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肺好酸球症発症因子の発見(免疫学 助教 足立 匠)

医学雑誌「International Immunology」(03 June 2020)に免疫学 足立 匠助教らの論文が掲載されました。

足立らにより、様々な病気に関わる「人の組織傷害」が、アレルギー症状を引き起こす原因となる物質(IL-33)の産生を引き起こすことを証明した研究です。詳細は、下記をご覧ください。


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足立 匠助教

論題

Lung fibroblasts produce interleukin-33 in response to stimulation by retinoblastoma-binding protein 9 via production of prostaglandin E2

論文著者名

足立 匠、安田 好文、武藤 太一朗、世良田 聡、善本 知広、石井 健、黒田 悦史、荒木 喜美、大村谷 昌樹、仲 哲治、中西 憲司

概要

実験的アレルギー性喘息、鼻炎、副鼻腔炎において、また腸管寄生虫感染で認める好酸球性肺炎において、私達はインターロイキン(IL-)33が重要だと報告してきた。しかし、肺組織におけるIL-33産生誘導メカニズムは不明であった。 本研究で私達は、腸管寄生虫を感染させたマウスの肺で認めるIL-33産生がどの様な機序で誘導されるか研究した。私達は寄生虫を感染させると、最初に肺での組織傷害が起こり、遅れて肺でのIL-33産生が起こることに着目した。この現象を受けて私達は、組織傷害を受けた肺組織から遊離された傷害関連分子パターンDAMPs(damage-associated molecular patterns)が、肺組織を刺激してIL-33の産生を誘導する、と考えた。本研究で、肺組織抽出物中にIL-33産生誘導活性を有するDAMPsを発見した。その後、約4年間を費やしDAMPsの正体がretinoblastoma-binding protein 9(RBBP9)であることを証明した。さらにin vitroの系で、RBBP9が近傍の線維芽細胞を刺激してCOX2(シクロオキシゲナーゼ誘導型酵素)の発現とPGE2(プロスタグランジンE2)合成酵素-1の発現を誘導することで、線維芽細胞内でPGE2の産生を誘導し、最終的にはPGE2が実行分子として線維芽細胞集団を刺激してIL-33の発現を誘導することを明らかにした。さらに、in vivoの系でRBBP9遺伝子欠損マウスに腸管寄生虫を感染させると、IL-33の産生が有意に抑制されることを明らかにした。即ち、RBBP9はIL-33の産生誘導に極めて重要な事が明らかとなった。

研究の背景

気管支喘息や腸管寄生虫が感染した肺では、著明な好酸球浸潤と杯細胞からの粘液分泌亢進が認められる。この様な変化はIL-5やIL-13といったTh2型サイトカインの作用で誘導される。従来はTh2細胞がIL-5とIL-13を産生すると考えられてきた。その後、糞線虫感染モデルを用いた私達の研究などから、感染初期にはグループ2自然リンパ球(ILC2)がTh2型サイトカインを産生することが明らかとなった(Yasuda,et al., PNAS.2012)。肺で産生されたIL-33はILC2の強力な活性化因子として作用し、ILC2の増殖とIL-5とIL-13の産生を誘導する。その結果、肺において好酸球性炎症が誘導される。しかし、IL-33の発現がどのような機序で誘導されるのか全く不明であった。私達はアレルゲンや寄生虫によって組織が傷害されるとDAMPsもしくはAlarminと呼ばれる細胞内物質群が細胞外へと放出され、次に、DAMPsの作用で肺組織がIL-33を産生する様になると考え、本実験でDAMPsの同定、並びにDAMPsによるIL-33産生誘導メカニズムを研究した。

研究手法と成果

マウス肺の組織抽出物を作製し、in vitroで線維芽細胞を刺激、またはマウスに経鼻投与した結果、組織抽出物がIL-33のmRNA発現を誘導することを明らかにした。

肺の組織抽出物中の可溶性タンパク画分を分離精製し、プロテオミクス解析を行い、RBBP9を同定した。

肺組織抽出物、またはリコンビナントRBBP9で線維芽細胞を刺激した結果、強力なCOX2とPGE2合成酵素-1の発現が誘導され、更にPGE2産生が認められた。

COX2阻害剤、PGE2レセプター競合阻害剤を用いることで、肺組織抽出物、またはリコンビナントRBBP9刺激による線維芽細胞におけるIL-33の発現誘導がPGE2を介することをin vitro、in vivoで明らかにした。

CRISPR-Cas9を用いた遺伝子編集によりRBBP9欠損マウスを作製し、解析したところ、糞線虫感染後の初期のIL-33発現上昇が、野生型マウスに比べ有意に抑制されていることを明らかにした。

IL-33はT細胞、肥満細胞、ILC2を刺激して、アレルギー応答に関与する2型炎症応答を誘導する。従ってIL-33産生を誘導するRBBP9の発見は、アレルギー炎症の制御を可能にする新規ターゲット因子の発見でもあると考えられる。更に、今回の研究からRBBP9がPGE2の産生を介してIL-33の産生を誘導することが明らかとなった。今後は、RBBP9とPGE2の産生と機能を制御することで、IL-33が関与するアレルギー疾患の治療に役立つものと期待している。

研究費等の出処

AMED、KAKENHI、岸本財団、中西医院

今後の課題

今回の研究からRBBP9で刺激された線維芽細胞がPGE2を産生するようになること、更に産生されたPGE2が周囲の線維芽細胞を刺激してIL-33の産生を誘導出来ること等、が明らかになった。今後は種々のアレルゲンによるIL-33発現誘導においてもRBBP9-COX2-PGE2の関与を検討する必要がある。特に、ヒトのアレルギー疾患におけるRBBP9の役割の解明は、重要な課題である。

掲載誌

「International Immunology」 doi: 10.1093/ dxaa031(03 June 2020)

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