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睡眠の「質」の低下と腎機能障害の関連性を明らかに(糖尿病内分泌・免疫内科学 講師 角谷 学、主任教授 小山 英則)

Natureグループの国際科学雑誌「Scientific Reports 2021」(24 September,2021)に、糖尿病内分泌・免疫内科学 角谷 学講師、小山 英則主任教授らの論文が掲載されました。

本研究は、Hyogo Innovative Challenge事業の一環で行われ、睡眠の「質」の低下と腎機能障害の関連性を明らかにしたものです。
同研究チームは、2010年からHyogo Sleep Cardio-Autonomic Atherosclerosis (HSCAA) コホート研究を行っており、2017年には睡眠の「質」と甲状腺刺激ホルモンの構造に関する研究結果を発表しています。

今回の研究内容に関する詳細は、下記をご覧ください。

論題

Sleep quality, autonomic dysfunction and renal function in diabetic patients with pre-CKD phase

論文著者名

角谷 学、森本 晶子、三好 晶雄、角谷 美樹、小阪 佳恵、小西 康輔、楠 宜樹、庄司 拓仁、小山 英則

概要

糖尿病は慢性腎臓病(CKD)発症の重要なリスク因子である。一方、近年、睡眠時無呼吸や睡眠の「質」の低下、自律神経機能障害が腎機能低下の潜在的なリスクとなる可能性が報告されていたが、実際にこれらを同時に評価し、腎機能に対する影響を直接検討した研究はこれまで報告されていなかった。

今回我々の研究グループは、CKD未発症の糖尿病患者において、睡眠の「質」の低下と自律神経機能障害が腎機能低下と関連することを前向きな研究で初めて明らかにした。

本研究結果より、CKD未発症の糖尿病の病態においては、睡眠の「質」の低下と自律神経機能障害が腎機能に影響を及ぼす因子であることが初めて明らかとなり、糖尿病治療を行う臨床現場へ極めて重要な知見を提供できたと考えている。

研究の背景

慢性腎臓病(CKD)発症には、高血圧や脂質異常症といった生活習慣病が原因となるが、特に糖尿病はその中でも極めて重要なリスク因子である。一方、近年、睡眠時無呼吸や睡眠の「質」の低下といった睡眠関連因子が、CKDの進行や推算糸球体濾過量(eGFR)の低下と関連することが報告され、この関係に自律神経機能障害が潜在的に関与する可能性が想定されていた。

睡眠の問題や自律神経機能障害は糖尿病において多く認められるが、これらを同時に評価し、CKD未発症の糖尿病の病態において、腎機能に対しそれぞれどのような影響を及ぼすかを統合的に検討した研究はこれまで報告されていなかった。

研究手法と成果

我々は糖尿病やCKD、メタボリックシンドローム、動脈硬化の発症に、客観的に定量化した睡眠、疲労、自律神経機能などの神経内分泌学的機能がどのように関与するかを明らかにするため、2010年に本学でHyogo Sleep Cardio-Autonomic Atherosclerosis (HSCAA) コホート研究を開始している。本コホート研究に登録された患者のうち、CKD未発症の糖尿病患者231名、非糖尿病患者523名の計754名において、睡眠時無呼吸、睡眠の「質」、及び自律神経機能と腎機能との関連を前向きに検討した。

カプランマイヤー解析の結果、糖尿病患者では睡眠の「質」の低下と自律神経能障害が腎機能低下と関連していた。一方、非糖尿病患者では睡眠の「質」の低下と睡眠時無呼吸が関連していた。これらの因子の影響を同時に検討したCox比例ハザードモデルにおいては、糖尿病患者では睡眠の「質」の低下がアウトカムと依然有意な関連を示し、自律神経機能障害も関連する傾向を示していた。一方、非糖尿病患者では睡眠の「質」の低下のみが有意な関連を示していた。

本研究結果より、CKD未発症の糖尿病の病態では、睡眠の「質」の低下と自律神経機能障害は、腎機能悪化の重要なリスク因子であることが確認された。このことは、糖尿病における腎機能悪化予防の観点では、普段の睡眠の「質」や自律神経機能にも着目する必要があることを示しており、糖尿病治療を行う臨床現場においても極めて重要な知見であると考えている。

研究費等の出処

科研費(19K19421):研究代表者 角谷 学

科研費(18K08531):研究代表者 小山 英則

HIC事業関連に関する研究費

今後の課題

今回の検討では、睡眠の「質」の低下や自律神経機能障害がCKD未発症の糖尿病での腎機能悪化のリスク因子であることが示された。特に睡眠の「質」は糖尿病の有無に関わらず、CKD未発症の患者での腎機能に対する重要なターゲット因子であった。

今後は良好な睡眠の「質」を維持、もしくは「質」の改善を目指した介入を行うことで腎機能の低下の予防に実際に寄与できるかどうかの検討が必要である。さらに、睡眠の「質」の低下がどのような機序で腎機能低下に影響しているのか、糸球体や尿細管といった腎実質にどのような影響を及ぼしているのかといったメカニズムに迫る基礎的検討も必要である。

掲載誌

「Scientific Reports 2021」(24 September,2021)

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