受賞

「第6回日本免疫不全・自己炎症学会総会・学術集会」で優秀賞を受賞(皮膚科学 金澤 伸雄主任教授)

2023年2月11日(土)・12日(日)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターで開催されました「第6回日本免疫不全・自己炎症学総会・学術集会」で皮膚科学の金澤伸雄主任教授が優秀賞を受賞しました。

受賞した研究の詳細は下記をご覧ください。

授与団体名

一般社団法人 日本免疫不全・自己炎症学会

受賞演題

「I型インターフェロン関連自己炎症性疾患(NNS/CANDLE、SAVI、及びAGS)を有する日本人患者を対象としたバリシチニブ52週投与時の長期有効性及び安全性」

論文著者名

金澤 伸雄(※1)、石井 泰子(※2)、多喜田 保志(※2)、西川 厚嗣(※2)、西小森 隆太(※3)
(※1)兵庫医科大学 皮膚科学、(※2)日本イーライリリー株式会社 研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部、(※3)久留米大学医学部 小児科学

概要

中條・西村症候群(NNS/CANDLE、以下NNS)、乳児発症STING関連血管炎(SAVI)、エカルディ・グティエール症候群(AGS)は、I型インターフェロン応答異常を背景に、凍瘡様皮疹や大脳基底核石灰化などの共通の症状を呈する稀少な遺伝性自己炎症性疾患である。今回、NNS 5例、SAVI 3例、AGS 1例(平均年齢26歳、女性55.6%)にJAK阻害薬バリシチニブ(Bari)最大8-12mg/日を2-4回に分割して52週間経口投与した。患者の疾患日誌の1日平均スコア、医師による疾患活動性の全般的評価(PGA)スコアのベースライン(BL)からの変化量、及びコルチコステロイド(CS)の1日投与量の変化率によって有効性を評価し、生じた有害事象によって安全性を評価した。その結果、複数の臓器症状を呈し、合併症をきたしやすい患者集団に対し、Bariは52週間の長期投与で良好なベネフィットリスクプロファイルを示し、I型インターフェロン関連自己炎症性疾患に対する治療選択となる可能性が示唆された。

研究の背景

中條・西村症候群(NNS/CANDLE、以下NNS)、乳児発症STING関連血管炎(SAVI)、エカルディ・グティエール症候群(AGS)は、I型インターフェロン応答異常を背景に、凍瘡様皮疹や大脳基底核石灰化などの共通の症状を呈する稀少な遺伝性自己炎症性疾患である。いずれも進行性で予後の悪い疾患であるが、いまだ有効な治療法がない。最近、欧米においてこれらの疾患に対するJAK阻害薬バリシチニブ(Bari)の有効性が報告されたが、本邦ではいまだ検討されていない。そこで今回、これらの疾患を有する成人及び小児の日本人患者を対象に、Bari52週投与時の長期有効性及び安全性を評価した(多施設共同非盲検第2/3相試験)。

研究手法と成果

Bari最大8-12mg/日を2-4回に分割して経口投与した。有効性は患者の疾患日誌の1日平均スコア、医師による疾患活動性の全般的評価(PGA)スコアのベースライン(BL)からの変化量、及びBL時にコルチコステロイド(CS)を全身投与していた患者でCSの1日投与量の変化率を評価した。安全性は有害事象を評価した。
NNS 5例、SAVI 3例、AGS 1例(計 9例)にBariを投与し、患者背景[平均(SD)又は%]は年齢 26.0(19.1) 歳、女性55.6% であった。疾患日誌の1日平均スコアのBLから最終評価時点(EP)の変化量[平均(SD)]は、NNS-0.18(0.64)、SAVI-0.27(0.34)、AGS0.04(-)であった。BL時点でCSを投与していた6例(NNS5例、SAVI1例)で、CSの1日投与量のBLからEPの変化率[平均(SD)]はNNS-18.4%(43.4)、SAVI-62.9%(-)であった。PGAのBLからEPの変化量[平均(SD)]は、NNS-1.6(1.85)、SAVI-1.33(1.76)、AGS-1.0(-)であった。
最も多く認められた有害事象は、BKウイルス検査陽性3例、貧血、上気道感染症、及び血中クレアチニンホスホキナーゼ増加各2例であった。重篤な有害事象として、急性冠動脈症候群及び汎血球減少症がNNSで各1例1件、気管支肺アスペルギルス症、非定型マイコバクテリア感染、頭蓋内出血がSAVI1例で各1件報告された(計3/9例5件、33.3%)。うちSAVIの1例は頭蓋内出血により死亡したが、治験薬との因果関係は否定された。
以上から、複数の臓器症状を呈し、合併症をきたしやすい患者集団に対し、Bariは52週間の長期投与で良好なベネフィットリスクプロファイルを示し、I型インターフェロン関連自己炎症性疾患に対する治療選択となる可能性が示唆された。

今後の課題

投与症例が少なく、より多くの症例での検討が望ましいが、稀少疾患であり症例数を増やすのは難しい。有効な治療法がない中で保険適応となり、実臨床の中で最適な使用法が確立されるのが待たれる。

研究費等の出処

日本イーライリリー株式会社

掲載誌

第6回日本免疫不全・自己炎症学会総会・学術集会