受賞
第17回日本緩和医療薬学会年会 一般演題ポスター発表で優秀発表賞を受賞(薬学部 医療薬学科 薬理学分野 准教授 北中 純一 )
2024年5月24日~26日に開催された第17回日本緩和医療薬学会年会の一般演題 ポスター発表において、薬学部 医療薬学科 薬理学分野 准教授 北中 純一が優秀発表賞を受賞しました。
受賞した研究の詳細は下記をご覧ください。
授与団体名
日本緩和医療薬学会
受賞演題
選択的 GSK3 阻害薬による実験的モルヒネ退薬症状の緩和
論文著者名
薬学部 医療薬学科 薬物中毒治療学研究室 北中 純一 准教授
研究の概要
選択的な GSK3 酵素阻害薬を用いて、マウスにモルヒネを繰り返し投与することで発現するモルヒネ退薬症状が緩和するかを検討した。その結果、特徴的な退薬症状の一つである「首振り運動」を完全に抑制した。また、急性単回投与による、Straub の挙尾反応も同様に抑制した。このことは、GSK3酵素がモルヒネ退薬症状などの反応に深く関与していることを示唆する。
研究の背景
緩和医療におけるモルヒネ退薬症状は深刻な問題である。しかし、その原因療法は確立していない。そこで、近年の研究で様々な生理機能に深く関与していることが明らかにされている細胞内酵素 glycogen synthase kinase 3(GSK3)の阻害薬に着目し、その処置によってモルヒネによる退薬症状をはじめとする様々な反応が緩和されるかについて検討することにした。
研究手法と成果
マウスを用いた実験的モルヒネ退薬症状(過剰な上下運動=跳躍+立ち上がり運動・首振り・前肢振戦)に対して、GSK3 の選択的阻害薬ラドゥビグルシブ(別名 CHIR-99021)を前処置した場合の影響を観察し、その退薬症状緩和の有用性を検証した。その結果、(1)ラドゥビグルシブを前処置した場合、首振りが完全に消失した。(2)対照群では、ラドゥビグルシブ前処置の行動に対する影響は認められなかった。(3)陽性対照実験として、30 mg/kgモルヒネの単回投与によるマウスのStraub挙尾反応に対して、10 mg/kgラドゥビグルシブ前処置は有意に抑制した。以上のことは、モルヒネ退薬症状に対して、酵素阻害薬が有効であることを示唆する。
今後の課題
ラドゥビグルシブの使用可能な安全域は狭いため、その分子構造から構造活性相関を念頭に、より安全な新規化合物の合成を行う共同研究を模索している。また、前投与ではなく、症状発現以後の投与による抑制効果を検証する。
研究費等の出処
科研費(基盤C)(21K06591)
