受賞

「第10回 日本アレルギー学会学術大会賞」を受賞しました (先端医学研究所 福岡 あゆみ)

「第10回 日本アレルギー学会学術大会賞」を先端医学研究所 アレルギー疾患研究部門 福岡 あゆみ ポストドクター が受賞しました。

授与団体名

日本アレルギー学会

概要

我々は、アポトーシス誘導に重要なデスレセプターの1つであるFasの遺伝子欠損マウスが、アレルギー性眼瞼炎を発症することを見いだしました。そして詳細な解析の結果、B細胞からのIgE抗体の産生を強く促進する能力を有し、アレルギー反応に関与する新しい細胞集団(Fas-expressing natural helper, F-NH細胞)を発見しました。この研究成果が平成25年11月に開催された日本アレルギー学会学術大会において高く評価され、第10回日本アレルギー学会学術大会賞を受賞しました。また、本研究は、International Immunology誌に掲載されました。

研究の背景

花粉症や食物アレルギーを代表とするIgE抗体依存性のアレルギー疾患(I型アレルギー)の罹患者数は年々増加しており、大きな社会問題となっています。しかし、アレルギー発症メカニズムの解明やその根本的な治療法の開発は医学界において未だ大きな課題のひとつです。長年、I型アレルギーの発症には、ヘルパーT細胞の1つであるTh2細胞が重要であると考えられてきました。しかし最近、2型自然リンパ球 (innate lymphoid type 2: ILC2) を代表とするTh2細胞以外のアレルギー関連細胞が同定・解析され、これらがアレルギー疾患において重要な役割を担っていることが明らかになってきました。それゆえ、未だ同定されていないアレルギー関連細胞が存在する可能性があり、新規細胞の同定はアレルギー疾患の発症メカニズムの解明に重要な課題であると考えられています。我々は、アポトーシスの誘導に働くレセプターである「Fas」の欠損マウス(BALB/c Fas KO)がIgE依存性のアレルギー疾患を発症することを発見しました。そして、BALB/c Fas KOがアレルギー疾患を発症するメカニズムの解明を目的とし、BALB/c Fas KOにおいてIgE抗体の産生促進に働く細胞の同定を行いました。

今後の課題

本研究でF-NH細胞はB細胞に直接作用する働きを持つことが示され、F-NH細胞の除去やB細胞への作用をブロックすることで、IgE抗体の産生を抑制できる可能性が示唆されました。今後、F-NH細胞がどのようなメカニズムでB細胞に作用し、IgE抗体の産生を促進するかを明らかにすることで、新しいアレルギー治療の開発に繋がることが期待されます。

掲載誌

International Immunology, 2013 Jun;25(6):373-82