医学部 - 講座紹介

病理学(分子病理部門)

専門部門(基礎・臨床連携講座)

病理学は最も古くからある医学分野の一つで、現在では基礎医学と臨床医学の架け橋となる領域に位置しています。患者の病態や採取された組織から得られた疑問点を研究で明らかにし、臨床の現場に還元する「トランスレーショナルリサーチ」が行われる医学領域になります。組織を見て研究する病理学は古典的な印象を持たれがちですが、近年の目覚ましい技術革新によって、従来回収した細胞塊からしか調べることが出来なかった転写産物や代謝物、エピジェネティクス変化や多種類のタンパク質が、一組織切片上において高い解像度で「空間分布」を見られるようになっています。「組織の空間的把握」が研究の核となる病理学は今後飛躍的に発展が期待できる医学分野と考えられます。

そのような潮流の中で、私たちはがん組織の形態観察から得られる洞察をもとに、がんの転移・浸潤メカニズムの解明に取り組んでいます。特に、腫瘍代謝、シグナル伝達経路、エピジェネティクスの相互作用の観点から、がんの進行メカニズムを解明する研究に取り組んでいます。そして、新たな治療法や診断法を創出し、臨床へ還元することを目指しています。

本研究室では現在、以下の研究に取り組んでいます。

1. 大腸がんの転移メカニズムの解明と治療応用

本研究では、原発巣とは環境が全く異なる他臓器への転移を促進する大腸がん細胞の代謝動態の変化を明らかにし、大腸がんの転移を抑制、根治する治療法を開発することを目指しています。

2. がん細胞の代謝の可塑性を標的とした治療法の開発

メタボローム解析などの代謝物測定技術の発達によりがん細胞特異的な代謝が近年次々と明らかにされ、それらを標的とした治療法の開発が試みられていますが、臨床応用されているものは少ないのが現状です。その理由の一つとして、がん細胞の代謝の可塑性が挙げられます。本研究ではまず、がん細胞の増殖に重要なグルタミノリシスに焦点をあて、グルタミン代謝酵素やグルタミントランスポーターを阻害した時に代償性に活性化する代謝経路やシグナル伝達経路を明らかにし、それらの阻害剤を併用したがん治療法の開発を行っています。

講座情報

主任教授
大島 健司
講師
佐藤 鮎子
TEL
0798-45-6427
FAX
0798-45-6426
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