受賞
第18回日本シェーグレン病学会学会賞を受賞(糖尿病内分泌・免疫内科学 准教授 東 直人)
2026年9月25日、糖尿病内分泌・免疫内科学 准教授 東 直人が第34回日本シェーグレン病学会学術集会で「第18回日本シェーグレン病学会学会賞」を受賞しました。この賞は、シェーグレン病および関連疾患の基礎的あるいは臨床的研究に取り組み、その病因・病態の解明、診断、治療に大きく寄与した研究を行った学会員に対して授与されるものです。
授与団体
日本シェーグレン病学会
受賞テーマ
シェーグレン病における唾液の質的異常と口腔関連QOL障害の経時的解析および治療介入に関する研究
研究のポイント
【1】シェーグレン病では唾液分泌量の減少に加え、唾液の生理作用、つまり唾液の「質」の低下が口腔内病変の形成や難治化、口腔関連QOLの低下と強く関係する。
(1)修復作用:唾液中Epidermal Growth Factor(EGF)の低下と口腔関連QOL低下の関連性
(2)緩衝作用:唾液中重炭酸イオン(HCO3-)の低下に対する重曹うがいによるセルフケアの取り組みとその有効性
【2】シェーグレン病患者の口腔関連QOLの定量的評価
(1)口腔乾燥はただ「乾く」だけではない。一律ではない。
(2)経時的に心理・社会的困りごとが増悪する。
(3)唾液分泌量が保たれていても口腔関連QOLは低下している。その背景の考察。
研究の概要・背景・成果・意義
シェーグレン病(SjD)におけるドライマウスに伴う口腔内病変や諸症状は、主に唾液分泌量低下とそれによる口腔内クリアランス低下に起因すると考えられている。しかし、唾液には種々の生理作用があり、その障害が病態形成に関与している可能性があると考えた。まず、唾液中Epidermal Growth Factor(EGF)に注目し、SjDでは唾液中EGFが低下し、その低下が口腔内病変の形成や難治化、口腔関連Quality Of Life(QOL)と強く関連することを初めて報告した(Mod Rheumatol.2014)。さらに、3年間の経時的解析により、唾液分泌量が大きく変化しなくても唾液中EGFは進行性に低下し、口腔関連QOL悪化と関連することを示し、唾液「量」だけでは説明し得ない病態進展を明らかにした(Mod Rheumatol.2015)。
また、OHIP-14問診法を用い口腔関連QOLを定量的に評価し、SjD患者では心理・社会的困りごとが経時的に増悪することを示した(Mod Rheumatol.2021)。さらに、欧州リウマチ学会(EULAR)による推奨で治療方針が明確でない「無刺激唾液分泌量≥0.1mL/分」の患者群においても口腔関連QOLが有意に低下していることを報告し(Mod Rheumatol.2025)、従来拾い上げられていないSjD患者の疾病負荷を示した点は独創的である。
加えて、唾液緩衝能低下に着目した重曹うがいの検討では、SjD患者のドライマウス症状の軽減に対する重曹うがいの有用性を示し、日常診療で実践可能なセルフケア法になり得ることを示した(臨床リウマチ.2023)。
これらの研究は、SjDの口腔病態を唾液の「量」だけでなく「質」の観点からも捉え、口腔関連QOL評価を合わせることで、病態理解と治療介入の双方に新しい視点を提示している点で、SjDの臨床および臨床研究に重要な貢献を果たしている。