薬学研究科(大学院)

各専門分野紹介(薬学研究科)

臨床ゲノム薬理・分子薬物動態学

医薬品の個別化適正投与をめざし、臨床ゲノム薬理学と分子薬物動態学を基盤とした以下のテーマに関する研究指導を行います。研究テーマの主題は「個の医療の確立」で、ゲノム薬理学、分子薬理学、分子薬物動態学、数理解析学を駆使した研究が主体となります。

  1. 薬物代謝酵素群および薬物標的分子をターゲットとする臨床ゲノム薬理学の確立および診断ツールの開発
  2. アポトーシス誘導型抗がん剤の分子薬物動態を基盤にした、テーラーメードがん治療への挑戦
  3. 疾病等による薬物代謝酵素活性変動の分子メカニズム解明と臨床現場への還元
  4. より有効かつ安全な癌化学療法をめざした抗がん剤耐性機構の解明と抗がん剤感受性因子の探索

物理薬科学

次世代の検査・治療法の開発につなげるため、生体内物質を可視化するための蛍光プローブ分子やタンパク質のラベル化試薬、発光・光触媒・磁性ナノ材料などの新規材料を設計・合成し、これらの構造・物性を明らかにしていきます。その目的のため、物理化学的手法・分析化学的手法や方法論を用いて、以下に示す研究テーマに取り組んでいます。

  1. 生理活性物質の生体内ダイナミクス解析に資する蛍光プローブおよびラベル化試薬の開発に関する研究
  2. 蛍光プローブの開発に資する新規蛍光色素の創製に関する研究
  3. 近赤外光を用いた発光や光触媒特性を有する化合物の開発に関する研究
  4. 磁性ナノ材料の創製と会合状態の制御に関する研究
  5. 新規な固体触媒の創製とその構造・機能評価に関する研究

応用医療薬学

医療における薬剤師の職能拡大を視野に入れ、特に薬剤投与に関する様々な問題点を明らかにし、その解決に必要なシステムやデバイスの研究開発や薬物療法の個別最適化をめざした研究を行います。また、セルフメディケーション・セルフケアに関連する研究も行います。具体的には以下に示す研究テーマに取り組み、薬剤師の社会的地位の向上をめざした研究を推進していきます。

  1. 自己注射(インスリン、成長ホルモンなど)の補助器具に関する研究
  2. デバイスの違いが薬剤投与に与える影響に関する研究
  3. 薬剤投与における個別化医療に関する研究
  4. 薬学投与におけるママ・パパサポートに関する研究
  5. セルフメディケーションにおける地域薬剤師の役割に関する研究

レドックス生物学・免疫制御学

活性酸素の健康利用と免疫制御に関する研究を通じて、がんや慢性炎症の克服を目指します。
生化学・分子生物学的手法と免疫学的手法などを用いて、以下のテーマに取り組みます。

  1. 抗酸化酵素による活性酸素代謝の生理的役割に関する研究
  2. 抗酸化酵素の翻訳後修飾と細胞内分布に関する研究
  3. 自然免疫と適応免疫の連携による抗腫瘍免疫の強化に関する研究
  4. 免疫抑制性がん微小環境の形成とその制御に関する研究

神経病態制御学

慢性難治性疼痛や虚血性神経障害などの神経系における病態について、分子生物学的、電気生理学的、行動薬理学的手法を用いて解析を行い、その発生機序を解明するとともに、薬物による病態制御法の開発と臨床応用に向けてのシーズ探索を行います。

  1. 痛覚伝達系における疼痛関連受容体の機能調節に関する研究
  2. 痛覚伝達系における神経活性物質の発現調節に関する研究
  3. 慢性難治性疼痛発生と治療の分子メカニズム解明に関する研究
  4. 慢性難治性疼痛に対するシーズ探索に関する研究
  5. 虚血性神経障害の病態解析と治療法開発に関する研究
  6. 神経伝達障害の病態解析と認知症治療法開発に関する研究
  7. 神経疾患における漢方治療の効果とメカニズム解析に関する研究

天然物合成化学

新規医薬品の開発とそれを支える基盤新技術の構築をめざして、次世代型薬化学研究を行います。有機化学的・計算化学的手法を駆使して、有機合成化学のみならず、医薬品化学、創薬化学を高度化するための研究指導を行います。また、海洋生物や薬用植物などの天然由来資源から、医薬シーズとなる化合物を最新の知見をもとに開発したスクリーニング評価系を用いて探索します。見いだした生理活性化合物についは、作用の解析や化学誘導による最適化など医薬品シーズとしての展開を図り、臨床適用可能な医薬リード化合物の開発をめざします。以下に示す研究テーマに取り組み、高度な研究能力を養います。

  1. 新規ラジカル反応の開発とその立体制御に関する研究
  2. 不安定な反応活性種の動的変化の追跡と反応制御に関する研究
  3. 生物活性化合物の合成と新規医薬品のシーズ創出に関する研究
  4. PCA-1を標的とする分子標的抗がん剤リード化合物の探索研究
  5. 抗がん剤開発を指向した腫瘍血管新生阻害物質の探索研究
  6. 抗がん剤耐性克服物質の探索と耐性に関わる作用機序の解明研究
  7. 知覚神経系に作用する新規鎮痛物質の探索研究

臨床医薬品化学

「臨床」における「医薬品」に対して、「化学」を基盤とした研究を行います。実験を中心としたWet研究、データ解析を中心としたDry研究の実施が可能です。
Wet研究では、既存薬や既存薬の代謝物を新たな医薬品へと展開するドラッグリポジショニング、既存薬をシード化合物とした探索合成研究を展開します。さらに、2022年度からは、有機反応開発の研究も行います。
Dry研究では、JADERおよびFAERSを用いた医薬品有害事象データベース研究を行っています。さらに、データベース解析から得られた情報を基にした臨床研究へと展開したいと考えています。また、薬剤師の質向上をめざした薬学教育研究も展開しています。

  1. 膠芽腫に対するドラッグリポジショニング研究(Wet研究)
  2. 抗がん薬による心毒性発症傾向の解析および予防薬の開発(Dry & Wet研究)
  3. 化学的な視点を基にした医薬品有害事象データベースを用いた種々の医薬品の有害事象解析(Dry研究)
  4. コバルトなどの金属を用いた有機反応開発(Wet研究)
  5. 化学の臨床活用をめざした薬剤師教育プログラムの開発(Dry研究)
  6. 薬剤師・薬学生の医学文献評価能力向上に向けた教育プログラムの開発(Dry研究)
  7. その他、薬学教育研究(Dry研究)

微生物学

血液感染症および新興再興感染症を起こす病原微生物ならびに微生物汚染・微生物劣化を招く有害微生物の制御をめざし、微生物学的、生化学的、薬理学的、免疫学的、分子生物学的手法を用いて研究を行っています。主な研究テーマは以下のとおりです。

  1. 病原微生物、有害微生物の分離同定・性状調査に関わる研究
  2. 新興再興感染症の流行および有害微生物の分布の実態解明に関わる分子疫学的研究
  3. 病原微生物の感染性、病原性に関与する細胞内情報伝達機構の解明に関わる研究
  4. 病原微生物、有害微生物の薬剤感受性/耐性機構の解明に関わる研究
  5. 薬剤耐性獲得病原体の薬剤感受性回復誘導に関わる研究
  6. 環境調和型の新規微生物制御技術の開発に関わる研究
  7. 新興再興感染症の診断、治療、予防に関わる臨床的研究

呼吸器疾患病態治療学

高齢化社会や喫煙・大気汚染・アスベスト曝露などの環境要因から、現代社会では肺癌・悪性中皮腫などの呼吸器悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性疾患である気管支喘息、難治性呼吸器疾患である間質性肺炎・肺線維症、呼吸器感染症である肺炎・肺結核など多岐にわたる呼吸器疾患は、増加の一途にあります。しかしながらそれらの病態や治療法は十分に解明・確立されず、まだまだ未知の領域です。
本研究指導科目分野では、 (1)臨床応用可能なバイオマーカーの確立、(2)病態メカニズムの解明や(3)新規治療法の開発などをめざして、細胞やマウスなどの動物を用いた基礎研究や臨床研究を行い、研究能力を養成します。そしてその研究成果を学会発表や論文発表して、学位取得できるように指導いたします。