受賞

「大気環境学会学術賞」を受賞しました (公衆衛生学 主任教授 島 正之)

「大気環境学会学術賞(斎藤潔賞)」を公衆衛生学 島 正之 主任教授が受賞しました。

授与団体名

公益社団法人大気環境学会

概要

第55回大気環境学会年会(2014年9月17~19日、松山市)において大気環境学会学術賞(斎藤潔賞)を受賞した。この賞は、国内外において大気環境分野の学術上ならびに社会的に顕著な業績をあげた人に贈られるものであり、同学会初代会長である斎藤潔先生(国立公衆衛生院第三代院長)の名を冠している。同年会2日目の総会において表彰式が行われ、その後に受賞記念講演「大気汚染の健康影響に関する疫学研究:自動車排出ガスと微小粒子状物質(PM2.5)を中心に」を行った。

研究の背景

日本では高度経済成長期に社会問題となった工場に起因する大気汚染は環境保全対策の強化により改善した。その後は自動車交通量の増加により、大都市の幹線道路周辺では自動車排出ガスにより大気汚染の健康影響が懸念されるようになったが、こうした大気汚染の健康影響を疫学的に評価する方法は確立しておらず、日本だけでなく、国外においても十分な疫学研究は行われていなかった。そこで、大型自動車交通量の多い幹線道路の近くにある小学校の児童を対象としたコホート調査(追跡調査)を行うなど、新しい手法を取り入れて大気汚染の健康影響を疫学的に評価した。

研究手法と成果

長年にわたって自動車排出ガスと微小粒子状物質(PM2.5)を中心とした大気汚染の健康影響に関する研究を精力的に行ってきた。中でも、自動車の急増に伴って懸念されていた自動車排出ガスの健康影響に関する疫学研究にいち早く取り組み、小学生を対象に長期間に渡る追跡調査を行って、交通量の多い幹線道路沿道部に居住する児童は二酸化窒素曝露量が高く、気管支喘息の新規発症率が高いことを明らかにした。また、環境省の「局地的大気汚染の健康影響に関する疫学調査」において中心的な役割を果たし、学童調査で自動車排出ガスの指標である元素状炭素への曝露量が多いほど喘息発症率が高くなることを示した。さらに、国内外でさまざまな分野の研究者との共同研究にも取り組み、PM2.5が肺機能低下や喘息症状の増悪に与える影響を明らかにした。

今後の課題

こうした疫学的知見は我が国における自動車排出ガス対策の推進に大きく貢献し、今後のPM2.5等による大気汚染対策を進める上でも活用され、大気環境の改善につながることが期待される。

研究費等の出処

日本学術振興会科学研究費補助金
環境省環境研究総合研究費

掲載誌

大気環境学会誌、Asian Journal of Atmospheric Environment、International Journal of Epidemiology、他

受賞の様子