心房細動カテーテルアブレーション

心房細動カテーテルアブレーションの手技の紹介

高周波アブレーション(RFCA)では左房ー肺静脈間を焼灼通電します。

心房細動のカテーテルアブレーションは高周波、もしくは冷凍バルーンによる左房-肺静脈間の拡大肺静脈隔離術を主体として行っています。
これは心房細動が肺静脈ー左房間からの心房性期外収縮により始まるとされる理論に基づいています。
この方法により心房細動の有意な抑制を認めております。当院での治療成績は、2014-2016年の発作性心房細動(1回の発作が7日以内)で85%以上, 持続性心房細動 (7日以上持続で2年未満)で65%以上が、抗不整脈薬なしで術後1年間の心房細動の消失を認めています。

高周波アブレーションでは両方の肺静脈の電位を確認しながら焼灼します。

図3 
手技は、まず冠静脈洞に電極カテーテルを挿入した後、ブロッケンブロー法(心房中隔穿刺)にて左房に到達し、各種のカテーテルを進めて行きます。

また肺静脈は左右に2本ずつありますが、3次元マッピングで解剖学的情報を取得してから通電を開始します。リングカテを2本用いて焼灼の指標と致しております。焼灼は3次元画像を参照にしながら透視画面を時折みて焼灼していきます。

頻脈の誘発の際にはアイソプロテノールというドキドキする薬品を使うこともあります。

3次元マッピングをみて解剖学的情報を集積して安全に手技を進めます。

 3次元マッピングシステムまたリング状のカテーテルで電位を取りながら、EnSite™ Velocityを用いて3次元的に左房を構築します。そしてその解剖学的位置を参考にしながら、両側の肺静脈を円状に通電していきます。
3次元ナビゲーションシステムを使用することにより、透視線量を減らして、確実なカテーテルでの位置取りができるようになっており、より安全に・より確実に手技を行なっております。

確実に電位を見ながら焼灼します

  心内心電図 解剖学的な情報の必要性を強調いたしましたが、実際の焼灼の際には電位の指標が重要です。最終的には肺静脈内に左房からの伝導がなくなることを確実に確認して通電を行います。
肺静脈隔離後には心房細動の誘発性がないことを確認して手技を終了しています。



冷凍(クライオ)アブレーションを用いた発作性心房細動

2016年より新しい”冷凍”アブレーションを供給しています

日本Medtronic社提供発作性心房細動治療方法の一つとしてMedtronic®のArctic Front Advance ™ 冷凍アブレーションカテーテルによるものがあります。
従来、アブレーションは高周波エネルギーによる焼灼を基本としてきましたが、冷凍アブレーションはそれとは逆に冷凍による組織瘢痕作成を行います。いずれも肺静脈前庭部で作成を行います。またこのシステムの特徴はバルーンをしようしている点です。
バルーンを肺静脈前庭部(入り口付近)に当てて冷やすことで一気に全周性の組織隔離ができます。
今まで一点ずつ焼灼して円を描いていた高周波アブレーションよりは時間短縮になりました。

冷凍バルーンと従来型(高周波型)には向き不向きがあります

術前のCTで方法を判定します

ただし、この方法は患者さんによって向き不向きがあります。
血管のサイズが合わないとうまく焼灼できず、また持続している心房細動には向かないと言われています。
そのため術前に造影CTを撮影してから方法を決めています。
また現在当院では160cm 以下のかた、BMIが25を下回る方には、原則高周波アブレーションの適応として、クライオアブレーションは行なっておりません。

引用
Takahashi A, et al. Circulation. 2002 ; 105 : 2998-3003.

上室性頻拍

診断

上室性頻拍は大きく2つに分かれます

上質性頻拍(PSVT)は主に房室リエントリー性頻拍(AVRT)と房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)とに分けられますが、鑑別困難な症例もあります。
電気生理学的に両方の特徴も認める症例もあり、複数の基準から診断をすることが大切です。

PSVTの診断基準


✓2重伝導路の存在が診断される。
✓誘発はAH時間のクリティカルな延長に依存する。
✓頻拍中の心房興奮順序は房室接合部(His束記録部位)が最早期である。
✓PVC scanで頻拍をリセットしない。(Reset現象の有無)
✓頻拍中のHis束部位におけるVA伝導時間が60ms以下

上記が一般的に言われる診断基準ですが、実際の症例では減衰伝導曲線を作成しながら、正確に評価を行った上で治療(通電)をいたしております。

また3次元マッピングシステムはPSVTでも積極的に利用しており、通電部位を正確に保つうえで役立っております。
同マッピングで治療が円滑に行えた症例をご紹介します。

PSVT中の心内心電図
減衰伝導特性
3D mappingです。通電部位は赤でしめしています。

クリックすると拡大します。

心室性期外収縮へのアブレーション

PVC アブレーション

心室性期外収縮(PVC)に対しても積極的に治療を行っております。

2016年に導入したEnSite Velocity ™ Automap moduleを使用しており、治療成績の向上に寄与しています。
従来、PVCのアブレーションの際には臨床では認めていないPVCがカテ刺激で増加することが多く、その際の臨床で認められている型との区別は体表心電図を目視で判断することに委ねられていました。また3次元マッピング上でそれらを拾ってしまうと心室波の最早期部位の精度が落ちてしまいます。
そこで体表心電図からQRS波形の形を点数化し、自動的に標的波形を絞り込むのが “AUTOMAP MODULE™️“です。具体的に90点、93点、95点と点数化されることにより起きている不整脈が治療対象かどうかを自動的に判断し、3次元マッピングに反映してくれます。
また通電直前のペースマップでのQRS波形も点数化することにより、より多くの信頼できる情報の中で通電できます。

代表例

Automap moduleをしようしたActivation map 精度の高い3次元マッピングと局所電位を合わせて治療することにより、本来望まれる姿での治療が可能になっています。