みや痒み情報の中枢への入り口である脊髄後角細胞から記録を行い、生理的な刺激によって誘起される興奮性および抑制性シナプス応答を詳細に解析し、脊髄内における抑制回路を同定しています。また、脳幹青斑核からのin vivo パッチクランプ法の開発に成功し、脊髄へ下行性に投射するノルアドレナリン神経を介した抑制機構、さらに、これら内因性抑制系を対象に鎮痛薬や抗掻痒薬の評価を行っています。また、末梢神経(A delta線維やC線維 )におけるNaチャネルの解析や行動薬理学的、免疫組織学的解析と併せて統合的に解析するとともに、神経因性やがん性疼痛の発症メカニズムの解明も行っています
In vivoパッチクランプ記録法や記録細胞の形成

痛覚刺激によって発生した脊髄後角細胞の活動電位の抑制機構。青斑核から下行性にノルアドレナリン神経を介して(1)、皮膚への触刺激によって(2)、GABA作動性抑制性シナプス応答(IPSC)が賦活化されています。



脊髄後角では、背腹側あるいは吻尾側方向に樹状突起を伸展するニューロンが、痛みや痒みの 伝達抑制に重要な役割を果たしています。
今までに取得した競争的研究資金(代表のみ)
科研費
2023-2025 挑戦的研究(萌芽) 古江
「脳情動回路の人為的活動操作と運動ニューロン活動を捉える新規オプトタグ記録法の開発」

2020-2024 基盤研究(B)  古江
「排尿の脊髄中枢制御機構の解明と機能回復のための光遺伝学的神経回路制御法の確立」

2020-2025 基盤研究(B) 古賀浩平
「慢性疼痛の発達に伴う時期特異的な神経回路の異常」

2021-2023 挑戦的研究(萌芽) 古賀浩平
「慢性疼痛が惹起する精神疾患を司る皮質下ー皮質の局所神経回路」

2020-2022 若手研究 古賀啓祐
「細胞種特異的遺伝子編集法を用いたセロトニンによる脊髄痒み調節メカニズムの解明」

2021 奨励研究 中村
「脳疼痛情動ニューロンの活動操作と鎮痛発現に必要な総ニューロン数の定量化」

H29-31 基盤研究(B)  古江
「特定神経回路の光・薬理遺伝学的操作による疼痛脳機能連関のin vivo解析」

H29-31 若手研究(A) 古賀
「感覚と感情が相互に増強する慢性疼痛の神経分子機構」

H29-31 挑戦的研究(萌芽) 古賀
「シナプス長期増強に着目した不安を形成する新たな神経分子機構」

H28-30 挑戦的研究(萌芽) 古江
「前帯状回からの覚醒下in vivoパッチクランプ記録法の開発」

H26-28 基盤研究(B)古江
「覚醒・意識レベルと疼痛の中枢連関機構の解明」

H25-26 挑戦的研究(萌芽) 古江
「霊長類を用いたGABA制御能を指標とする新規疼痛評価系の確立」

H23-25 基盤研究(B) 古江
「In vivo脊髄痛覚シナプス伝達の中枢性制御」

H20-22 基盤研究(C) 古江
「In vivoパッチクランプ法を用いた下行性痛覚抑制系可塑的変化の解析」

H20-21 特定領域研究 古江
「In vivo脊髄抑制性シナプス入力の生理的役割とその可塑的変化の解析」

H18-19 基盤研究(C) 古江
「生後発達に伴う脊髄痛覚伝達系成熟過程のin vivoパッチクランプ解析」

H16-17 若手研究(B) 古江
「カドヘリンノックアウトマウス痛覚回路のin vivo パッチクランプ解析」

H15-16 特定領域研究A(公募) 古江
「痛覚回路可塑性の in vivo パッチクランプ解析」

H13-14 奨励研究A 古江
「In vivo パッチクランプ法を用いたノルアドレナリン痛覚抑制作用機序の解析」
財団等
2021-2022 研究推進助成  古賀啓祐
「前帯状皮質神経を介した新規感覚制御回路の探索と役割解明」

2019-2021 兵庫医科大学事業 『Hyogo Innovative Challenge』 古江
「疼痛脳内ストレスの実体と顕在化メカニズム全容の解明」

H29 第一三共生命科学研究振興財団 海外共同研究支援助成  古賀

H28-29 GSKジャパン研究助成  古賀
H28-29 加藤記念バイオサイエンス振興財団優秀賞 古賀
H28-29 中冨健康科学振興財団ブレインサイエンス振興財団  古賀
H28-29 ノバルティス科学振興財団  古賀

H28 弘前大学若手・新任研究者支援事業  古賀

H27-28 第34回唐牛記念 研究助成B  古賀

H27 第27回 金原一郎記念医学医療振興財団  古賀
H27 弘前大学若手・新任研究者支援事業  古賀

H23 Fragile X Research Foundation of Canada  古賀

H14 ブレインサイエンス振興財団第16回研究助成金  古江
「大脳皮質からのin vivo パッチクランプ法開発」

H13 ナリシゲ神経科学研究助成金  古江
「マウスin vivo パッチクランプ法の開発-遺伝子操作マウスのシナプス解析」

その他 研究分担者として数プロジェクトに参加

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