研究業績

大腸がん手術後の患者に対するフォローアップスケジュールを新たに提案(外科学 下部消化管外科 准教授 山野 智基)

Oncotarget誌(22, May, 2018)に外科学 下部消化管外科 山野 智基 准教授らの論文が掲載されました。

論題

Evaluation of appropriate follow-up after curative surgery for patients with colorectal cancer using time to recurrence and survival after recurrence: a retrospective multicenter study

論文著者名

Tomoki Yamano, Shinichi Yamauchi, Kiyoshi Tsukamoto, Masafumi Noda,Masayoshi Kobayashi, Michiko Hamanaka, Akihito Babaya, Kei Kimura, Chihyon Son, Ayako Imada, Shino Tanaka, Masataka Ikeda, Naohiro Tomita, Kenichi Sugihara

概要

<方法>
2007年~2008年の期間において大腸癌フォローアップ研究会に症例登録されているStage(病期)1~3の結腸癌患者3039人および、直腸癌患者1953人の「再発」「再発までの期間」「再発後の生存期間」に影響する臨床病理学的因子を検討しました。

<結果>
病期1・2・3の再発率は結腸癌患者でそれぞれ1.2%、13.1%、26.3%、直腸癌患者ではそれぞれ8.4%、20%、30.4%という結果が出ました。また、早期再発と関連があるのは、結腸癌患者では「CEA高値」「脈管侵襲」であったのに対し、直腸癌患者では「肝転移」「静脈侵襲」でした。さらに、再発後の生存期間には「年齢」「性別」「CEA高値」「組織型」「再発形式」「再発に対する外科切除」などが関係していることが判明しました。

<結論>
病期1は病期2・3とは異なるフォローアップを行うべきであると結論付けられます。再発後の生存期間から評価すると、非分化型あるいはN2転移のある病期3 結腸癌、CEA高値の病期2 直腸癌および、病期3 直腸癌はIntensive follow-upを行うのが妥当と考えられます。

研究の背景

大腸癌治癒切除後の患者フォローアップはガイドラインによって異なります。Intensive follow-upと言われる定期的な画像診断を行う術後5年間のフォローアップは本邦では一般的ですが、海外では必ずしも行われていません。そこで、今回再発までの期間と再発後の生存期間から適切なフォローアップスケジュールを評価しました。

研究手法と成果

再発後の生存期間を多数例で解析した報告は他の癌を含めても非常に少なく、本報告は貴重な存在です。再発に悪影響を与える臨床病理学的因子の多くは、再発した後の生存期間にも影響を与えることが明らかになり、再発時の治療法選択にも有用です。また、現在病期1は病期2・3と同様に術後フォローアップされていますが、再発率が低いことや再発までの期間が遅いことから違うスケジュールを行うことが推奨されます。それにより、医療費削減にも役立つと考えられます。

今後の課題

前向き研究で大腸癌術後に有用なフォローアップスケジュールを構築する必要があります。

研究費等の出処

無し

掲載誌