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兵庫医科大学医学会

脳神経外科学/脳卒中センター

講座(部署)紹介

脳主幹動脈急性閉塞症に対する血管内治療の普及に関する研究、広範な早期虚血性変化を有する脳主幹動脈急性閉塞症に対する血管内治療の有効性を検討するランダム化比較試験、病院前脳卒中分類スコアの開発、頚動脈・頭蓋内動脈狭窄に対する血管イメージング、脊髄手術支援機器、脳腫瘍の術前画像診断や新たな手術方法の研究、各種幹細胞を用いた神経再生治療の基礎・臨床応用などを行っている。

  1. 広範囲の初期虚血性変化を有する脳主幹動脈急性閉塞症に対する血管内治療の有効性に関するランダム化比較対照試験
  2. 血栓回収療法におけるDWI FLAIR mismatchと予後に関する観察研究
  3. 血管内治療を実施した脳主幹動脈閉塞症例における出血性合併症に対するDynaCTの有用性の検討
  4. AIを用いた病院前脳卒中分類スコアの開発 (JUST AI Score)
  5. Stroke Thrombectomy and Aneurysm Registry (STAR)
  6. 未破裂脳動脈瘤血管内・外科治療に関する国内多施設後向き・前向き登録研究
  7. Computational Fluid Dynamics (CFD)を用いた、FD治療の効果予測に関する観察研究
  8. 頚動脈狭窄症におけるMRIプラークイメージング
  9. 脳主幹動脈狭窄症におけるMRIプラークイメージング
  10. 急性期脳梗塞に対するLDLコレステロール低下療法の効果に関する観察研究
  11. 脊椎脊髄疾患手術患者を対象にした前向き登録研究
  12. 脊椎・脊髄手術における手術支援装置の応用
  13. 脳腫瘍術前画像診断および脳腫瘍手術方法の研究
  14. グリオーマ幹細胞を用いた新規グリオーマ治療法の開発
  15. 経鼻的内視鏡下経蝶形骨洞手術の治療成績に関する研究
  16. 神経再生医療の基礎研究と臨床応用

研究の現状

概要

脳主幹動脈急性閉塞症に対する血管内治療の全国調査や研究ならびに早期虚血性変化を有する症例への適応拡大を検討するランダム化比較試験を行うと共に、脳卒中の搬送体制のシステムに繋がる研究、頚動脈プラーク診断やその治療、脳腫瘍の画像解析や新規治療法に関する研究、新たな脊椎手術機器を用いた研究、神経再生医療の基礎研究と臨床応用などを行っている。

主題

  1. 広範囲の初期虚血性変化を有する脳主幹動脈急性閉塞症に対する血管内治療の有効性に関するランダム化比較対照試験
    本研究の目的は、中等度から重度の初期虚血性変化を有する脳主幹動脈急性閉塞症患者(ASPECTS 3-5またはDWI-ASPECTS 3-5)を対象として、血管内治療による治療の有効性を評価することである。現在は最終健常確認時刻から6時間以内に割付可能、もしくは最終健常確認時刻から6-24時間に割付可能かつ頭部MRI FLAIR画像にて早期虚血性変化に合致した高信号領域を認めない患者を対象としている。本学は研究代表者および研究事務局を担当している。
  2. 血栓回収療法におけるDWI FLAIR mismatchと予後に関する観察研究
    超急性期脳梗塞症例におけるDWI FLAIR mismatch(DWIで高信号を呈しているがFLAIRでは信号変化がない場合)の存在は、発症4.5時間以内であることを示唆しており、DWI FLAIR mismatchを認める症例に対するt-PA静注療法は有効かつ安全に施行可能であるとの報告が複数ある。我々は、血栓回収療法における、術前のDWI FLAIR mismatchの有無と予後との関連について報告している(Cerebrovasc Dis.2020)。本研究を一般化するため、多施設共同研究を計画している。
  3. 血管内治療を実施した脳主幹動脈閉塞症例における出血性合併症に対するDynaCTの有用性の検討
    脳主幹動脈閉塞症に対して、再開通を目的とする血管内治療による出血性合併症は、患者の機能予後および生命予後に大きく関与することが知られており、早急な対応を必要とする。DynaCTは術中および術直後に患者を移動させることなく、早期に頭蓋内出血を評価できる。我々は単純CTと比較することで、その有効性について検討を行なっている。
  4. AIを用いた病院前脳卒中分類スコアの開発 (JUST AI Score)
    脳卒中患者が治療の適した病院へ短時間で搬送されることを目的とし、救急隊員が病院前に脳卒中の病型(脳主幹動脈閉塞症、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)を瞬時に分類可能なスコアをAIを用いて行い、脳卒中の搬送体制のシステム開発につなげる。
    我々はこれまでに、当科と関連施設に搬入された2200名以上の患者データを解析し、病院前脳卒中病型予測スコアを開発し、検証を行った。その結果を英文しに報告している。(Uchida K, Yoshimura S, et al. Stroke.2018)
  5. Stroke Thrombectomy and Aneurysm Registry (STAR)
    血管内治療(EVT)は急性虚血性脳卒中および脳動脈瘤に対する標準治療となった。EVTを施行する症例は、ランダム化比較試験では特定の患者に限定される一方、実際には臨床試験の基準を超えて拡大しているため、実臨床に即したレジストリが不可欠である。研究目的は、Department of Neurosurgery Medical University of South Carolinaが中心となり、中枢神経系血管病変に対する外科的およびEVTを受けた患者の転帰に関する国際的多施設レジストリを開発することである。
  6. 未破裂脳動脈瘤血管内・外科治療に関する国内多施設後向き・前向き登録研究
    脳ドックの普及などで、未破裂脳動脈瘤が発見される頻度が増加している。破裂瘤は再破裂予防のため積極的な治療適応となるが、瘤の形態学的特徴、破裂に関与する因子を考慮し、未破裂脳動脈瘤に対する破裂予防治療が行われる頻度も少なくない。治療には、血管内治療と外科治療が含まれるが、特に血管内治療の急速な進歩により、様々な治療手段が選択可能となった。これまで、未破裂脳動脈瘤の治療成績に関する大規模研究は行われていない。研究目的は脳動脈瘤治療を網羅的に把握し、治療成績を継時的かつ普遍的に蓄積し、その実態と治療成績を明らかにすることである。
  7. Computational Fluid Dynamics (CFD)を用いた、FD治療の効果予測に関する観察研究
    脳動脈瘤に対する血管内治療は近年目覚ましい発展を遂げているが、大型・巨大脳動脈瘤に対する血管内治療は再開通が多く、いまだ治療困難とされている。近年、動脈瘤内への血流を制御することによって動脈瘤の治癒を目指す新たなデバイスとしてフローダイバーターが開発されて、本邦でも使用可能となり、良好な治療成績を治めている。一方で、動脈瘤が残存し、治癒しない症例も存在し、フローダイバーターの治療効果を予測するのが困難である。本研究では、フローダイバーター治療を行った脳動脈瘤患者さんを対象として、Computational Fluid Dynamics(CFD; 数値流体学)を用いて、フローダイバーターの治療効果の予測因子を検討する。また2020年からは、FREDという新たなフローダイバーターステントが本邦でも使用可能となった。FREDに関しても効果予測因子を検討し、デバイスによる治療効果の違いを検討する。
  8. 頚動脈狭窄症におけるMRIプラークイメージング
    頚動脈プラークの性状を術前に判定できれば、安全に手術を行える。本研究では米国シアトルのワシントン大学との共同研究で高機能MRIを用いて質的・量的な評価を行っている。
  9. 脳主幹動脈狭窄症におけるMRIプラークイメージング
    脳主幹動脈狭窄症の自然歴は未だに不明であり、エビデンスのある治療方法が確立していない。高磁場MRIを用いて脳主幹動脈狭窄症におけるプラーク性状を診断し、自然歴および高リスクのプラークを確定する。
  10. 急性期脳梗塞に対するLDLコレステロール低下療法の効果に関する観察研究
    急性期脳梗塞患者に対して、LDLコレステロールを低下させることにより予後が改善するという報告があるが、ASSORT trialにて、急性期脳梗塞患者におけるスタチン早期内服による予後改善効果を検討したが有意差が出なかった(Yoshimura S, Uchida K, et al. Stroke. 2017;48:3057-3063)。現在はPCSK9を用いてLDLコレステロールをさらに大きく低下させることで予後が改善しないかについて検討している。
  11. 脊椎脊髄疾患手術患者を対象にした前向き登録研究
    本研究の目的は兵庫医科大学脳神経外科及び関連施設、協力施設において治療の行われた脊椎脊髄疾患手術患者において、前向き登録を行い、治療成績評価・分析を多施設研究として行うことを目的とする。頚椎変性疾患、腰椎変性疾患、腫瘍、外傷、感染などを対象とし、疾患別に登録情報をそれぞれ策定、登録とフォローアップを行う。
  12. 脊椎・脊髄手術における手術支援装置の応用
    当院手術室、ハイブリッド手術室に設置されている多軸血管撮影装置は広範囲において高画質な術中透視象が獲られる。手術中に骨の形状を詳細に描出し、脊髄除圧に必要な骨の掘削範囲、固定に必要なスクリューを刺入する位置等を術中に把握することで手術成績の向上を目指す。経皮椎弓根スクリュー留置時に電磁波バイポーラセンサーを有するJamshidi needleを用いることにより、安全・正確に施行することを目指す。ナビゲーションシステムを含め、複数の手術支援装置を併用、その手術成績を分析する。
  13. 脳腫瘍術前画像診断および脳腫瘍手術方法の研究
    MRIファイバートラッキングを用いた神経線維の走行を画像化することで、治療計画の補助診断、治療効果の判定を行ない、新規脳腫瘍手術方法の開発を行っている。SWI法を用い、腫瘍内の微小出血を検出することで術前に脳腫瘍の組織診断、悪性度の評価を行っている。
  14. グリオーマ幹細胞を用いた新規グリオーマ治療法の開発
    グリオーマ幹細胞の網羅的遺伝子解析から、グリオーマの増殖能や化学放射線耐性に寄与する因子を抽出し、従来の神経膠芽腫細胞株や新たに構築した培養細胞を用いて、新規グリオーマ治療となり得るターゲットを検索する基礎研究を行っている。
  15. 経鼻的内視鏡下経蝶形骨洞手術の治療成績に関する研究
    トルコ鞍部腫瘍に対し経鼻的に内視鏡手術を行っている。本法は低侵襲かつ安全であり、摘出率を向上させることができる。更なる摘出率および安全性の向上のため4K高性能内視鏡を使用し、ニューロナビゲーションおよびハイブリッド手術室での術中画像診断を行っており、どの症例に最適かを解析している。
  16. 神経再生医療の基礎研究と臨床応用
    脳・脊髄組織は一度損傷されると回復が難しく、再生医療に期待がかかっている。本研究は当大学先端医学研究所神経再生部門(中込隆之教授)医薬開発研究部門・細胞治療学(山原研一准教授)と共同で、脳卒中・脊髄損傷に対する再生医療に関する基礎研究を行っており、臨床応用を目指している。当科では以下の3つの細胞を用いた神経再生治療を目指している。また、神経再生治療に関連した臨床研究・治験についても積極的に参加している。
    1. ヒト脂肪組織由来幹細胞
      同種脂肪組織由来幹細胞を用いた神経再生療法を臨床へ応用するための基礎研究を行っている。脳卒中の動物モデルでの有効性の確認は終了している段階である。
    2. ヒト羊膜由来間葉系幹細胞
      本学の医薬開発研究部門・細胞治療学にて確立されている間葉系幹細胞であり、脳卒中・脊髄損傷に対して早期の臨床試験の開始を目指し、動物レベルでの有効性の検討を行い、有効性が示されており、臨床応用への準備を進めている。
    3. 脳傷害誘導性多能性幹細胞
      我々はヒト脳梗塞後に傷害誘導性神経幹細胞(ischemia-induced Multipotent Stem cells: iSCs)が誘導されることを確認しており、このiSCsを用いた脳傷害後の神経再生機構の解明ならびに神経再生療法の実現を目指している。iSCsの研究により、内因性幹細胞を用いた神経再生療法を樹立し、現状では治療法の限られる脳梗塞に対する新たな治療法を提示できるように、研究を進めている。

自己評価・点検及び将来の展望

上記主題はすべて現在進行している研究テーマであり、各主題に対して責任スタッフを設け、グループで分担し、定期的な自己点検・評価を行っている。
主題1-10は脳血管グループが主体となって展開しており、学会発表を繰り返し行っており、一部はすでに英文雑誌に論文として発表している。主題2は今後の適応拡大に寄与する可能性があり、主題4は今後全国の救急搬送システムに応用できる可能性がある。
また主題11, 12はそれぞれ脊椎脊髄グループ、主題13,14は脳腫瘍グループ、主題15は下垂体内視鏡グループが担当し、データを積み重ねている。
主題16は当大学先端医学研究所神経再生部門とともに研究を進めており、早期の臨床応用を目指している。

これらの研究主題は疾患の治療成績向上に直結する臨床研究であるため、その結果が脳神経外科学の進歩に直結すると考える。


吉村 紳一 主任教授
責任者| 吉村 紳一
(主任教授)
専門分野:脳神経外科疾患全般
講師| 陰山 博人、白川 学、内田 和孝、髙木 俊範、藏本 要二、阪本 大輔
TEL| 0798-45-6458
FAX| 0798-45-6457

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