医学部医学科
siryoseikyu2021.jpg
図書館
兵庫医科大学医学会

循環器・腎透析内科学(診療科:循環器内科)

講座(部署)紹介

本学では近年、内科学講座の再編成が進められ、まず2018年10月に共に旧第一内科を源流とする循環器内科と冠疾患科の2講座が新たに循環器内科として統合された。2020年4月には腎透析内科を加え、循環器・腎透析内科学講座となり現在に至っている。
大学病院の診療では循環器内科と腎透析内科は独立した診療科として運営されている。いずれの診療科においても、基礎研究のみならず臨床研究を積極的に行い、教育・研究・診療のさらなる発展のため、学会や論文での研究内容の報告や、国内・海外研究機関との共同研究や留学などの人事交流も積極的に行っている。

研究の現状

概要
当教室では、冠動脈疾患・末梢動脈疾患・心不全・心筋症・高血圧・不整脈など循環器病全般にわたる研究を行っている。
心血管疾患の新たな知見を発信するという大学病院の使命を果たすべく、種々の多施設共同研究を積極的に主導・参加し、高水準の臨床研究および基礎研究に取り組んでいる。


主題
  1. 急性心筋梗塞の多施設共同研究:
    急性心筋梗塞の診断は、高感度・特異的な心筋トロポニンの開発に呼応して新しい国際定義(universal definition)が提唱されたが、本邦の臨床現場では急性冠症候群の診断と治療に混乱を生じている。新国際基準が本邦に普及しない理由の一つとして、本邦における国際定義に基づく急性冠症候群の予後に関するデータの不在が指摘され、それを明らかにすることは今後の急性心筋梗塞診療の国際比較のためにも不可欠である。
    このため、全国でuniversal definitionにより診断された急性心筋梗塞を前向き登録するJ-MINUET研究を主導し、その概要を報告した。現在、詳細なサブ解析に加え、長期予後の追跡調査を進めている。
  2. 血管内画像検査法を用いた研究:
    冠動脈・末梢血管(頸動脈・下肢血管)における血管内超音波法(IVUS)、光干渉断層法(OCT/OFDI)、血管内視鏡検査など各種血管内画像診断法を用いた臨床研究を行っている。さらに、剖検例を対象として病理学講座と共同で摘出心のex-vivoでの血管内画像診断を行い、病理所見と比較する研究を行っている。
    具体的には冠動脈・末梢動脈における炎症細胞浸潤とコレステロール沈着、新生血管増生やプラーク内出血、表在性あるいは深部の石灰化など動脈硬化の様々な病期の血管内画像診断法の所見と病理像の対比を通して、動脈硬化の進展過程の解明に取り組んでいる。また、冠インターベンション慢性期再検査時に3枝にOFDIを行い、動脈硬化の経過を観察する研究を継続的に行っている。
    インターベンション治療で広く用いられているステントでは、従来型ステントにおける再狭窄が薬物溶出性ステントの登場により激減した反面、neoatherosclerosisやステント血栓症などの問題が指摘されている。このステント治療に対する冠動脈の反応を、血管内画像診断法と病理から総合的に解析している。さらに血管内視鏡によるステントの観察に関する多施設共同研究(MICASA研究)を主導し、継続している。
    下肢の閉塞性動脈硬化症に対するインターベンションについては、新しいデバイスの有用性を血管内画像診断法を用いて検証し報告している。
  3. 下肢閉塞性動脈硬化症の病理学的研究:
    近年、冠動脈領域では動脈硬化進行の機序が明らかとなってきた。一方で下肢動脈領域では冠動脈領域と類似点はあるものの、独自の機序の存在が示唆されている。中でも総大腿動脈領域の石灰化病変に関しては、発症機序など不明な点が多く、予防法がない。
    これまでに、大動脈弁狭窄症の進行に弁尖内血管新生と新生血管の破綻による弁尖内出血が関与していることやNFκB-HIF pathwayが大動脈弁における血管新生や石灰化に関与することを明らかにした。大動脈弁の石灰化病変と総大腿動脈の石灰化病変が類似することに着目し、総大腿動脈石灰化病変と病変内血管新生およびNFκB-HIF pathwayとの関連を、ヒト摘出総大腿動脈を用いて病理学的に検討することを目的として研究を継続している。
  4. 下肢閉塞性動脈硬化症と心臓拡張不全の研究:
    高齢化、食生活の欧米化による生活習慣病の増加により、閉塞性動脈硬化症が増加している。閉塞性動脈硬化症は足血管のみならず、冠動脈や脳血管にも病変を有する重篤な疾患で、心不全の予後不良因子とされているが、左室拡張能との関連性に関しての報告は少ない。
    下肢閉塞性動脈硬化症と心臓拡張不全の関連性が認められれば、閉塞性動脈硬化症患者の心不全に対する早期の治療介入が可能となると考えている。
  5. 肺高血圧症の早期発見・早期治療の確立:
    多岐にわたる肺高血圧症の原因及び治療方針について、積極的に他科とコラボレーションを行い、非侵襲的検査からなるべく早期に肺高血圧症を発見し、早期治療を行うアルゴリズムを作成すべく研究を行う。肺高血圧症のデータベースを作成し、肺高血圧症における心臓や肺動脈の形態や圧の変化を、非侵襲的及び侵襲的検査の両面から検討し、最終的には非侵襲的検査から早期に肺高血圧症を発見し、早期治療、そして予後改善につながることを目指している。
  6. 心不全の病態生理と治療に関する研究:
    高齢化社会の中で、心不全は今後爆発的に増加すると考えられる。ACE阻害薬やβ遮断薬などが心不全の予後改善に寄与しているが、それらを用いても心不全を繰り返す難治性症例が増加している。心不全の急性期治療は早期のうっ血解除が重要であるが、利尿薬抵抗性症例も増えている。
    これまでに、高張食塩水とともにループ利尿薬を投与する治療が利尿薬抵抗性の解除につながり、利尿薬投与法の一つとして有用であると報告した。後ろ向き研究では日本で頻用されているカルペリチドと比較して費用対効果に優れていることを報告し、さらに前向き研究として多施設臨床研究(CONFIRM ADHF試験)を主導した。また、長時間・短時間作用型利尿薬による心不全患者の予後改善効果を比較したJ-MELODIC研究を主導し、報告した。
    大学病院における心不全患者のデータベースを維持・管理し、入退院時の血液・尿検査や非侵襲的検査のデータなどから、心不全の病態生理と治療に関する研究を継続的に行っている。
  7. “心不全を尿から診る”研究:
    心不全の病勢を反映するバイオマーカーとしてNa利尿ペプチドが頻用されている一方、Na利尿ペプチド以外のバイオマーカーが無いため、新規バイオマーカーの探索が強く求められている。我々は、患者負担が無く、頻回に得られる尿サンプルを用いた新たな心不全診療を模索している。尿中の電解質やmiRNAなどの指標を解析し、心不全診療における有用性を探索している。
  8. 画像診断のデータを用いた病態把握、診断指標の確立:
    超音波画像診断を中心に心不全、弁膜症診断の病態把握、診断、治療効果判定に有用な指標についての研究を行っている。従来から用いられているパルスドプラ法で得られる指標のみならず、最新の2D、3Dスペックルトラッキングの技術を用いた心腔計測、心機能計測法を用いて臨床に有用な非侵襲的指標の確立、アルゴリズムの作成を目指している。
  9. 左房リモデリング指標としてのabnormal conduction velocity:
    心房細動はその進行にともない電気的、形態的リモデリングが進む。近年、心内電気的マッピング法の進歩により心筋伝導を詳細に検討することが可能となり、abnormal conduction velocityの概念が新たに生み出された。その意義は一般的ではないが、現在の我々の知見では心房細動症例においてabnormal conduction velocityが左房電気的リモデリングの前段階である可能性が示唆されている。conduction velocityを詳細に検証し心房細動の機序、治療に役立てていく。
  10. 次世代の心不全診療に関する探索的研究:
    心不全診療のデジタルトランスフォーメーションを目指している。今までルーチンで施行していた項目(体温やSpO2等)を見直し、心不全患者における24時間SpO2測定や体表温測定等から次世代の医療に活用可能なデータの収集を行い、そのデータを用いて、AIによる非対面式の心不全診療が可能となることを目ざした研究を行っている。
  11. ペースメーカ植込み患者における心房高頻拍エピソードの予測因子:
    無症候性心房細動の予測は困難であり、脳梗塞を発症し初めて心房細動と診断される症例もある。健康診断が普及するも発作性心房細動の診断は発作時に健診を受けない限り困難である。ペースメーカ植込み患者における心房高頻拍エピソード計測機能を用いて早期の無症候性発作性心房細動予測因子を検証する。無症候性発作性心房細動予測因子を明らかにし、早期発見につなげることにより心原性脳梗塞の発症を予防できると考える。
  12. 頻脈性心筋症の機序の解明:
    心房細動患者の中には頻脈性心房細動が持続することで左室収縮能が低下する症例が存在する。同程度の心拍数でも左室収縮能が低下する症例としない症例が存在するが、その違いは明らかではない。いくつかの報告では左室拡張能の障害が寄与すると報告されているが未だ詳細は明らかではない。頻脈性心筋症をきたす心房細動の特徴および予測因子を検証することで心房細動治療介入の時期、方法を明らかにする。
  13. 分子学的手法を用いた心不全増悪機序解明の基礎研究:
    これまで心筋梗塞や大動脈縮窄圧負荷による心不全モデルマウスや食塩負荷による心不全モデルラットを用いて、心不全増悪機序の解明を行ってきた。また、大動脈縮窄圧負荷とβアドレナリン受容体刺激による新規心不全モデルの開発も行ってきた。今後は、これら心不全モデル動物や遺伝子改変動物を用いて、新規心不全増悪因子の解明およびそれらによる病態抑制効果の探索を継続していく。
  14. 循環器疾患における鉄の役割に関する研究:
    これまでに動物実験や分子生物学的手法を用いて、高血圧症や慢性腎臓病の病態に細胞内鉄取り込み受容体であるトランスフェリン受容体1を介した鉄取り込みが関与していることを明らかにしてきた。酸化ストレスに関わる鉄は他にも多くの循環器疾患の病態に関係していると考えられる。今後は、動脈硬化症などの血管病変におけるトランスフェリン受容体1および鉄の関与について検討していく。


自己評価・点検及び将来の展望
研究においては、各主題の研究成果について、国内外の学術集会や英文雑誌を含む医学雑誌で発表した。今後も、多施設共同研究などの臨床研究はもちろんのこと、臨床応用を目指した基礎研究を継続し、世界へ情報発信できるよう努めていく。そのためにも学会発表から論文投稿までの期間を短縮し、早期の業績化を目指す。
臨床においては、急性心筋梗塞に対するdoor to balloon時間90分未満をほぼ全例で達成するなど充実した循環器急性医療を含む、エビデンスに基づいた医療を提供するとともに、大動脈弁狭窄症に対する経カテーテル大動脈弁留置術などの新しい治療法を積極的に導入している。今後も引き続き、大学病院にふさわしい高度・先進的な循環器医療の維持・発展を目指す。


石原 正治 主任教授
石原 正治 主任教授
責任者| 石原 正治(主任教授)
教授| 朝倉 正紀
准教授| 高橋 敬子、峰 隆直
講師| 内藤 由朗、合田 亜希子、赤堀 宏州、今仲 崇裕、堀松 徹雄
TEL| 0798-45-6553
FAX| 0798-45-6551

兵庫医科大学 〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1番1号 TEL:0798-45-6111 (代)

Copyright(c) Hyogo College Of Medicine.All Rights Reserved.