研究業績

テデュグルチドは「クローン病合併短腸症候群において早期の有効性を示す可能性があること」を明らかに

兵庫医科大学(所在地:兵庫県西宮市、学長:鈴木 敬一郎) 消化器内科学 主任教授 新﨑信一郎らの研究グループは、テデュグルチドは「クローン病合併短腸症候群において早期の有効性を示す可能性があること」を明らかにしました。

論題

Short-term clinical evaluation of teduglutide for patients with Crohn’s disease on home parenteral support for postoperative short bowel syndrome with intestinal failure

論文著者名

佐藤 寿行 , 内野 基 , 武内 治郎 , 藤平 雄太郎 , 志水 和麻 , 横山 惠子 , 八木 聡一 , 賀来 宏司 , 高嶋 祐介 , 池ノ内 真衣子 , 小島 健太郎 , 河合 健太郎 , 長瀬 和子 , 上小鶴 孝二 , 横山 陽子 , 高川 哲也 , 池内 浩基 , 渡辺 憲治 , 新﨑 信一郎

研究概要

本研究は、クローン病に合併した「短腸症候群に対するテデュグルチドの短期間における有効性を示す可能性」を初めて詳細に報告した研究内容になります。
我々の研究グループは、テデュグルチドの臨床試験でしめされた8週時点での有効性を確認するとともに、4週時点での有効性も示し、結腸連続性の有さないことが要因の1つとして挙げられることを示唆しました。

研究の背景

短腸症候群では、食事や水分摂取が十分にできないため、生涯にわたり在宅での点滴による栄養摂取が必須となります。在宅での点滴投与は著しいQOLの低下を招くだけでなく、カテーテル感染症などの致死的な合併症を起こすこともあります。

GLP-2のアナログ製剤であるテデュグルチドは、腸管絨毛の発育促進作用などにより、食事や水分摂取を改善し、欧米や本邦の臨床試験において在宅での点滴量の減量あるいは離脱を可能にしました。2021年に本邦でも保険承認を得られましたが、短腸症候群がまれな疾患であるため、臨床試験のデータでは原因疾患としてクローン病以外のさまざまな疾患が含まれており、クローン病単独における短期成績の報告はこれまでにありませんでした。また、理論上では結腸連続性を有さない症例において早期の有効性が期待されることがわかっていましたが、クローン病単独ではいつの時点で効果が現れるかは不明でした。

研究手法と成果

2020年から2021年にかけて、テデュグルチドが投与されたクローン合併短腸症候群を対象に、「後ろ向きコホート研究」を行いました。主要アウトカムは8週時点での点滴の減量とし、副次アウトカムを結腸連続性の有無による点滴の減量としました。

その結果、テデュグルチド投与から8週時点で有意な点滴量の減量を達成していました。また、結腸連続性を有する症例では8週だけでなく、4週時点においても有意な点滴量の減量が確認され、臨床試験で示されたデータよりも早期の点滴量の減量が可能となっていました。

今後の課題

クローン病合併短腸症候群において、テデュグルチドは早期の有効性を示しました。しかし、長期成績のデータは乏しく、なぜクローン病で早期の有効性が確認できたのかもわかっていません。今回の研究は希少疾患であるとはいえ、サンプル数の少ない単施設の研究であったことはlimitationであり、テデュグルチドは費用対効果に課題を残している薬剤であるため、今後は多施設共同研究などによりサンプル数を増やし、効果予測因子や長期予後について明らかにし、薬剤導入に最適な症例を明らかにしていきたいと考えています。

掲載誌

https://www.clinicalnutritionjournal.com/article/S0261-5614(23)00092-4/fulltext