国際・国内交流
中村 雛子さん
シアトルでの生活を終えて
2025年3月31日から4月25日まで、アメリカ・ワシントン州にあるワシントン大学にて臨床実習をさせていただきました。コロナ禍明け、数年ぶりにワシントン大学への留学の機会をいただいたことを大変光栄に思います。本実習の実現にご尽力いただいた先生方、現地でお世話になった多くの方々に、心から感謝を申し上げます。
3月29日、1人での出発に不安を抱きながらもワクワクとした気持ちで成田空港を出発し、約9時間のフライトを経て、シアトル・タコマ空港に到着しました。大きなスーツケースを抱えて、1か月お世話になったホームステイ先のお家へと電車に乗って向かいました。電車からの景色が日本とは違い、いよいよ留学にきたのだなと実感しました。
University of Washington駅で下車して、地図をみながら歩いているとMontlake bridgeの方から、ホストファミリーが迎えにきてくださっていました。1か月間Dr. Susan とDr, David 夫妻にお世話になり、病院から徒歩5分ほどの、運河がみえる素晴らしいご自宅に滞在させていただきました。食事や観光をともにし、文化的なこともたくさん教えていただきました。
病院実習では4週間、放射線科を回りました。最初の2週間はMontlakeにあるUWMCで胸部を、後半の2週間はHarborviewにあるHMCで腹部と神経の実習をさせていただき、主にFellowの先生方について読影、症例検討を行いました。最初の数日は、慣れない医学英語を理解することが大変でした。日本語の病名は思い浮かんでいるのに、英語での発音が分からない、先生に解剖をきかれても答えられず、自分の知識不足を痛感しました。帰宅後も胸部の解剖を勉強や、疾患の復習をしていたことをよく覚えています。病院での実習は、毎日午前中に終了することが多く、午後はzoomでの講義やカンファレンス参加、課題に時間をあてていました。Zoom講義では放射線科の先生方がそれぞれのテーマに合わせて画像の読み方を丁寧に教えてくださり、学生が積極的質問をしたり、先生の質問に多くの生徒が答えたりする様子が印象的でした。また、課題の多さにも驚きました。日本の臨床実習ではスライド発表以外の課題は少ないですが、ワシントン大学では、プレゼンテーションに加え、レポート、オンデマンド講義とクイズがありました。それらをこなすことは大変でしたが、課題があることによって、より医学も英語も学ぶことができたと感じています。
UWMCは珍しい症例が多くありました。特に臓器移植症例が多かったことが印象的で、肺移植後や心臓移植後の症例をたくさん見ることができました。放射線科ではただ画像を見ているだけでなく、移植後に注意すべき合併症を時期ごとに考え、予測しながら読影していたことが大変興味深かったです。循環器の分野では、MRIを用いた流速測定や、弁口計測など、見たことのない検査を見学することができました。
後半の2週間を過ごしたHMCには大きな外傷センターがあり、多くの外傷症例をみせていただきました。交通外傷や銃撃事件など学内実習ではみることができなかった症例が多かったです。ナースプラクティショナーの方ともお話する機会があり、実際に働いている姿を見学することができました。どの病院でも先生が親切にしてくださり、症例だけでなく、アメリカの医療制度や医師のキャリアについて教えてくださいました。
4週目には学生によるプレゼンテーションがあり、私も発表を行いました。テーマは自由で放射線科に関することを自分で決めて発表しました。他学生は4年生が多く、6月から医師として働く予定の進路が決まっている方々ばかりだったので、どの学生の発表も専門的で、興味深く、とても楽しい時間となりました。プレゼンテーションの作成が大変で、当日も緊張しましたが、ホストファミリーにアドバイスをもらいながら準備を進めたので、自信をもって発表を行うことができました。
日常生活も大変充実した日々を送っていました。ホストファミリーが大変親切にしてくださり、毎日夜ご飯を一緒にいただきました。ご飯もアメリカの伝統的な家庭料理から、地元の美味しいテイクアウト、時には外食にも連れて行ってもらいました。どれもおいしく、毎日の夜ご飯がとても楽しみでした。デザートには、フルーツや手作りスイーツをいただいてとても素敵な時間を過ごしました。シアトルは自然が美しく、観光地も多いため週末は観光などに連れて行っていただきました。他にも文化的な体験としてバレエやシンフォニー、アイリッシュダンスを見に行きました。また、イースターも一緒に楽しみ、現地でしかできない経験をたくさんすることができました。本当に楽しかったです。
今回の留学では医学的な学びだけでなく、異文化理解や人とのつながりの大切さについても多くのことを学びました。初対面であるにもかかわらず、現地の多くの方々が温かく迎えてくださり、さまざまなことを教えてくださいました。私も他者を理解し温かく迎えられる、心が豊かな人物でありたいと強く感じました。
最後になりましたが、本実習の実現にご尽力くださった国際交流センターの方々、古瀬先生、一か月間お世話になったDr. David and Dr. Susan、ワシントン大学の放射線科の先生、 King先生、渡航前にアドバイスをいただいた原先生、熊本先生、関わってくださったすべての方々に感謝を申し上げます。ありがとうございました。