受賞

第31回手術手技研究会で「指定研究賞」を受賞(消化器外科学 助教 中村 達郎)

2023年5月13日、第31回手術手技研究会において、消化器外科学(上部消化管外科)の中村 達郎助教が「指定研究賞」を受賞しました。

受賞した研究の詳細は下記をご覧ください。

■授与団体■ 手術手技研究会

■受賞演題■ エキスパートに匹敵する膵臓識別能をもつAIモデルの開発

概要

胃癌手術において、膵液漏は重大な合併症であるが、その原因の一つに手術中の「膵臓の誤認」がある。膵臓には細かな隆起や脂肪化があるが、これらをAIの画像認識技術を用いて正確に着色表示することで、外科医の「膵臓の誤認」を防ぎ、膵液漏の発生を低下させることを目標としている。現段階でAIの膵臓識別能はエキスパートの外科医に匹敵するレベルになりつつあり、今後は手術の現場でリアルタイムにAIが使用されることで、手術チームの膵臓認識が向上する可能性に期待できる。

研修の背景

膵液漏は胃がん手術の重大な合併症の1つであるが、手術コンセプトや機器の進歩により、その発生率は低下してきた。しかし、膵臓の形態や脂肪化の程度には個人差があるため、手術中に術者と助手は郭清すべき脂肪と膵臓を確認しながら慎重に手術を行う必要がある。
このような背景から、兵庫医科大学とアナウト株式会社の共同グループは、手術チームごとに膵臓識別能力が大きく異なる問題を解決するために、AI技術を用いてエキスパートに匹敵する「膵臓認識アルゴリズムの開発」に取り組んでいる。

研究手法と成果

【研究手法】
ロボット支援下胃がん手術の動画から抽出した学習データ(62例、静止画1158枚)から構築した膵臓認識モデルに対して、未学習のテストデータ(9例、静止画 80枚)を用いてGround truthを作成して定量評価(IoU/Dice係数)を行った。さらにテストデータを用いて外科医(10人)による定性評価を行った。感度として「AIの推論画像がどの程度膵臓を認識しているのか」を5段階(5点:90%以上、4点:80-89%、3点:70-79%、2点:60-69%、1点:50%以下)で評価した。また「AIの推論画像と人間の作成したGround truthをどの程度見分けることができるか」についても検証を行った。

【成果】
定量評価では、作成したアルゴリズムのIoU=0.46、Dice=0.61と比較的良好な認識精度が得られた。外科医による定性評価でも感度の平均値は4.18と比較的高い値を得ることができた。AIの推論画像を見分けることができたのは62%であり、約40%の画像で人間のアノテーションを誤ってAIの推論画像と判断した。

今後の課題

今後は出血時や脂肪化した膵臓に対するAIの認識精度を高めるとともに、リアルタイムにAIが使用できるようになった場合の「手術時間が短縮できるか」と「膵液漏の発生を低下させることができるか」について検証する必要がある。

研究費等の出処

科研費 基盤研究B 「コンピュータビジョンを用いた外科医の意思決定支援システムの実用化に向けた開発研究」

掲載誌