お知らせ
【学生の活躍】研究医コース 医学部生の果敢な挑戦~経験を積み、さらなる高みへ~
近年、基礎医学研究医をめざす医学部生が著しく減少している中、本学 医学部6年生(当時、医学部5年生)の研究医コースの2人の学生(桝谷 直子さん、髙坂 侑希さん)が関連学会に発表を出し続け、さらにいろいろな学会賞に果敢に挑戦しています。
「私たちの次に続く後輩のためにも、良い影響を与えていきたい」と語ってくれたお二人。そんな彼女たちの活躍をご紹介します。
桝谷 直子さん インタビュー
大学院生が挑戦する学会賞、日本神経科学学会「若手育成塾」にチャレンジ。すべて英語のプレゼンテーションをこなし、次のステップへ大きな自信をつかむ。
2023年8月に仙台で行われた日本神経科学学会主催の「若手育成塾」に参加しました。
昨年の同学会では、学生のポスター発表で優秀学生発表賞を受賞したので「同じ賞をめざしても仕方がない」と荒田先生に言われたこともあり、今回は、実験量も仕事の質も桁違いの大学院生と勝負する「若手育成塾」にチャレンジしました。1次書類審査は高倍率と聞いていましたし、大学院生が挑戦するような賞なので、全く相手にされないと思っていました。しかし、驚いたことに、その書類審査をくぐり抜け最終候補者となり、英語のプレゼンテーションによる審査に進みました。
私がこれまで経験してきた学会発表は、日本語によるプレゼンテーション7分と質疑応答5分の形式が多く、それでも精一杯でした。今回は発表と質疑応答がそれぞれ15分ずつ、しかもすべて英語で行わなければなりません。ちょうどこの時期は、学会準備に加えて、10日前には実習と大学の試験があり、逃げられない3つのことが重なっていたので大変でした。そんな時、共に研究医コースに所属している髙坂さんに助けてもらいました。髙坂さんは、試験勉強中にもかかわらず私の学会発表の前日まで、夜な夜なプレゼンテーションの英語のチェックや準備を手伝ってくれて、そのおかげで頑張ることができました。本当に感謝しています。
今回、最終候補者として採択されて、15分間の英語のプレゼンテーションをやり遂げたことで「やればできる」という達成感が得られ、英語の発表にも自信がつきました。次の学会発表も、是非英語で挑戦してみたいと思います。
今後の目標について
臨床研修を受けながら大学院に行って、もう一度、研究をしたいです。これだけの研究発表の機会を頂いたことを、活かさなければもったいないと思っています。
研究発表タイトル
Role of TRPA1 on the pons of isolated brainstem-spinal cord preparation from neonatal rat
髙坂 侑希さん インタビュー
助教や講師などの玄人の研究者たちが応募する「IDDI小幡賞(若手研究者賞)」の最終候補者に選出。
2023年11月3日、NPO法人イノベーション創薬研究所(IDDI)主催、ニューロサイエンスの分野の研究において独創的な挑戦をおこなっている若手研究者を対象とした「IDDI Outstanding Basic and Applied neuroscience Talent Award(IDDI小幡賞)」の最終候補者として選ばれ、最終選考会に参加しました。
本賞はGABAの神経系における機能を世界に先駆けて発見された小幡 邦彦 先生の、若手育成に対する想いを引き継ぐために創設されたものだそうです。1次審査の書類選考を合格し、最終候補者の11人に残ることができました。当日は、スライドを用いた5分のプレゼンテーションと10分の質疑応答でした。短く発表するというのも結構スキルが要るもので、何度もプレゼンテーションの図を作り直したりして準備しました。自分の研究内容を素人にもわかりやすく説明することを意識し、準備してきたことをなんとかやり抜くことができました。研究医コースの学部学生でありながら、理化学研究所の研究員や大学の助教や講師等が応募する若手研究者賞へチャレンジし、最終候補者に残れたことで、自分の研究に対してとても自信がつきました。その日の夕方は、候補者の方たちとの交流会に参加し、いろいろな人との交友関係が広がったこと、そして自分の研究に対してたくさんの意見を聞けたことが良かったと思います。
今後の目標について
臨床の初期研修を受けながら、大学院に通って勉強し続け、基礎研究者になることを目標にしたいと思います。国が推奨している基礎研究医を作るプログラム(基礎研修医コース)に興味があり、できればチャレンジしてみたいと思っています。荒田先生の定年が近い事もあり、自分が興味のある研究をしている他大学で、受け入れ研究室を探してみようと思っています。
研究発表タイトル
Poly (I:C)投与による胎動性活動変化の解析と神経発達症への検討
桝谷さん×髙坂さん~米国で最大級の神経科学の学会、2人で臨んだポスター発表‼
2023年11月11日~15日に開催された「Society for Neuroscience 2023(北米神経科学学会大会、米国・ワシントンDC)に2人で参加しました。この学会は、神経科学分野の学会としては、海外でも最大規模の学会で、研究医コースの学生が参加すること自体、珍しいと言われています。そうした状況で、私たちは多くの外国人研究者に囲まれるなか、当然のことながら英語でのポスター発表を行いました。
実際、私たちは、これまでも学会発表を何度もこなしてきました。これまでの小さな積み重ねがあったからこそ、このような米国最大規模の神経科学の学会でも、自信を持って発表できたのだと思います。私たちは、お互いのポスターにおいて共著者の関係だったので、ポスター発表では、2人で多くの外国人の方々の質問に対応し、なんとか英語での質疑応答ができたと思います。ビックリしたのは、人の多さと、皆が入れ代わり立ち代わり質問に来て、2人で同時に対応しなければ間に合わない状況だったことです。かなり大変ではありましたが、良い経験をしたと思いますし、研究発表における実践力も身についたと思います。
研究発表タイトル
Yuki Kosaka et al.
“Effect of Poly(I:C) on perinatal body movements view from neural activity and behavioral analysis”
Naoko Masutani et al.
“Role of TRPV1 and TRPA1 on the pons of isolated brainstem-spinal cord preparation from neonatal rat”
指導教員からのメッセージ(生理学 生体機能部門 荒田 晶子 准教授)
研究医コースの2人にとって、今回のように、学生同士の戦いではなく、研究に時間を費やしている大学院生や研究でお金をもらっている玄人の研究員や助教・講師などを相手にした賞に対して、最終候補者に選ばれたのは、本当に素晴らしいことだと思います。これは、手に入れたくても、なかなか出来ない経験だったと思います。この経験を生かして、臨床の道に行っても、研究を続けてくれれば良いと思います。しかしながら、今回は、基礎研修医になろうという学生が出て来た事に対して非常に嬉しく思いました。基礎研究者の道に進もうと思えた事は素晴らしいです。今までも先輩たちが研究室に立ち寄り、データ整理を教えたり、議論してくれたりしたので、ここで研究を学んだ多くの学生の研究者精神は引き継がれて、いつまでも続いていくのだろうと思い、時空を超えて残るものを一つ見つけたような気がしました。