受賞

研究医コース医学部生が「日本生理学会大会」で奨励賞を受賞

2022年3月16日(水)~18日(金)にかけてハイブリッド形式で開催された「第99回日本生理学会大会」にて、本学 医学部4年次の桝谷 直子さん(研究医コース)が「学生セッション」でプレゼン発表をし、奨励賞を受賞しました。

■受賞演題■ 橋におけるTRPA1の呼吸抑制作用

■授与団体■ ⼀般社団法⼈ 日本生理学会

桝谷さんは研究医コースの生理学 生体機能部門に所属し、これまで地道に研究活動を続けてきました。今回、指導教員である生理学 生体機能部門 荒田 晶子 准教授の薦めで学会に挑戦した桝谷さん。受賞の喜びや研究の楽しさについて語ってもらいました。

受賞した桝谷さんにQuestion!

Q 学会でどのような発表を行いましたか?

研究テーマである「橋におけるTRPA1の呼吸抑制作用」について発表しました。
TRPA1は脊椎動物の末梢神経において炎症性疼痛や侵害性疼痛に関わるものですが、中枢神経のTRPA1の働きについてはまだよく分かっていないのです。そこで私たちは、痛み感覚受容として重要である橋結合腕傍核に着目しました。そこに存在するTRPA1チャネルに刺激を与えると呼吸抑制作用を示したので、抑制機構を検討した結果、TRPA1による呼吸抑制はGABAによるものだということを初めて明らかにすることができました。

Q 発表までにどのような準備をしましたか?

実験をするにあたり、仔ラットから脳幹と脊髄を丸ごと取り出すという標本作成に時間を注ぎました。TRPA1チャネルを刺激するような薬剤を入れて標本から呼吸活動をモニターし、呼吸の変化を計測するのですが、標本の呼吸を計測しながら薬剤を投与する実験は、繰り返し実験を行わないと真偽が分からないので、何度も同じ作業をするのはかなり大変でした。また、荒田先生からはこれまでに何回も学会発表の機会を与えられていたため、今回の学会ではそれほど緊張せずに発表することができたと思います。

Q 学会に出席して感じたことや受賞の感想を教えてください。

初めて学会で受賞ができて本当にうれしかったです。これまで地道にコツコツで取り組んできたことが大きな学会で評価され、自信にもなりました。また、他の研究者の先生方からの質疑応答の場面では、これまでの学会発表の経験を活かして入念に準備できたことが、研究者としても人としても成長につながっていると実感できました。

Q 研究医コースの魅力や今後の目標を教えてください。

研究医コースに入ろうと思ったのは、「色々と学べて面白そう」と感じたことがきっかけでした。実際に勉強してみて、「科学的な考え方」「論文作成」「プレゼンテーションスキル」など、臨床医になってとても役に立つことばかりです。研究医コースの魅力は、日々の必修科目があるなかでそれ以外の時間は研究に集中ができ、自分のペースで勉強ができることではないかと思います。「自分のペース」と言うと「自分でやらないとどんどん遅れをとるのでは?」と感じる人もいるかもしれませんが、少しでも関心があれば主体的にどんどん吸収できるところがこのコースの魅力です。今でも私は、興味のある分野に対してどんどん手を挙げて学んでいっています。現時点での将来像は具体的には決まっていませんが、循環器内科の医師になることには関心があります。

本研究のために作成した標本図(桝谷 直子さん作成)

この標本は、新生ラットの脳幹・脊髄を摘出し、広域神経回路が生きたまま保持された標本であり、外部からの刺激のない状態でも横隔神経に繋がる第4頚髄前根(C4)より自発呼吸が記録できる。
この標本にTRPA1チャネルの刺激薬(Cinnamaldehyde)を入れると呼吸が抑制された。

指導教員からのコメント

生理学 生体機能部門
准教授 荒田 晶子

桝谷直子さんは、自分の研究テーマについて自ら進んで考え、その研究に関連ある論文も積極的に読んでいました。今回の学会では、他大学の先生方からの難しい質問に対してもしっかりと答えられていたことが大きな評価につながったと思います。今後は臨床医学と基礎医学をつなぐ役割も担ってもらえたらと思います。