研究業績

超原子価ヨウ素試薬の新しい反応性の解明に関する論文が米国化学会誌「Organic Letters」に掲載

アメリカ化学会の学術誌「Organic Letters」(November 28, 2022)において、医学部 化学講座の江嵜啓祥講師、福島和明教授と、岐阜薬科大学合成薬品製造学研究室の清水彩加、柴田篤、加納天、熊井雄一、川上諒平、多田教浩講師、伊藤彰近教授との共同研究が公開されました(DOI:10.1021/acs.orglett.2c03648)。
本研究により、高い反応性を持つエチニル超原子価ヨウ素反応剤を用いて、様々なペプチド誘導体を含むジアミド類を4-イミダゾリジノンに誘導化することが可能となりました。

論題

Synthesis of 4-Imidazolidinones from Diamides and Ethynyl Benziodoxolones via Double Michael-Type Addition: Ethynyl Benziodoxolones as Electrophilic Ynol Synthons

論文著者名

Ayaka Shimizu, Atsushi Shibata, Takashi Kano, Yuuichi Kumai, Ryouhei Kawakami, Hiroyoshi Esaki*, Kazuaki Fukushima, Norihiro Tada* and Akichika Itoh*

研究概要

超原子価ヨウ素試薬の新しい反応性を解明 ペプチドの分子変換が可能に

研究の背景

4-イミダゾリジノン類は、医薬品や生物活性天然物を構成する重要な構造であり、有機触媒や様々な化合物の合成中間体としても利用されています。これまでにも様々な4-イミダゾリジノン類の合成法が報告されていますが、それらの多くは強酸や強塩基、高温といった反応条件や煩雑な操作を必要とするため、温和な合成法の開発が望まれています。

研究手法と成果

本研究では、高い反応性を有する超原子価ヨウ素試薬TMS-EBXを用いることにより、様々なペプチド誘導体を含むジアミドの環化反応により、4-イミダゾリジノン誘導体を効率よく合成できることを見出しました(図1)。



合成した4-イミダゾリジノンは、加水分解や薗頭反応、脱保護反応などにより、様々なペプチドアナログに誘導可能です。本反応では、2つの求核部位を持つジアミド1とEBX2から、分子間および分子内付加反応を経る一連の反応により、最終的に4-イミダゾリジノン3が得られていると推察されました。対照実験や密度汎関数法 (DFT) を用いた理論計算の結果、本反応は分子間および分子内マイケル付加型の反応で進行しており、5から8の分子内環化反応は、アニオン6を経由する5-exo-trig 環化機構で進行している可能性が高いことを明らかにしました(図2)。



今後の課題

本反応は、温和な塩基性条件下で効率よく進行し、これまで困難であったペプチド誘導体の合成が可能となります。今後、本手法が様々な複素環の合成法として利用されることで、様々な医薬品や農薬の開発にも寄与でき、益々の発展が期待されます。

研究費等の出処

本研究成果は、岐阜薬科大学合成薬品製造学研究室の清水彩加、柴田篤、加納天、熊井雄一、川上諒平、多田教浩講師、伊藤彰近教授との共同研究による成果です。

掲載誌