受賞

【学生の活躍】研究医コースの学生が日本神経科学会 国内Travel Awardを受賞

本学の医学部6年生で、研究医コースの桝谷 直子さんが日本神経科学会の国内Travel Awardを受賞しました。国内Travel Awardは若手研究者の支援を目的としており、日本神経科学大会において筆頭著者として発表を行う学部生・大学院生を対象とした賞です。桝谷さんを除く応募者は全て大学院生以上という厳しい状況のなかでの受賞であり、その受賞に対する思いやこれまでの活躍についてお話を伺いました。

国内トラベルアワードを受賞して

今回の受賞について率直な感想を教えてください。

素直にとても嬉しいです。まさか自分が受賞できるとは思ってなかったので、驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。これまでの研究が評価されたことが本当に嬉しいです。

具体的な研究内容を教えてください。

今回の研究テーマは「新生ラット摘出脳幹‐脊髄標本を用いた橋におけるTRPA1(*1)の呼吸リズムに対する修飾」です。TRPA1は抹消神経においては切り傷などの炎症や刺激を受けることで生じる痛みである侵害性疼痛や低酸素感知に関わるものですが、中枢神経においてはTRPA1の働きについて、まだよく分かっていません。そこで私たちは呼吸リズムを制御する呼吸‐呼気(I‐E)相切り替えシステムとして重要である橋結合腕傍核(*2)に着目しました。そこに存在するTRPA1チャネルに刺激を与えると呼吸抑制作用を示したので、抑制機構を検討した結果、TRPA1による呼吸抑制はGABA(*3)によるものだということを初めて明らかにすることができました。また低酸素環境下における中枢神経でのTRPA1の働きを調べたところ、抹消神経での活動と同様に低酸素環境下にてTRPA1チャネルが活性化し、呼吸リズムに影響を与えていることが明らかになりました。

・(*1)TRPA1:様々な刺激物質で活性化される受容体、末梢神経において冷たさや痛みを感知するチャネルとして知られている
・(*2)橋結合腕傍核*:脳の橋と呼ばれる領域に存在する神経核
・(*3)GABA:Gamma-Amino Butyric Acid(γ-アミノ酪酸)の略語。体内に存在しているアミノ酸のひとつ

今回の研究においてご自身ではどういった部分が評価されたと思いますか。

今までの研究に加えて、低酸素環境下での実験を追加したことで先ほど述べたような面白い結果が出たため、そこの新規性が評価されたのかなと思います。

研究医コースでの学びを振り返って

これまで研究発表など様々な場面でご活躍されていますがその中でも特に印象に残ってるものを教えてください。

昨年の夏に仙台で開催された日本神経科学学会主催の「若手育成塾」です。ここで初めて英語での口頭発表を経験し、緊張しましたがとてもいい経験になりました。若手育成塾の直前には、先輩たちが研究室に駆けつけてくださり、夜遅くまで大学に残って議論してくださったのを覚えています。また、同じ研究室の英語の得意な友人には英語の原稿をチェックしてもらい、たくさん助けてもらいました。試験と発表の準備が重なりとても大変でしたが、今ではいい思い出です。

◆「若手育成塾」での活動のインタビューは以下のリンクからご覧いただけます。
【学生の活躍】研究医コース 医学部生の果敢な挑戦~経験を積み、さらなる高みへ~

以前のインタビューで「循環器内科の医師になることに関心がある」とお聞きしましたが、その後、様々な経験をするなかで変化はありましたか。

現在も変わらず、循環器の分野への興味はとてもあります。研究医コースでは、基本的な考え方、どのように実験計画をたてて進めていけばよいか、発表の仕方など様々なスキルを身につけることができました。また、研究医コースとは別に、臨床疫学教室で臨床分野の論文も書いたのですが、その論文を書くなかで基礎と臨床の関係を知ることができ、基礎研究があるからこそ臨床研究が成り立っているということを実感しました。基礎研究と臨床研究、どちらもとてもおもしろくて、今はまだどちらを選ぶかわかりません。ただ、どちらを選択したとしても研究は続けていきたいと思っています。

研究医コースだからできたと思う経験があれば教えてください。また、研究医コースで学んだ感想をお願いします。

研究医コースは自由度が高いことが強みだと思います。国内外の学会にも参加できるように先生方がサポートしてくださいます。また研究に向き合う時間が長いので、一つ一つの事象に対して、自分自身でしっかりと考える力が身につきます。私はもともと人前での発表があまり得意ではありませんでした。研究医コースに入って、半年ほど過ぎた頃に、指導教員の荒田先生から「口頭発表をしてみませんか?」と声をかけていただいたときのことを今でも覚えています。発表の仕方もあまりわかっていないときで、口頭発表は私にとってとても勇気のいることでした。そして、勇気を出して一歩踏み出した結果、今では人前で発表することへの抵抗はなくなり、自分の研究を誰かに知ってもらう楽しさに気づくことができました。研究を通して、他大学の学生や先生方とも交流が広がりとても楽しかったです。研究医コースに入ってよかったなと思います。

研究医コースを考えている方にメッセージをお願いします。

兵庫医科大学の研究医コースは自由度も高く、やりたいことに挑戦できる環境です。もちろん研究だけでなく、部活動や趣味との両立も可能です。将来、研究医にならずに臨床に行ったとしても、ここで培った「科学的な考え方」「論文作成のスキル」「プレゼンテーションスキル」などは必ずどこかで役に立つと思います。ぜひ自分の興味の赴くままに飛び込んでみてください。

指導教員 生理学 生体機能部門 荒田先生へメッセージ

いい意味で振り回され続けてそのおかげで色々なことに挑戦することができました。様々な環境に飛び込ませてくれたことに感謝しています。ありがとうございます。

指導教員からのメッセージ(生理学 生体機能部門 荒田 晶子 准教授)

髙坂さんと一緒に色々な研究室を回り、最終的に私の研究室を選んで頂いて、とても嬉しかったのを覚えています。桝谷さんは、研究を進めるに当たっても、自分の考えたことや意見をしっかりと話すことが出来る、ある程度、理論的な人だと思いました。頭の中で、主張すべき点を伝える事には、とても要領を得ていると思って感心したことがありましたし、私が研究について自分の理論や説明を加えても、すぐにそれがどういう事なのかを理解する事が出来るので、話し合った後には、私の説明した事が理解されていて、自分の言葉に置き換えることが出来るという類稀なる能力を持っていると感じました。本人は、プレゼンテーションは得意でないと思っているようですが、自分自身で理解して吸収したことを自分の言葉にして話すことは、非常に上手いと思っています。実はプレゼンは、彼女の得意な分野になるのではないかと思います。研究医コースに居て、研究が楽しいと感じてくれたこと、そして、今後も何かしら研究をしていきたいと考えている事、ここに居たからこそ身についたと思う事がある事は、私にとっては嬉しい言葉です。今後も、臨床医として患者さんに対峙する時も、この人たちを助けるためにも、研究は欠かせないのだと認識して、ずっと研究魂を持って進んでくれたら…と思っています。

◆同じく医学部6年生 研究医コースの髙坂 侑希さんのインタビューは以下のリンクからご覧いただけます。
【学生の活躍】研究医コースから新たなフィールドへ~飽くなき挑戦を~