研究業績

アトピー性角結膜炎:発症の仕組みを解明(眼科学 助教 細谷 友雅・皮膚科学 講師 今井 康友)

Scientific Reports誌に眼科学 細谷 友雅 助教 ・ 皮膚科学 今井 康友 講師らの論文が掲載されました。

論題

Expression of IL-33 in ocular surface epithelium induces atopic keratoconjunctivitis with activation of group 2 innate lymphoid cells in mice

概要

眼科学 細谷 友雅 助教ら、皮膚科学 今井 康友 講師らは、結膜・角膜上皮のインターロイキン33(IL-33)が過剰な状態になると眼に常在する2型自然リンパ球が活性化され、アトピー性角結膜炎が発症することを遺伝子改変マウスを用いて証明しました。本研究によってアトピー性角結膜炎の病態の一端が解明され、新しい治療法の開発に大きな貢献が期待されます。なお、この研究は、本学免疫学(善本知広主任教授)、京都府立医科大学感覚器未来医療学(中村隆宏准教授)との共同研究で、2017年8月30日英科学誌サイエンティフィック・リポーツの電子版に掲載されました。

研究の背景

アトピー性角結膜炎は、顔面のアトピー性皮膚炎に合併して生じ、角結膜への好酸球浸潤を伴って角膜障害や視力障害を生じる重篤な難治性の疾患です。アトピー性角結膜炎の患者さんの結膜の病変ではIL-33が強く発現していることは分かっていましたが、アトピー性角結膜炎の発症機序は全く不明のままでした。

研究手法と成果

究グループでは、皮膚でIL-33を多く発現しアトピー性皮膚炎を自然発症する遺伝子改変マウスを作成して観察を続けていたところ、8〜10週齢頃から結膜炎が発症し、20週齢以降には角膜潰瘍を伴った重篤な角膜炎が生じることに気づきました。病変部では結膜・角膜上皮の肥厚、肥満細胞、好酸球・好塩基球などの炎症細胞の浸潤、涙液中にはIL-5、IL-13、IL-33等の炎症性サイトカインの増加がみられ、免疫学的特徴がヒトのアトピー性角結膜炎に極めて類似していました。また、正常マウスの眼組織にIL-33に反応する2型自然リンパ球が常在していることを発見し、この遺伝子改変マウスの角結膜では2型自然リンパ球が増加すること、そして、この細胞がIL-5とIL-13を産生することをつきとめました。以上より、アトピー性角結膜炎の病態として、さまざまな刺激で眼上皮から遊離されるIL-33が角結膜に常在する2型自然リンパ球を活性化し、IL-5、IL-13などの炎症性サイトカインが産生される結果、アトピー性角結膜炎が発症するというメカニズムを世界に先駆けて提唱しました。

今後の課題

本研究により、アトピー性角結膜炎の病態の一端が明らかになりました。今後、病態モデルを用いた研究が可能になることから、本症を対象とする点眼薬等の創薬への応用が期待されます。また、アトピー性角結膜炎の治療標的としてIL-33と2型自然リンパ球の重要性が明らかになりました。今後、IL-33の産生と細胞外への遊離・活性化機構、2型自然リンパ球の誘導・制御機構の研究を通じ、アトピー性角結膜炎の克服に向けた新しい研究の進展が望まれます。

研究費等の出処

科学研究費補助金 (15K09796)
日本私立学校振興・共済事業団 平成29年度学術研究振興資金
GSK Japan Research Grant 2015
かなえ医薬振興財団、真鍋奨学助成金 など

掲載誌