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■放射線の医療利用
放射線は医療の中で病気の診断や治療に利用され、皆様の健康を守るため役立っています。
医療面での放射線の利用は次のようなものがあります。
●X線単純撮影検査・・・ 胸部、腹部、骨撮影など、皆様がご存じのX線写真撮影がこれに相当しま
す。最近では、コンピュ−タを利用し、画像処理のできるCR撮影(コンピューテッ
ド・ラジオグラフィ)なども普及しています。
●X線造影検査・・・・・・・胃や大腸のX線検査に代表されるX線に写る薬剤(バリウムなど)を用いて
行う検査をいいます。
その他に腎盂造影検査や血管造影検査があり、血管内に注入できる造影
剤を使用した検査もあります。
なお血管造影検査では、診断だけではなく血管の拡張、塞栓など治療面
へも広く応用されるようになりました。
●X線CT検査・・・・・・・・ 人体を透過してきたX線をコンピュータ処理し、人体を輪切りにした画像を描
く検査方法です。装置の高性能化と画像の高品位化が進み検査時間も短
縮され、画像診断の中心的な存在となっています。
●放射線治療・・・・・・・・ 放射線を使って腫瘍の治療も行われています。
放射線が細胞の増殖を抑えかつ破壊する性質を利用し、高いエネルギー
を持った放射線を腫瘍に集中的に照射し治療を行います。
なお、超音波検査やMRI検査では放射線を利用していません。
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■医療被ばく
患者さんが病気の診断や治療の為に、あるいは健康診断などの為に受ける被ばくを医療被ばくといいます。
放射線の被ばくは,「職業被ばく」と「医療被ばく」の2つに分けられます。
職業被ばくとは診療放射線技師や医師、看護婦などが仕事の上で受ける被ばくのことです。
これには、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告に基づいて、これ以上受けてはならないという被ばくの限度(制限)が定められています。
一方、医療被ばくでは線量の限度が定められていません。なぜなら、これを制限することによって患者さんの受ける利益が損なわれる可能性があるからです。
しかし、以下の原則にしたがって被ばく低減に努めなければなりません。
■[X線検査をするための原則]
検査を行うにあたって、正当化と最適化という大事な2つの原則があります。
@正当化:X線検査をするにあたり、その検査がプラスの結果を生じるものでなければ行っては
いけません。
A最適化:その正当化が確認された場合でも、検査を行うにあたっては患者さんの被ばくをでき
るだけ少なくするようにしなければなりません。
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■2つの影響
放射線の人体への影響は大きく分けて身体的な影響と遺伝的な影響があります。
身体的影響は、「放射線に被ばくしたその人、個人に起こる影響」のことで、症状が現れる時期によって急性障害と晩発障害があります。
■身体的な影響
急性障害は、被ばく後、数週間以内に現れる症状のことで、
●皮膚が赤くはれたり、ただれたり、潰瘍ができたりする皮膚障害、
●髪の毛が抜ける毛髪障害、
●血液の成分である白血球や赤血球の数が増えたり減ったりする造血組織障害、
●消化管に炎症が起きたり潰瘍ができたりして壊死をする消化管障害や、
●頭の神経がおかしくなる中枢神経障害などのことです。
晩発障害は、被ばく後、数ヶ月あるいは数十年の潜伏期を経て発生する症状のことで、
●悪性腫瘍(癌)発生や
●白内障、
●生殖力の低下
などの局所的障害や老化促進などのことです。
■遺伝的影響
遺伝的影響は、放射線に被ばくした個人ではなく、その子孫に起こる影響のことです。
その発生原因は、生殖線の被ばくによって遺伝子が傷つけられて起こります。
また、放射線防護の立場から、確率的影響と非確率(確定)的影響にも分けられる場合もあります。
●確率的影響とは、「影響の起こる確率が受けた被ばく量とともに増えていくという影響」のことです。
癌や老化の促進および遺伝的影響がこれにあたります。
●非確率(確定)的影響とは、「ある程度の被ばく量までは影響を受けないが、
ある一定の量を超えるたくさんの放射線を受けると起こる影響」のことです。
そのある一定の量は、しきい線量と呼ばれています。
その量は被ばくした部位や障害により異なります。白内障や不妊、脱毛などがこの影響にあたります。
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