心房細動カテーテルアブレーション

カテーテルを受けられるまでの流れをご紹介いたします

心房細動を治療する理由

 心房細動は心房の不整脈であり、これ単体では致死的要因にはなりません。
 しかし、度重なる動悸は辛く、頻回に救急受診をされる方もいらっしゃいます。
 また、脳梗塞の原因となります。心房細動による左心耳血栓は全ての脳梗塞の30%程度の原因とされます。
 心房が痙攣しつづけて心房ポンブ機能が落ちることにより、心臓全体のポンプ機能は低下します。とても元気な方には問題ないですが、心機能が低下している患者さんには更に追い打ちをかける負荷になります。車で例えれば排気量が落ちたことと同じです。強い坂道のような重い負荷はこなせなくなります。この状態がひどくなれば”心不全”という病態を引き起こします。
 以上をまとめると心房細動を治療する目的は

  • ①脳梗塞予防
  • ②心機能(心ポンプ機能)の保持
  • ③生活の質(Quolity of Life)の保証 

              と言えます。

カテーテルを受けるまで

カテーテルの適応を評価します

まず御自身の心房細動がカテーテル治療が向いているのかを知る必要があります。
主な評価項目ですが
 1)心房細動が続いている時間
 2)基礎心疾患の存在 (心臓の構造の問題がないか)
 3)年齢

1)10年間以上、心房細動が続いている方等にはカテーテル治療は向かない可能性が高く、4-5年以上続いている方には正確に基本調律(洞調律)に復するか後述の電気的除細動を検討する必要があります。
2)高度な大動脈弁や僧帽弁の異常(弁膜症)があっても、カテーテルは向きません。他、左房径があまりにも大きいとカテーテルが十分に届かない可能性もあるので、慎重に検討させていただいております。そのために受診当日は皆様に心エコー図検査を受けていただいております。
3)年齢も大切な要件の一つです。80歳以上の方は積極的適応とは考えられないケースもあります。個別にご相談させていただいております。
また腎臓機能や糖尿病の状態が悪いとカテーテル治療の方法を考える必要があるので、合わせて採血も実施します。

電気的除細動(DCカルディオバージョン)

非常に長い間持続(4~5年以上持続)する場合、心房細動が確実に止まるのか、止まった後に脈が遅くならないのかを確認するために、一度1泊2日の電気的除細動「DCカルディオバージョン」目的に入院をおすすめいたしております。(経食道心エコー検査を事前に行います)
その後に患者さんによってはピルジカイニド、シベンゾリン、アミオダロン、ベプリジルなどの不整脈薬を処方することがあります。これは仮に不整脈が電気的除細動で止まっても、しばらく洞調律(普通の状態)がつづいている方が好ましいと考えているためです。アブレーションが終了したら多くの方では薬は終了しています。

心臓アンギオCT/心臓造影MRI

当院ではカテーテル手技に先立ちまして、心臓CTアンギオ、もしくは心臓造影MRIを撮影しております。冠動脈疾患(心臓を栄養する血管の障害:狭心症など)の併存がないことと、左房に還流する肺静脈の形態を確認しています。冷凍バルール法を用いてアブレーションする場合には非常に重要になっております。
腎機能障害やアレルギーで造影CTが施行できない方は、単純CTで左房構築を行っております。

入院直前

全例で経食道心エコー図検査を行なっております。

安全に手技を行うために全例で事前に経食道心エコー検査を行っております。
これは左房の中に(特に左心耳の中)に血栓がないことを確認する上で非常に重要です
また必要に応じて胸部レントゲン、採血を追加いたしております

入院中

アブレーション当日は1日中安静が必要です。

当院では1日3件の心房細動のカテーテル治療を行っております。そのために呼ばれる時間が患者さんによって異なります。前日は水分と食事をしっかりとってお休みください。

カテーテル当日は帰室後はベットでの安静になります。当日は歩けません。腰痛を訴えられる方が多いですが、痛み止めで対処いたしております。術後4時間後に圧迫帯の解除をします。

カテーテル翌日には歩けるようになります。朝に当直医が穿刺部位の問題がないかを確認しますので、それまでは御病室にいてくださいますようお願い申し上げます。(クライオアブレーションでは抜糸が必要です。)
合併症がないか、心臓の動きが悪くないかを確認するために、翌日は心エコー、心電図、採血を行っております。
退院前には主に今後の注意事項をお話しさせていただきます。

その後は心房細動の再発がないかを中心に拝見させていただいております。
自然停止する再発には処置は不要ですが、4時間以上持続する場合は、抗不整脈薬の点滴もしくは電気的除細動を検討します。

退院

退院はアブレーション後2日目から可能です。

通常、退院はカテーテル翌2日後からといたしております。
患者さんと個別にご相談をさせていただいております。

退院後の生活について

退院後の特記すべき生活制限はありません


心房細動は突然死をする不整脈ではないために、心不全を合併しない限り、それを予防するために今までの日常動作を制限する必要性はありません。しかし注意していただくことは数点あります。

節酒:飲酒は心房細動のリスクになります。後述するBlanking period 内での再発を抑えるためにも、過度の飲酒は控えていただきますよう、お願い致しております。

激しい運動の制限:適度な運動は問題ないと考えておりますが、やはり術後間も無くマラソン大会や競技スポーツに戻られるのは再発リスクをあげるかもしれません。一度、主治医にご相談されてからにしてください。

穿刺部位からの再出血:退院まで注意して観察いたしますが、傷の治癒がやや遅い方がいらっしゃいますので、退院後4-5日は注意して御観察ください。

抗凝固薬は3ヶ月は内服 現在のところ抗凝固薬に関しては明確な中止基準は存在しません。ただし、術後は3ヶ月は通電焼灼部位で血栓ができる可能性があるために内服していただくことが必要になっています。そのためカテーテルを受けてもすぐには抗凝固剤を中止をしないようにお願いいたします。

再び心房細動が起こってしまったら、、

心房細動が再発しても慌てることはありません


心房細動カテーテルアブレーションの奏功率(術後1年間で心房細動がない方)は、当院での2013-2017年度の統計で発作性心房細動:約75% ・持続性心房細動:約70% の方が1年間心房細動なしと出ています。また2回手技をされた方では更に心房細動がなく経過されておられます。

また術後3ヶ月以内(Blanking period)内では比較的再発が多いのですが、左房焼灼部位の治癒過程で不整脈が起こることが知られています。これは後期の’本当の再発’には関連性が乏しいと考えられていますが、少ない方がいいとする報告もあります。適宜、内服の追加や再度DCカルディオバージョン(電気的除細動)を検討させていただきます。

心房細動は併存疾患の状態が余程悪くない限り、突然死する不整脈ではありません。再発されても慌てる必要はなく、長期的に一番良いと思われる方法を落ち着いて選択することが肝要です。外来で再発された場合は、再カテーテルアブレーションも含めて最善の方法を、患者さんと一緒に考えていきたいと思います。