兵庫医科大学 呼吸器内科(兵庫医科大学病院 呼吸器内科)

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堀尾 大介

兵庫医科大学呼吸器・血液内科学の堀尾です。この度2020年度大学院生学術賞に選考していただき誠にありがとうございます。選考委員の先生方に心から感謝申し上げます。今年度の科学研究費助成事業にも採択いただきました。また、今回の受賞、科研費の採択にあたり特に御指導頂きました木島貴志主任教授、南俊行先生にこの場を借りて深く御礼申し上げます。私は獨協医科大学を卒業後、地元の兵庫医科大学呼吸器内科に入局し、主に肺癌・悪性胸膜中皮腫(Malignant Pleural Mesothelioma: MPM)を中心に診療・研究を行ってまいりました。

悪性胸膜中皮腫は、体内に吸入されたアスベストが腫瘍微小環境中に存在する腫瘍関連マクロファージに刺激を与え続けることでIL-1βなどの炎症性サイトカインの分泌を促進し、発生だけでなく進展にも影響していると考えました。実験の結果、IL-1βはCD26などの癌幹細胞マーカーの発現を誘導し三次元培養下での増殖能の増強を認めました。アスベストが腫瘍関連マクロファージを刺激し続けることで悪性胸膜中皮腫細胞の発生や進展が増強することが示唆されたことから、IL-1βやIL-1β受容体に作用する薬剤が悪性胸膜中皮腫の癌幹細胞化を防ぐ可能性があると考えています。

私が日々診療・研究に邁進しております胸部悪性腫瘍の領域では、肺癌は新たな分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬と細胞傷害性化学療法の併用など、毎年ガイドラインの改定が追いつかない程治療選択肢が増えております。ですが悪性胸膜中皮腫においては治療法の選択肢が少なく、診断治療に難渋するケースが多々ございます。最近悪性胸膜中皮腫の初回治療にイピリムマブとニボルマブによる免疫チェックポイント阻害薬の併用療法が承認されましたが、それでもがん薬物療法のみでの根治は依然として困難です。このような治療法が限られている中皮腫の新規治療法開発の足掛かりとなるよう今後も研究を続けてゆく所存です。幸い当科は指導医も多く、また研究設備も大変充実しております。特に悪性胸膜中皮腫においては日本をリードする立場にございます。また出身や学歴に関係なく、お互い気持ちよく仕事ができるアットホームな雰囲気があります。呼吸器疾患、胸部悪性腫瘍に少しでも興味のお持ちの方は是非、医局へお越しください。

兵庫医科大学 呼吸器・血液内科学
堀尾 大介