受賞

第21回日本病理学会カンファレンスにて最優秀ポスター賞を受賞(病理学 分子病理部門 助教 髙島 剛志)

本学の病理学 分子病理部門 助教 髙島 剛志が2025年7月25日・26日に行われた第21回日本病理学会カンファレンスにて最優秀ポスター賞を受賞しました。

授与団体

一般社団法人 日本病理学会

受賞演題

特発性肺線維症において発現増加するlong non-coding RNA MIR205HGは IL33発現を制御する

研究の概要・背景

特発性肺線維症は、肺遠位部において線維化(*1)等の組織学的な構造改変を特徴とする難治性の肺疾患である。未だ有効な治療薬は存在せず、新たな病態メカニズムに基づく治療法の開発が期待されている。これまでに特発性肺線維症では、肺遠位部において基底細胞が出現し、基底細胞の増加は予後不良を示すが、基底細胞がもたらす病態寄与メカニズムについては十分に解明されていない。

研究手法と成果

本研究では、正常肺および特発性肺線維症患者から得られたsingle cell RNA-sequencingの公共データを再解析することで、基底細胞において高発現するlong non-cording RNA MIR205HGを同定した。特発性肺線維症患者サンプルを用いた予後解析では、MIR205HG高発現群は有意に予後不良を示した。さらに、基底細胞由来の初代培養細胞やオルガノイドを用いてMIR205HGのノックダウンやMIR205HGを発現しない肺胞上皮オルガノイドにおいてMIR205HGを過剰発現することにより、MIR205HGがIL33の発現を正に制御することを発見した。そのメカニズムとして、MIR205HGのAluJbエレメントがIL33の発現制御に重要であった。近年、肺線維化マウスモデルにおいてIL33が2型自然リンパ球(ILC2)を誘導することで線維化を促進することが報告されている。我々は特発性肺線維症患者サンプルにおいてMIR205HGとILC2の関連を検討したところ、MIR205HG高発現群においてILC2の増加を認めた。これらの結果から、基底細胞に高発現するMIR205HGはIL33の発現を高めることで特発性肺線維症の病態に寄与する可能性が示唆された。

(*1)線維化:線維組織が増殖し、組織が線維成分に置き換わり硬くなってしまうこと