医学部 - 講座紹介

小児科学

専門部門(臨床医学系講座)

1. 神経・筋・代謝・内分泌疾患
筋ジストロフィーの分子病態の解明、治療法の開発を行うとともに、治験、臨床研究を実践している。また、脳幹・脊髄神経ネットワークの解析に基づくてんかんの発症機構の解明に取り組んでいる。先天代謝異常症に関しては、マススクリーニング陽性症例の精査とともに、疾患の分子生物学的解析を行っている。また、遺伝性疾患に対する集学的な遺伝子診療を行っている。

2. 小児消化器疾患
ピロリ菌感染症の診断と治療、慢性便秘や過敏性腸症候群、機能性ディスペプシアなどの機能性消化管疾患を中心に診療・研究を行っている。炎症性腸疾患に関してはIBDセンターと連携して診療を行う。

3. 腎疾患・夜尿症
尿細管細胞障害におけるIL-18の関与、バイオマーカーとしての尿中肝臓型脂肪酸結合蛋白の検討などの研究を行なっている。また、夜尿症に対し、国際基準に基づく積極的な治療を行うとともに、小児神経および小児泌尿器科医と連携した集学的夜尿症治療を行なっている。

4. 新生児疾患
脳室周囲白質軟化症とIL-18との関連、新生児好酸球増加疾患の病因の解明、血清・尿中BNPによる循環、呼吸不全の評価系の確立を行なっている。

5. アレルギー疾患
小児期食物アレルギーの新規管理法の確立、アナフィラキシー治療症例の多施設共同研究、H. pylori感染胃炎の発症における免疫機構の解明を行っている。

6. 子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)
環境省による「エコチル調査」の全国15か所のユニットセンターの1つとして選定されており、公衆衛生学・産科婦人科学講座と共に兵庫ユニットセンターの運営を担当している。

研究の現状

概要

小児・新生児疾患全般にわたり、救急医療、高度救命医療、先進医療を行う中、神経・筋疾患、小児消化器疾患、腎疾患、血液・腫瘍疾患、新生児・未熟児医療、アレルギー疾患、代謝・内分泌疾患などを中心に、分子機構を含めた病態の解明、さらに病態に基づく治療法の開発に関する研究を行っている。
さらに、胃癌予防を見据えた小児期のヘリコバクター・ピロリ感染症の診断と治療にも取り組んでいる。

主題

  1. デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する分子治療法の開発と実践:
    アンチセンスオリゴヌクレオチドによるエクソンスキッピング誘導治療、ナンセンス変異リードスルー誘導治療の基礎研究を行うとともに、治験、臨床研究により、これらの新規治療法の臨床への応用を進めている。また、個々の筋ジストロフィー症例における分子病態の解明を行い、新規治療法の開発を行なっている。
  2. 難治性遺伝性疾患に対する集学的遺伝子診療:
    難治性遺伝性疾患に対する集学的遺伝子診療を行い、新たな治療法の開発とともに、一部の疾患においては保因者診断・出生前診断などの相談を受け付けている。
  3. 脊髄性筋萎縮症新規治療法の有効性評価:
    脊髄性筋萎縮症に対する新たな治療法に対し、その有効性の評価法確立に関して検討を進めている。
  4. ヘリコバクター・ピロリ感染の疫学調査:
    主に丹波篠山市をフィールドとして、感染率、感染経路や感染動態の検討を実施している。
  5. ヘリコバクター・ピロリ感染test and treat:
    胃癌予防のための中高生に対する「ヘリコバクター・ピロリ感染test and treat」について、安全性と有効性の検討を行っている。また、除菌後のフォローなど、具体的な実施方法の検討を進めている。
  6. 小児における機能性消化管疾患の疫学:
    小児における機能性消化管疾患の疫学に関して検討を進めている。
  7. 小児IgA腎症の障害評価:
    小児IgA腎症における腎生検組織においてCD68、myeloid-related protein(MRP)8、MRP14、α-SMA染色を行い、マクロファージの影響や、線維化の程度などを治療法ごとに組織学的な検討し、小児IgA腎症治療の検討を行っている。
  8. 尿細管障害の関連因子:
    尿細管細胞障害は単独、もしくは糸球体障害の関連として出現する。各種病態における尿細管細胞障害の発症におけるIL-18などのサイトカインの関与について検討を進めている。
  9. 夜尿症の発症関連因子の研究:
    膀胱の過敏性とアセチルコリンとの関連について、札幌医大泌尿器科を中心とした全国レベルでの研究に参加し、病態解明を進めている。また夜尿症と覚醒障害に関わる因子を解析し、新たな治療法の開発に向けて研究を行っている。
  10. MRスペクトロスコピー測定による新生児脳損傷早期での予後評価:
    3T MRI装置の開発にともない再普及されつつあるMRスペクトロスコピーを測定し新生時期からの発達過程基準値を用いて新生児仮死早期の新生児脳損傷と発達障害の予後評価の検討を行っている。
  11. 低出生体重児の消化管機能障害に関する周産期背景因子の疫学的調査:
    小児外科と協力し国内11施設における新生児壊死性腸炎(NEC)、胎便関連性腸閉塞(MRI)、特発性腸穿孔(FIP)、胎便性腹膜炎(MP)の周産期因子を解析し発症危険因子の解明を行っている。
  12. 新生児消化管アレルギーでのサイトカインやバイオマーカーの検討:
    新生児消化管アレルギーの病因解明のために好酸球やサイトカインやバイオマーカーの検討を行っている。好酸球増多と上昇した血清IL-5間には因果関係を認め、治療乳介入児に乳児期アレルギー疾患の発症は少なかった。炎症性腸疾患の活動性マーカーである便中カルプロテクチンを用い病勢や治療評価に用いて乳児期アレルギー疾患の予防対策を検討している。
  13. IBD(炎症性腸疾患)合併母体児の臨床学的検討:
    IBD母体児において、母体病勢と発達予後の関連に対して検討を行っている。
  14. 小児期食物アレルギーの新規管理法の確立:
    自然治癒の期待できない難治性の食物アレルギーに対して経口免疫療法を行い、その耐性獲得のメカニズムを検討している。経口免疫(脱感作)療法に関する多施設研究に参加し、新たな治療法の確立を進めている。
  15. 小児アナフィラキシー治療の検討:
    アナフィラキシー治療症例の多施設研究に参加し、問題点を明らかにした上で臨床に応用している。患者ごとに異なる原因因子を特定し、発症予防の対策を検討している。
  16. 小児神経疾患の病態解明・治療法開発:
    小児神経疾患に対する多施設共同研究を行い、特に希少難治性疾患、超重症児の臨床病態の解析、治療法の確立を目的とした臨床研究を行っている。
  17. 小児慢性頭痛の診断・治療システムの開発:
    小児慢性頭痛において、特に一次性頭痛との鑑別が難しい起立性調節障害、心因性頭痛の診断・治療系の確立を進めている。
  18. エコチル調査(環境リスクが子どもたちの成長・発達にどのような影響を与えるのか):
    エコチル調査兵庫ユニットセンターのメンバーとして、「胎児期から小児期にかけての化学物質曝露をはじめとする環境因子が、妊娠・生殖、先天奇形、精神神経発達、免疫・アレルギー、代謝・内分泌系等に影響を与えるか」という中心仮説を解明するために、妊娠中から13歳になるまでに定期的に健康調査を行なうとともに、血液、尿、母乳などの生体試料を用いて化学物質の曝露などについて調べるほか、様々な環境要因、遺伝要因、社会要因、生活習慣要因などについて、幅広く調べ、解析を行っている。

自己評価・点検及び将来の展望

小児科学講座は、小児の難治性疾患の病態解明と治療法の開発を主眼に研究を続けている。患者さんには、現時点で解明されている病態生理では説明できないことがみられる。そのような患者さんでみられる病態を個体から分子に至る様々なレベルで解析することにより、新たな病態が明らかになり、治療法の開発が可能となる。このような観点から、研究を継続していく。さらに、成年後の疾患予防を見据えた小児への対策を含めて研究を実施していく。

講座情報

責任者
竹島 泰弘(主任教授)
専門分野:筋、代謝、内分泌
教授
奥田 真珠美
専門分野:消化器、感染症
非常勤講師
大塚 欣敏、前川 講平
臨床准教授
下村 英毅、李 知子
講師
柴田 暁男
TEL
0798-45-6352
FAX
0798-45-0137
講座専門サイト
https://www.hyo-med.ac.jp/department/ped/
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