受賞

研究医コース医学部生が「第32回神経行動薬理若手研究者の集い 優秀発表賞」を受賞

2022年11月29日、埼玉医科大学かわごえクリニックで開催された「第32回神経行動薬理若手研究者の集い」にて、医学部6年次 研究医コースの辻村 拓也さんが見事“優秀発表賞”を受賞しました。
「神経行動薬理若手研究者の集い」は伝統のある学会で、若手研究者の登竜門と言われており、ここでの受賞は快挙といえます。

受賞インタビュー(医学部6年次 研究医コース 辻村 拓也さん)

――このたびは受賞おめでとうございます。率直に受賞した感想は?

大学生活の中で最後に一つ形に残せるものができた事は素直にうれしいです。


――どういった点が評価されて受賞に至ったと思いますか?

研究を4年間続け、振り返れば7回学会発表をして来ました。その過程で徐々に発表の内容もしっかりと自分の中に落とし込まれて行き、プレゼンのスキルも上がって来ていると感じていました。あとは、自分の研究テーマに対する理解も深まっていたので、質疑応答の質も良くなってきたのが良かったのかな…と思います。


――今回受賞した演題について簡単に説明をしてください

人に対しての危険信号を感知し、生体反応を引き起こすTRPA1という受容体が、中枢神経系にどのような働きをするのか、ということについて研究をしました。生まれたてのラットから摘出脳幹-脊髄標本を作製し、横隔膜に繋がっている頚髄からの出力を記録することが出来るので、その電気活動を計測することから呼吸性活動が分かるのですが、橋が付いた標本の時に、TRPA1の刺激物質を灌流すると、その呼吸性活動が抑制することが分かりました。「橋からの呼吸抑制反応がTRPA1によってもたらされる」という事が分かったのです。TRPA1は生体内低酸素を感知する機能があるので、胎生~新生期における低酸素症に関わる可能性を示唆しました。


――研究医コースをはじめてみようと思ったきっかけは何ですか?

2学年次の「基礎系講座配属」で自分の興味を追求する時間を持てることって素敵だなと感じたことがきっかけです。

それまでは勉強というのは、既知の知識を詰め込む作業が全てでしたが、答えの無いものを自分で探し出すことこそが勉強だと思っていたので、そんな時間を持ちたいと思いました。

基礎系講座配属が終わった後も研究に携わりたいと思い、3年生の時には、荒田先生の所に週3回放課後に通うことから始め、4年生から研究医コースに入りました。

研究をしていると自分の立てた仮説が正しいのか等、不透明の中、骨の折れることが多いですが、何かのタイミングで少しでも結論づけられた瞬間は「よかったあ~」と喜びが沸いてきます。ちょっとした達成感ですね。


――同じ生理学 生体機能部門から研究医コースに所属する学生が数多く受賞していますが、何か理由があると感じていますか?

これは、荒田先生の指導方針のおかげだと思います。自分で考えてやる、そして達成感を味わうというものなので、「この研究は、自分がやらずして誰がやる」くらいの意気込みで、向き合っていました。そこで、しっかりと自分の足で立つことを覚えさせてもらえました。

わからんからもっと教えてほしいなぁ…と思う時もありましたが、振り返ってみれば、なかなか人が成長するのは難しい中で、これだけ成長させてもらえたのは凄いことだなと思います。実際に、荒田研から輩出された先輩方が全員骨太で、自分の研究をやり切っているのを見ても分かりますし、卒後も荒田先生と共に研究を継続されたりしています。自分も、この研究室にいる限り、先輩に恥じないようにやらなければ…と思っていましたし、何より先輩方との強い絆があることも、この研究室から受賞者を多く出す原動力だったのではないかと思います。


――まもなく卒業ですが、これから医師としてどういった道を目指しますか?

血液内科の医師になりたいです。
血液内科は、全身管理の能力が求められます。
自分がその能力を高めることで、一人でも多くの人に少しでも長く生きることができて良かったと言ってもらえるよう、高みを目指して頑張りたいです。


――これから兵庫医科大学で研究医コ―スに入ってみたいと思っている後輩や受験生にメッセ―ジをお願いします!

研究というのは真面目で頭のいい人がやるものというイメージを持っていましたし、本来の自分は研究というものから最もかけ離れている人間だと今でも思っています。

そんな自分が、まさか、最後に何か賞を頂けるところまで経験を積めるとは、当初、想像できませんでした。少し恥ずかしいですが、「やったことのない事にチャレンジをして新しい景色を見たい」と言ったら、荒田先生は、ちょっとビックリしていましたが、そんな一心でこの研究の世界に飛び込んだので、その目標は達成されたと思っています。

こんな僕でも、一生懸命やれば「満足できた」と実感した訳ですから、とにかく学生が研究する事に対しては、あまり敷居が高いと感じず、興味があれば、先生方に話を聞いてみることから始めるのがいいと思います。

研究は賞などを頂く華やかな瞬間もありますが、その裏では失敗の繰り返しで、くじけそうになる瞬間もあります。しかし、こうやって苦労したことは、必ず、今後の人生に繋がっていくと信じています。迷っているなら、まずはやってみることをお勧めします。

指導教員コメント(生理学 生体機能部門 准教授 荒田 晶子)

辻村くんが私の所に来た時に、「新しい世界を見たい」と言っていたので、その言葉には本当に驚きましたし、まだ何も始めていない時から何を言っているのだろう…と思っておりました。しかし、意気込みは感じましたし、研究するという事自体、新しい世界を見る事に繋がると思っていましたので、素直に納得できました。最終的に彼の思っていた「見たことのない世界」まで行けたのだったら良かったと思っています。これからは、努力は人を裏切らないという事を信じて、臨床医学の場でもっと高みを目指してくれたらと思っています。

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