受賞

APPW2025にて研究医コースの学生3名がポスター発表賞を受賞

APPW2025(第130回日本解剖学会・第102回日本生理学会・第98回日本薬理学会合同学会)で、会期中に行われたポスター発表にて本学の研究医コースの在学生2名、卒業生1名が「ポスター発表賞」を受賞しました。APPW2025は、日本解剖学会、日本生理学会、日本薬理学会の3学会が合同で開催する初めての大規模な大会で2025年3月17日~19日に幕張メッセで開催されました。



受賞者 薬理学 4年生 猪原 優花

猪原 優花さんのコメント

ご指導いただいた薬理学講座の先生方に感謝の念でいっぱいであり、また率直に嬉しいです。私は特別賢かったり、頭がキレたりするタイプでもなく、プレゼンが得意な訳でもありません。先生方の熱心なご指導のもと、研究や発表について研鑽を重ねることで成長することができました。本当にありがとうございます。今回の受賞を糧にして、また研究を続けていきたいと思います。

受賞演題

反復社会挫折ストレスによる持続的な生物学的変化の探索

研究内容

ストレスは抑うつ症状や不安を増強し、うつ病などの精神疾患の危険因子となります。うつ病の動物モデルである反復社会挫折ストレス(RSDS)は、社会性行動の低下だけでなく、体内に多様な生物学的変化を引き起こします。これまでの研究で社会性行動の減少はストレス停止後少なくとも2週間は持続することが示されています。そこで、ストレス停止後2週間以上持続する生物学的変化を調査することにしました。RSDSマウスを作製し、ストレス停止直後とその2週間後に社会性行動試験を行いました。はじめの試験ではRSDS群で社会性行動が有意に減少し、このモデルの有効性を検証、2週間後に行った試験では、RSDS群における社会的行動の持続的な減少傾向を確認しました。さらに、ストレスから3週間後の血清分析の結果、RSDS群では血中尿素窒素濃度が上昇し、社会性行動の低下と強い相関関係があることが明らかになりました。



受賞者 薬理学 4年生 松永 穣

松永 穣さんのコメント

この度はAPPW2025におきまして、Undergraduate Poster Awardという栄誉ある賞を賜りまして大変光栄に存じます。北岡志保主任教授、木村信也先生をはじめ、研究をご指導いただきました当研究室の皆様や、本学の研究医コース制度にかかわるすべての教職員の皆様に感謝申し上げます。今回の受賞を励みにして、今後とも何事にも精進してまいります。

受賞演題

反復社会挫折ストレスにより引き起こされる肝臓の変化の組織学的解析

研究内容

研究室では、慢性ストレスが疾患の発症や増悪を誘導する機序を明らかにするため、マウスが繰り返し社会的ストレスを受ける反復社会挫折ストレス(RSDS)モデルを用いて研究を行っています。RSDSにより血中アルブミンが減少し、肝臓の湿重量が増加することから、RSDSによる肝機能変化の病態解明に取り組んでいます。肝臓の網羅的遺伝子発現解析の結果から、肝臓への免疫細胞の浸潤や血管の変化が示唆されました。そこで、肝臓の組織学的解析に着手しました。RSDSにより肝炎や線維化は生じていませんでしたが、好中球の浸潤や血管面積の増加を見出しました。これらの結果は、RSDSが肝組織で微小炎症や血行動態の変化を誘導することを示唆しています。



受賞者 生理学 生体機能部門 卒業生 髙坂 侑希

髙坂 侑希さんのコメント

自分が面白いと感じ、興味を持って取り組んできた研究を、このような形で評価していただけたことを大変嬉しく思います。自分は面白いと思って研究していますが、他の方々にも「面白い」と感じていただけたことが、何より嬉しいです。この受賞は、私一人の力では決して得られなかったものであり、荒田研究室の先輩方も含めて、温かい環境と支えがあってこその成果だと感じています。この研究を進めるにあたり、日々ご指導くださった荒田先生、研究補助員の大西さん、同級生の桝谷さんに深く感謝申し上げます。素敵な環境があったからこそ、最後まで楽しく研究に向き合うことができました。兵庫医科大学の学部生活の集大成として、このような形で締めくくることができ、とても光栄です。これからも研究の面白さを大切にしながら、学びを深めていきたいと思います。本当にありがとうございました。

受賞演題

Poly(I:C)により引き起こされた脊髄性体動性活動の変化の解析

研究内容

臨床研究から、出生前の感染と出生後の神経発達障害様行動との間には密接な関連があることが報告されています。感染による神経発達障害を調べるため、Poly(I:C)(PIC:ウイルス感染における免疫刺激薬)が胎内運動機能に及ぼす影響を調べました。私たちの先行研究では、PIC投与された妊娠ラットの胎仔は出生後に運動機能異常を示し、PIC投与された妊娠ラットの胎仔の体動を超音波観察すると、PICにより通常の体動から異常な体動に変化させることが分かりました。これは、PICが胎生期および出生後の運動発達に影響を与えることを示唆しています。私たちは、その原因が体動を形成する脳神経回路にあると考え、脳幹-全脊髄標本を用いてPICの影響を検討しました。標本にPICを投与すると、正常な体動性活動が震え活動を伴う体動性活動に変化しました。その異常な体動性活動は、COX2選択的受容体阻害薬投与下で抑制されました。つまり、PICによって誘導されるCOX経路を介した免疫系が体動の脊髄神経回路を変化させ、神経発達障害を引き起こす可能性を示唆しています。この研究は、COX経路を介した神経回路変化の機序を明らかにし、感染症による神経発達障害の治療法を模索する一助になると考えています。

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◆髙坂さんの卒業後の進路についてのインタビューは以下のリンクからご覧いただけます。
【学生の活躍】研究医コースから新たなフィールドへ~飽くなき挑戦を~

◆研究医コースについては以下のリンクからご覧いただけます。
「研究医コース」ホームページ