医学部医学科
siryoseikyu2021.jpg
図書館
兵庫医科大学医学会

生理学(生体機能部門)

講座(部署)紹介

当講座では、細胞生理から人体生理まで幅広いテーマで研究を行っている。機能分子が、細胞間の相互作用、組織、また個体において、どのような生理作用メカニズムに関与し、個々の分子動態から個体としての統合的な機能へと調和されるかを理解することが、大きな研究の流れである。さらに、神経回路などの機能的なネットワークとその構築形成・可塑性が高次機能や個体の行動をどのように担い、生体機能の恒常性を保っているのかを解明することを目指している。

研究の現状

主題

1.嚥下プロジェクト
本学の知財(特許5353479号、PCT/JP2014/062239、特許4546472号)を基に、人口の高齢化に伴い急増している嚥下障害や誤嚥性肺炎の診断・予防・治療へ展開するトランスレーショナルリサーチを行うことによって、社会の福祉へ貢献する(講座ホームページ参照)。


2. 呼吸制御機構の解明(越久・平田・尾家)
  1. 呼吸リズムの生成機構の統合的解明(越久・尾家)
    呼吸リズム生成には延髄腹側の2つのペースメーカー領域、pre-Bötzinger領域(pre-BötC)と傍顔面神経核領域(pFRG)が重要な役割をしている。我々は、ラットや各種トランスジェニックマウスのpre-BötC領域を二光子Caイメージング法により動画記録し、統計数理学的手法によって細胞間結合を同定し、スーパーコンピュータ上でネットワークの再構築を行い、再構築されたネットワークの挙動が実験的に得られたネットワークの挙動と一致するかどうかを検証するプロジェクトを統計数理研究所およびゲッティンゲン大学との共同研究で行っている。
  2. 中枢性呼吸調節における化学受容機構の分子基盤の解明(平田)
    中枢性呼吸調節機構は、換気応答によって驚くべき厳密さで生体のPCO2/pH変動を一定の狭い生理的範囲に調節している。この中枢化学受容調節機構は長い間謎であった。これまでに脳幹・延髄由来のニューロン・グリア共培養細胞を用い、CO2/pH負荷に対する細胞内応答を、Ca /pHのイメージング、patch-clamp法により検討したところ、延髄グリア細胞に発現するTRPチャネル群の関与を見出している。さらに、生理学研究所 細胞生理研究部門との共同研究によりTRPM8遺伝子欠損マウスの呼吸機能解析をwhole body plethysmography法にて行っている。
  3. 慢性炎症性気道の難治化メカニズムの解明 (平田)
    喘息の病因の一つに気道構造のリモデリングが関与している。ステロイド抵抗性喘息における気道構造細胞の難治化メカニズムは未解明なままである。京都大学呼吸器内科との共同研究にて、ステロイドの主な標的である免疫系細胞と相互に影響する気道構造細胞において、上皮細胞の分泌調整や線維化、気道平滑筋細胞の収縮・増殖の引き金になる細胞内Ca動態変化や分子機構、それらの細胞間での相互作用解析に基づき、気道構造細胞の質の変化解明などの新しいアプローチにより、喘息治療薬の開発を目指している。特に、キチナーゼ関連蛋白質・YKL40やインターロイキン(IL)類などのサイトカイン作用機序や相互作用に着目している。

3. 機能的神経回路の発達の解明(荒田)
  1. 周産期における神経回路の発達と可塑性
    機能的神経回路の発達と可塑性について、主に出生前後の周産期に焦点を絞って研究を展開している。
    摘出した延髄-脊髄のメガネットワーク動態について、呼吸や歩行・胎動を出力の指標として、周産期に起きる低酸素状態での神経回路動態や睡眠覚醒リズム、母子関係と発達などに注目し、行動学に加えて、電気生理学的手法を用いた単一ニューロンレベルの解析や、光学的測定法を用いたネットワーク動態の可視化による解析、さらに遺伝子ノックアウトマウスによるアプローチなどを駆使して、周産期の神経回路の変遷を追っている。この研究は、本学の小児科学・生化学・解剖学や、理化学研究所 脳科学センター、東京都医学研究所、九州大学、東京大学、群馬大学等と連携・共同研究し、周産期医療に貢献している。
  2. 発達による高次機能と脳幹部相互作用の解明
    橋結合腕傍核に関連する感覚-運動-情動のネットワークについて、発声や睡眠覚醒などの呼吸や胎動を指標として、神経回路のモード変化について脳ブロック標本を用いて広域ネットワーク動態の解析を試みている。
    電気生理学的手法に加え、ダイナミックな神経回路の配線図を組織学的手法により解析し、さらに、ネットワークの挙動を光遺伝子操作法(Optogenetic methods)により制御してネットワーク動態を解析する等を名古屋大・環境医学研、生命創成探究センター、九州大学、同志社大学、東京大学、琉球大学等と共同研究し、橋結合腕傍核が脳幹部と高次機能の神経回路の発達・統合過程に関わる事を解明する。それは、子供の健やかな発達と成長に関わると考えられる。

4. 呼吸と認知機能のクロストークの研究(中村)

  1. 呼吸制御による認知機能向上の研究
    近年我々は、呼吸活動のあるタイミングが認知課題の成績を直接変えることを発見した(Nakamura et al. 2018)。
    本研究では、認知機能向上を目的として、どのように下位脳(ここでは呼吸機能)が上位脳(ここでは認知機能)を制御するか、その脳内の制御機構について、動物を用いた分子レベル・光遺伝学的研究とヒトを用いた心理生理学・fMRI研究に至るまで、多角的・包括的な研究を行う。生理学研究所等と連携・共同研究し、最終的に呼吸制御をはじめとする下位脳から認知機能を向上させる方法を明らかにしていく。
  2. 呼吸制御によるストレス低減の認知神経基盤の解明
    呼吸法にはストレス低減効果があることから、呼吸による認知機能制御がストレス関連の精神疾患を改善する新しい対策法となる可能性がある。1.の研究成果を応用し、精神疾患に関連するストレス低減や改善法を明らかにしていく。詳細については、こちら(https://sites.google.com/site/respirationandtaskperformance/)

5. 肝癌治療における再発機序解明と新規治療戦略の開発 (平田)
切除不能な肝癌に対する治療では、再発が大きな課題である。
本学・放射線科(高木・児玉)、神戸大学・放射線科(上嶋)及びMDアンダーソン癌センターIR部門との共同研究で、肝動脈塞栓術やラジオ波凝固治療後の低酸素ストレス応答やexosomeに着目した再発機序の解明を目指している。
RFP・luciferase発現癌細胞のin vivoイメージングや分子生物学的手法により、免疫寛容やリンパ管新生を細胞・遺伝子レベルで解析し、基礎講座と臨床講座が連携した、癌再発防止の新規治療の開発研究を行っている。



自己評価・点検及び将来の展望

当講座では、「研究の到達点は人体への適用(人体生理)である」という基本理念に基づいて研究を行っている。
各テーマでの研究成果として、呼吸リズムの生成機構の統合的研究では、J Physiol 2007、Neuroreport 2008、J Comp Neurosci 2011、IEEE TMI 2011、J Physiol 2012(プレスリリース有)、J Neurosci Methods 2014、Neurosci lett 2015、Plos One 2016、Frontiers in Physiol 2018等に発表された。
中枢性化学受容体の研究では、Cell Calcium 2010、Respiratory Physiology & Neurobiology 2019に発表された。慢性炎症性気道の難治化メカニズムでは、Cytokine 2012に発表された。
機能的神経回路発達の研究では、J Neurosci. 2009(プレスリリース有)やRespir Physiol Neurobiol 2009、Neurosci Res 2015等があり、高次機能との関連性においてはNeuron 2013、PNAS 2013に発表された。
今後も基礎研究に留まらず、臨床応用型研究に重点を置いて、当講座から多角的なアプローチによる生理学の新たな展開が生まれるよう精進していきたい。


臨床研究に関する情報公開

以下の研究について、当部門で実施しておりますのでお知らせいたします。
研究に関する問い合わせ等がございましたら、各研究詳細ページに記載している連絡先にご連絡ください。

越久 仁敬 主任教授
越久 仁敬 主任教授
責任者| 越久 仁敬(主任教授)
専門分野:呼吸生理学
准教授| 荒田 晶子
講師| 平田 豊
TEL| 0798-45-6387
FAX| 0798-48-9643

兵庫医科大学 〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1番1号 TEL:0798-45-6111 (代)

Copyright(c) Hyogo College Of Medicine.All Rights Reserved.