受賞

「第119回日本精神神経学会学術総会 精神神経学雑誌投稿奨励賞」を受賞(精神科神経科学 本山 美久仁博士研究員)

2023年6月22日~6月24日、神奈川県横浜市で開催されました「第119回精神神経学会学術総会」で精神科神経科学の本山美久仁博士研究員が「精神神経学雑誌投稿奨励賞」を受賞しました。

受賞した研究の詳細は下記をご覧ください。

受賞した本山美久仁博士研究員

授与団体名

公益社団法人 日本精神神経学会

受賞演題

「うつ病患者における免疫学的グルテン感受性と精神・身体症状の関連性」

概要

兵庫医科大学病院精神科神経科では2019年よりグルテン専門外来を立ち上げ、グルテン不耐症やグルテン感受性の診療や研究を行ってきた。本研究では、うつ病患者におけるグルテン感受性と臨床背景等の調査を行った。

研究の背景

グルテン感受性とは、グルテン摂取により腹痛、下痢、頭痛、倦怠感、易疲労感、不安、抑うつなどのさまざまな身体・精神症状を特徴とする症候群である。抗グリアジンIgG抗体がバイオマーカーとしての可能性を示されてきたが、診断基準は確立しておらず、実態は不明な点が多い。近年では、さまざまな精神疾患との関連が報告されている。
グルテン感受性のある高齢者はうつ病を有する割合が高いという報告や、グルテン感受性群へのグルテン摂取で抑うつ症状が増悪したという報告があるが、うつ病患者のグルテン感受性について調査された研究はほとんどない。今回、うつ病患者における免疫学的グルテン感受性と精神・身体症状についての調査を行った。なお、本研究ではグルテン摂取による身体反応が客観的に示されている者として、抗グリアジンIgG抗体陽性を免疫学的グルテン感受性としている。

研究手法と成果

【研究手法】
兵庫医科大学病院に通院・入院中のうつ病患者24名と、年齢と性別をマッチさせた健常対照群61名を対象とした。血中の抗グリアジンIgG抗体を測定し、陽性の者を免疫学的グルテン感受性と判断した。精神・身体症状、重症度、治療抵抗性、QOLなどを評価し、背景因子の比較を行った。

【結果】
うつ病群は健常対照群に比して免疫学的グルテン感受性の割合が有意に高かった(37.5%/9.8%)。うつ病群における免疫学的グルテン感受性群は非免疫学的グルテン感受性群に比べ、重症度が高く、仕事や家事に関する社会的QOLが低かった。免疫学的グルテン感受性のあるうつ病患者は、より普段の生活に支障をきたしていることが示されたが、治療抵抗性の割合や抑うつ症状、不安症状、身体症状のスケールに差は認めず、免疫学的グルテン感受性はうつ症状への影響より、うつ病の発症に関連している可能性が示唆された。また、免疫学的グルテン感受性があるうつ病患者は、健常群より有意にQOLが低く、身体症状が多く、抑うつ、不安症状が強いことが示された。

今後の課題

グルテン感受性が存在すると、グルテン摂取により腸管で微小炎症が引き起こされ、炎症性サイトカインの産生や腸内細菌叢の変化が起きると推測されており、これらがうつ病と関連している可能性も考えられ、今後炎症や腸内細菌に焦点を当てた調査も進めたい。また、うつ病患者の症例数を増やして解析を進めると同時に、免疫学的グルテン感受性を有するうつ病患者に対するグルテンフリー食の治療可能性についても調査を行う。

研究費等の出処

科研費 (20K22887,21K07381)