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画像処理とAI(人工知能)により、眼底写真から脈絡膜の厚さを推定することが可能と証明(眼科学 病院助手 小椋 有貴)

国際科学雑誌Natureグループの「Scientific Reports」誌(27 March, 2020)に、眼科学 小椋 有貴病院助手らの論文が掲載されました。

様々な眼底疾患に関連する脈絡膜の厚さについて、画像処理とAIを用いて推定が可能であることを証明した研究です。詳細は、下記をご覧ください。


論題

Choroidal thickness estimation from colour fundus photographs by adaptive binarisation and deep learning, according to central serous chorioretinopathy status

論文著者名

小椋 有貴(1)、井手 敦也(3)、福山 尚(1)、升本 浩紀(2)、田淵 仁志(1)(2)、岡留 剛(3)、五味 文(1)
…1:兵庫医科大学 眼科学 2:ツカザキ病院 3:関西学院大学 理工学部

概要

本研究は、画像処理と人工知能を用いて、眼底写真により脈絡膜の厚さを推定することを目的とした。
対象は正常眼200眼と中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)眼200眼である。中心窩下の脈絡膜厚は、光干渉断層法計(OCT)を使用して測定した。画像処理は、適応二値化を用いて、カラー眼底写真から、脈絡膜血管を描出し、脈絡膜血管密度を算出、特徴量とした。この特徴量を脈絡膜血管密度( Choroidal vascular Appearance Index : CVAI)とし、脈絡膜厚との相関係数を算出した。正常眼では-0.60(p <0.01)、CSC眼では-0.46(p <0.01)であった。人工知能を用いた方法についてであるが、畳み込みニューラルネットワークモデルを作成され、K-Fold Cross Validation(K = 5)によって強化されたトレーニングデータでトレーニングした深層学習法を用いた。カラー画像から予測された値と真の脈絡膜厚との相関係数は、正常眼で0.68(p <0.01)、CSCの目で0.48(p <0.01)であった。脈絡膜厚は、画像処理と人工知能を使用して、正常眼とCSC眼のカラー眼底写真から推定することが可能であった。

研究の背景

脈絡膜厚さは、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)、加齢黄斑変性、近視性網脈絡膜疾患など、さまざまな眼底疾患の病態に関連している。近年、光干渉断層法(OCT)の進化に伴い、脈絡膜の生理学的、病理学的変化に関連した多くの研究が報告されている。 脈絡膜は加齢とともに、また、近視が強いほど薄くなることが知られているが、脈絡膜が薄くなると、豹紋状眼底を呈する。(つまり、脈絡膜血管が眼底写真において観察しやすくなる)。逆に、Vogt小柳原田病(VKH)のように脈絡膜が厚くなると、脈絡膜血管はぼやけて観察しづらくなる。このことを利用して、眼底画像における脈絡膜血管の透見度から脈絡膜厚が推定できるのではないかと考えた。

研究手法と成果

<手法>
対象は正常眼200眼、CSC眼200面である。画像処理で眼底写真を処理する方法と人工知能を用いる2法を用いた。まず画像処理の手法であるが、大きな流れはまず、カラー眼底写真から、網膜血管消去画像を作成、脈絡膜血管を描出し、視神経乳頭を削除、それによって得られた画像から特徴量(CVAI)を算出した。特徴量と脈絡膜厚の実測値の相関を検討した。人工知能についてはK-Fold法を用いた。すべての画像を5つのグループに分け、 4つのグループが拡張し、モデルのトレーニングに使用して、1つのグループを検証データとして使用した。このプロセスを5回繰り返した。 またVisual Geometry Group—16(VGG-16)モデルという畳み込みニューラルネットワークシステムを使用した。眼底写真から直接脈絡膜厚の推測を行った。

<成果>
CVAIと脈絡膜厚の相関は、正常眼において-0.60、CSC眼では-0.46であった。人工知能を用いた方法では、脈絡膜厚の推測値と実測値の相関が、正常眼においては0.68、CSC眼においては0.48であった。

今後の課題

画像処理を用いた方法でも、人工知能を用いた方法でも、眼底写真からの脈絡膜厚の推測は可能であった。しかしながら、今回は対象疾患がCSCと正常眼に限られていた。VKHにおいては寛解期において、一部の患者は夕焼け状眼底というメラニン色素が抜けた、オレンジ色の眼底を示すことがある。この場合、メラニンがない分、脈絡膜血管の透過性が亢進してしまい、実際の脈絡膜厚との相関が得られにくいことが考えられる。今後はそれについての検討と、色調補正などにより問題解決が可能かどうか検討していく。

掲載誌

「Scientific Reports」(27 March 2020)

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