受賞

「第119回日本精神神経学会学術総会 精神神経学雑誌投稿奨励賞」を受賞(精神科神経科学 山田 恒講師)

2023年6月22日~6月24日、神奈川県横浜市で開催されました「第119回精神神経学会学術総会」で精神科神経科学の山田恒講師が「精神神経学雑誌投稿奨励賞」を受賞しました。

受賞した研究の詳細は下記をご覧ください。

受賞した山田恒講師

授与団体名

公益社団法人 日本精神神経学会

受賞演題

「下痢を伴う低体重の摂食障害患者における免疫学的グルテン感受性に関する予備的研究」

概要

兵庫医科大学病院精神科神経科では2019年よりグルテン専門外来を立ち上げ、グルテン不耐症やグルテン感受性の診療や研究を行ってきた。本研究では、摂食障害患者におけるグルテン感受性と臨床背景等の調査を行った。

研究の背景

グルテン感受性とは、グルテン摂取により腹痛、下痢、頭痛、倦怠感、易疲労感、不安、抑うつなどのさまざまな身体・精神症状を特徴とする症候群である。抗グリアジンIgG抗体がバイオマーカーとしての可能性を示されてきたが、診断基準は確立しておらず、実態は不明な点が多い。近年では、さまざまな精神疾患との関連が報告されている。
摂食障害は治療に難渋することが多い精神疾患であり、特に低体重からの回復には困難が多い。低体重になると消化管活動の低下により便秘を起こしやすくなるが、下剤乱用などを行っていないのに下痢を訴える患者が存在する。そのような患者の免疫学的グルテン感受性について検討するため、今回予備的調査を行った。なお、本研究ではグルテン摂取による身体反応が客観的に示されている者として、抗グリアジンIgG抗体陽性を免疫学的グルテン感受性としている。

研究手法と成果

【研究手法】
兵庫医科大学病院に通院/入院中の摂食障害患者18名と、年齢と性別をマッチさせた健常対照群43名を対象とした。血中の抗グリアジンIgG抗体を測定し、陽性の者を免疫学的グルテン感受性と判断した。精神・身体症状、QOLなどを評価し、背景因子の比較を行った。

【結果】
低体重の摂食障害患者においては、下痢があると、免疫学的グルテン感受性が85.7%と非常に高く、ロジスティック回帰分析の結果からも、下痢と免疫学的グルテン感受性の関連が示唆された。病態生理を考えると低栄養状態では便秘が起こりやすいが、下痢をしている場合には、グルテン不耐症を検討する必要があると考えられた。また、免疫学的グルテン感受性がある摂食障害患者は、健常群より有意に精神的QOLが低く、身体症状が多く、抑うつ、不安症状が強いことが示された。

今後の課題

今回の対象群は下痢がある患者が多く含まれており、これらの結果は、選択バイアスの影響の可能性があるため、今後、摂食障害の症例数を増やして解析を進めると同時に、免疫学的グルテン感受性を有する摂食障害患者に対するグルテンフリー食の治療可能性についても調査を行う。

研究費等の出処

科研費 (20K22887,21K07381,23K06859)