受賞

日本病理学会学術研究賞を受賞(病理学 分子病理部門 主任教授 大島 健司)

第70回日本病理学会秋期特別総会にて病理学 分子病理部門 主任教授 大島 健司が「日本病理学会学術研究賞」を受賞しました。この賞は、日本病理学会会員による優れており、かつ蓄積された研究に対して授与されます。

授与団体

一般社団法人 日本病理学会

研究課題

腫瘍の進行に寄与する代謝酵素の機能解明

概要

がん細胞の特異的な代謝変化の解明とそれを標的とする治療開発は、1900年代前半から行われていて、最も古くからあるがん研究分野の一つである。そして近年、メタボローム解析などの技術発達に伴い、がん細胞特有の代謝動態が数多く明らかになり、より特異的ながん代謝標的治療法が開発されつつある。そのような歴史背景の中で、我々は、ヒトがん組織における代謝酵素の発現分布の観察をもとに、がんの進行に寄与する代謝酵素の機能解明を行い、治療標的とする研究を行ってきた。具体的には、子宮体部類内膜がんにおいてアルギニン合成律速酵素Argininosuccinate synthase 1の発現低下が、mTORC1シグナル伝達経路を活性化することにより、腫瘍の浸潤を促進することを明らかにした。また、プリン体合成酵素であるAdenylosuccinate lyase が子宮体部類内膜がんの悪性度に寄与することを示した。そして、セリンのラセミ化を行うSerine racemaseがセリンからピルビン酸を産生し、大腸がんの増殖と化学療法抵抗性に寄与することを示した。さらに、大腸がんにおいてミトコンドリアはアセチル化ヒストンH3K27acを維持することを見出している。