教育・研究について

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研究概要 ~ 現在の主な研究テーマ

強迫性障害(強迫症)と関連する神経精神疾患

当施設には、現在700名を超える強迫性障害(強迫症)患者が全国から受診しており、外来あるいは入院治療を行っている。その多くは、他の病院やクリニックなどでの治療が奏功せず紹介されたケースであるが、この様な治療の難しさの背景には、この疾患の異種性(heterogeneity)が関連している。すなわち、DSMやICDなどのいわゆる操作的診断基準によって強迫症と診断される疾患群は、均一な集団ではなく多数の病態から強迫という共通の症状を呈しているに過ぎないと考えられる。このheterogeneityにより強迫症に対する有効な治療法は患者によって異なるが、この選択を最初から適切に行うことは現時点では難しい。さらに、これまでに試されたどの治療法に対しても十分な症状の改善が得られない難治例も未だに存在する。

このような状況を打開するため、我々は強迫症のheterogeneityを解明しサブタイプ化することにより、治療開始時点で有効な治療法を選択できる精度を高めることを目的に研究を進めている。具体的には、症状をより詳細に分析し併存疾患(発達障害やADHD、チックなど)なども含めた臨床的分類による治療反応性の分析、functional MRIを利用した脳画像研究、NIRSと呼ばれる光トポグラフィを用いた脳機能特性の抽出、遺伝子分析によるサブタイプ分類などに関する研究が進行中である。さらにこれまでの治療法に反応が乏しい難治症例に対しては、新しい治療法の確立を求めて臨床研究を継続している。具体的には、入院環境を利用した認知行動療法と心理療法の組み合わせ、新しい治療薬剤の組み合わせ、家族療法や生活環境にアプローチする心理社会的治療法などを実践し効果を上げている。

さらには溜め込み症や身体醜形症、抜毛、皮膚むしりなど強迫関連症、チックやトウレット障害に対しても、その病態解明や治療法開発に取り組んでいる。

これらの研究の成果により、どのような強迫症や強迫関連症にも適切な治療法を早期に選択でき、治療効果を全ての患者に享受してもらえるようなゴールデンスタンダードとなる治療プロトコルの開発を目指している。

現在の主な研究テーマ
  • 摂食障害患者の治療脱落と改善に関連する要因の分析
  • 精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究
  • 強迫症と注意欠陥多動性障害併存の研究
  • 精神疾患、特にうつ病の動物モデル研究 うつ病の動物モデルを用いて、うつ病における心身相関メカニズムの解明、精神免疫学的研究を行っています。
  • 強迫性障害(強迫症)と関連する神経精神疾患 どのような強迫症や強迫関連症にも適切な治療法を早期に選択でき、治療効果を全ての患者に享受してもらえるようなゴールデンスタンダードとなる治療プロトコルの開発を目指しています。
  • 妊産婦の精神疾患とメンタルヘルス 妊産婦のメンタルサポートについて、多職種連携による包括的なケアを実践し、その介入効果を前方視的に調査しています。
  • 認知症 アルツハイマー型認知症のリスク遺伝子と言われているアポリポタンパクE遺伝子多型ε4の有無を解析すると同時に、発症や認知症の行動・心理症状(BPSD)の発症予測遺伝子を検討しています。
  • 摂食障害 治療脱落と摂食障害の改善に関わる要因を調査し、それらを明らかにすることにより、より良い治療を開発していくことを研究テーマとしています。
  • 統合失調症および精神病性障害 統合失調症患者の血液からグルテン感受性を測定し、その臨床的背景との関係性とグルテン感受性を有する患者へのグルテンフリー食の有効性に関する研究を行っています。
  • 緩和ケア より良い包括的支援を行うために希死念慮の関連要因と、介入による効果(薬物治療・心理的サポート・疼痛コントロール・リハビリ・ソーシャルサポート)を今後調査していきたいと考えています。
  • 神経病理 近年、神経変性疾患における原因蛋白の特定や染色技術の発展が見られており、当科では免疫染色法による症例の再検討も行っています。
  • 発達障害をベースとする神経症性障害の新しい治療プロトコル開発
  • NIRSを用いた脳血流測定による病態生理の解明
  • 強迫症のサブタイプに関する脳画像研究
  • 遺伝子多型によるSSRIの有効性の相違