受賞

第22回 日本看護科学学会学術論文賞 優秀賞を受賞(看護学部 藤本 浩一教授)

2023年12月12日に開催された第43回日本看護科学学術集会で、看護学部 精神看護学 藤本 浩一教授が「第22回日本看護科学学会学術論文賞 優秀賞」を受賞しました。

受賞した研究の詳細は下記をご覧ください。

授与団体名

日本看護科学学会

受賞演題

Associations between psychiatric home-visit nursing staff's exposure to violence and conditions of visit to community-living individuals with mental illness

論文著者名

Hirokazu Fujimoto, Chieko Greiner, Tsuyoshi Mukaihata, Takeshi Hashimoto

概要

精神科訪問看護における利用者からの暴力に関連する要因について、精神科訪問看護に従事する専門職者を対象にアンケート調査を実施しました。調査時点から過去12か月の間に、39/240名(16.3%)の専門職者が何らかの暴力に遭遇していました。暴力遭遇に関連する訪問状況として、利用者の精神科診断名など変化しにくい要因(静的要因)では、「F6群:成人の人格及び行動の障害」などが挙げられ、精神症状など変化しうる要因(動的要因)では、「敵意/怒り」などを有する利用者への訪問が有意に関連していました。

研究の背景

ヘルスケア領域の専門職者の暴力曝露は、世界的に共通する重大な問題であり、精神科領域は専門職者の暴力曝露リスクが最も高い領域の1つです。我が国は精神障害者の地域移行と地域生活支援を推進しており、精神科訪問看護は重要な役割を期待されますが、わが国の精神科訪問看護における暴力曝露に関するエビデンスは乏しい状況にあります。研究者らは、これまでに精神科訪問看護における暴力曝露の横断調査から、直近12 ヶ月間で約40%の看護師が何らかの暴力に曝露することを報告しましたが、暴力に関連する要因のエビデンスはまだ十分ではなく、その検討が喫緊の課題でした。

研究手法と成果

全国訪問看護事業協会事業所リストの訪問看護事業所5,865箇所(2018年10月時点)から、層化抽出した1200箇所にアンケート調査を依頼しました。108箇所から承諾を得て、精神科訪問看護に従事する専門職者567名に郵送調査を実施しました。調査票では、「調査時点から過去12 か月間に、利用者からの暴力に遭遇した経験はあったか?」を問い、併せて「調査時点から過去12 か月間に、あるリスク要因(例:暴力行為の既往、計23項目)を有する利用者への訪問を実施したか?」を問い、2つの回答間に統計学的関連を検討する構成としました。246名の回答を解析したところ、40名(16.3%)が過去12か月間に暴力に遭遇していました。精神科診断など、変化しにくいリスク要因(静的要因)では「F6 群:成人の人格及び行動の障害」「F7 群:知的障害〈精神遅滞〉」「暴力歴の既往」などを有する利用者へ訪問していたことが有意に暴力遭遇と関連しました。一方、「敵意/怒り」など、変化しうるリスク要因(動的要因)では「敵意/怒り」「不十分なセルフケア能力」「コミュニケーションスキルの低さ」「不規則な服薬」「活発な精神病性の症状」などを有する利用者へ訪問していたことが有意に暴力遭遇と関連しました。

今後の課題

今回の成果は特定の要因を有する精神障害者を危険視するものではありません。そのような要因を有する精神障害者の方々と訪問看護師の間でボタンの掛け違いのような状況が起きやすいようです。また、暴力に関連する要因の1つの側面を報告したにすぎず、より多側面の要因(例えば地域で生活される精神障害者のストレングスや暴力への発展を防ぐ各種防御要因)を含めて関連を検討していくことが必要です。そうすることで地域で生活される精神障害者と訪問看護師の双方が安全に、意味ある訪問看護の実現につながると考えています。

研究費等の出処

科研費 基盤C 課題番号:17K12453.

掲載誌