医学部 - 講座紹介

次世代型救急災害医療学

専門部門(寄附講座)

現在の救急搬送システムは、重症度・緊急度に依存して搬送先医療施設を判定する(シングルマッチングシステム)ため、医療需要が供給を上回るような緊急時(急性疾患、事故、災害、サイバーテロ、パンデミック時など)には、特定の医療施設に搬送が集中することで容易に病床逼迫を来たし、救急搬送困難患者が発生し、結果として“preventable death(防ぎ得た死)”を招いてしまいます。このシステム上の欠点はコロナ禍でさらに顕在化しました。一方で、平時でも、救急車搬送件数の6割は搬送の必要がない不適正搬送であり、救急隊は119番要請に対する不搬送の決定は出来ないために、救急車出動件数は増加傾向にあります。そのようなシステム上の欠点に起因する全国の救急患者の“preventable death(防ぎ得た死)”は10〜18%程度存在する、という報告もあります。
そこで、政府の「骨太の方針2023」で実行される、PHR(Personal Health Record:個人健康データ;毎日のライフログ、バイタルサイン情報)アプリケーションに連携したEHR(Electronic Health Record:電子健康データ;病院個人電子カルテ医療情報)を集積する“救急災害データベース”を構築して、そこから得られるビックデータから搬送先医療施設の最適解を導く次世代型救急医療システム(ダイナミックマッチングシステム)の開発と社会実装によって“preventable death”を減少させ救命率を少しでも改善することがこの講座の究極の目的および意義です。
できるだけ多くの人々を先制的にPHR/EHRが内蔵されたアプリケーションで包摂しながら、緊急時(急性疾患、事故、災害、サイバーテロ、パンデミック時など)には、救急医療機関連携ツールの基軸になるような社会実装をめざす一方で、そのアプリケーションを介して電子健康データを個人へ還元することで、個人の健康リテラシーの向上に加え、PHR/EHRが、いつでも、どこでも、治療を中断することなくシームレスな医療アクセシビリティーを実現できることが期待されます。さらに、“救急災害データベース”に蓄積されたデータによって、地域住民に密着した組織的な疾病予防対策や健康増進の維持といった公衆衛生の向上にも寄与できるばかりか、今回のコロナ禍のように、予測不能な時代にありながら、さまざまな緊急時の仮想現実シミュレーションを可視化し、リアルワールドで次世代型救急医療システムを構築して対峙することができます。そのような世界観、コアバリューを創造します。

講座情報

特任教授
平田 淳一(兼任)
特任准教授
寺嶋 真理子
TEL
0798-45-6514
FAX
0798-45-6813
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