研究

【2022年度】全学横断プロジェクト研究「Hyogo Innovative Challenge」事業

2022年度 研究テーマ

テーマ 代表研究者(所属、氏名)
T細胞エピトープ医療の構築 病原微生物学 主任教授
石戸 聡
移植細胞の至適化による神経・血管再生を基盤とした脳血管疾患治療研究 脳神経外科学 主任教授
吉村 紳一
環境因子による疾患の発症・増悪のメカニズム解明と予防・治療法の開発 薬理学 主任教授
北岡 志保

研究テーマ:「T細胞エピトープ医療の構築」

-病原微生物学 石戸 聡 教授

 T細胞は免疫応答の要であり我々の健康維持において重要な役割を担っています。T細胞による応答は抗原特異的であり精密に調節されていますが、その調節異常が疾患発症の原因となっています。そこで我々は、疾患予防あるいは、発症に関わると考えられるT細胞を解析することによって、T細胞が認識する抗原およびエピトープを見出し、その情報を人為的T細胞の制御、細胞性免疫のモニタリングへ応用することを目指しています。

研究テーマ:「移植細胞の至適化による神経・血管再生を基盤とした脳血管疾患治療研究」

脳神経外科学 吉村 紳一 教授

 脳血管疾患に対する新たな治療として、細胞移植による神経・血管再生療法の臨床応用が期待されています。我々はこれまでに、脳梗塞病態時に特異的に傷害誘導性幹細胞(injury-induced multipotent stem cells; iSC)が誘導されること(神経再生研究部門)、臍帯血を特定のfeeder細胞と培養することで血管再生を強力に誘導する臍帯血由来血管新生誘導細胞(angiogenesis-inducing cells; AiC)となること(分子細胞治療部門)を見出し、いずれも脳梗塞モデルマウスへの移植による治療効果を報告しています。
 本研究ではこれらの成果をもとに、移植細胞の至適化による神経・血管再生を基盤とした、兵庫医科大学発の脳血管疾患に対するオリジナル新規神経・血管再生療法の確立を目指していきます。

研究テーマ:「環境因子による疾患の発症・増悪のメカニズム解明と予防・治療法の開発」

薬理学 北岡 志保 教授

 医学の進歩に伴い、私たちの寿命は延長しました。その結果、現代社会を生きる私たちはさまざまなストレスにさらされています。さらに最近では、コロナウイルスの流行により、ストレスを感じる人が増えています。
 適度なストレスは生体システムを活性化し、我々の身体はストレスに対処することができます。一方、災害や事故など非常に強いストレスを受けたり、長期間ストレスにさらされると、我々の身体はストレスに対処することができず、病気にかかりやすくなったり、症状が悪くなったりします。このように、ストレスには「良いストレス」と「悪いストレス」があります。我々のグループでは「悪いストレス」がどのように病気を発症・増悪させるかを明らかにすることを目指します。
 また、悪いストレスはミクログリアを起点とした脳内炎症を介して、情動変容を誘導することを見出しています。悪いストレスがどのように脳内炎症を惹起するかはわかっておらず、悪いストレスが全身に及ぼす影響を詳細に調べ、明らかにすることを目指します。
 最終的には、「悪いストレス」による疾患の発症や予防法の開発に繋げたいと考えています。