清水 健太郎さん(第5学年次)

夏季シアトル留学を終えて

今回私は2018年8月4日〜11日の1週間をアメリカのシアトルにあるワシントン大学の先生達による生命倫理を主とした研修を受けさせて頂きました。日本とは制度や考え方の違う医療に触れられる大変貴重な機会となりました。私自身英語はまったく得意ではなかったものの、通訳がいるからと臆せず参加して本当に良かったですし、人生において何ものにも変えることのできない体験になりました。参加した立場からのアドバイスになりますが、このチャンスを後輩達には活かして欲しいと切に願います。講義についての話ですが、平日は大体3〜4コマの授業があり腎臓・透析センターや小児病院といった施設見学も盛り込まれています。ここでは自分が印象に残っている講義についていくつかをクローズアップして述べていきたいと思います。まずDr.McCormick先生が最初に授業してくださった”The Four Box Method”の考え方が印象に強く残りました。この4 Box Methodの考え方は生命倫理の基盤となる重要な考え方で、医療関係者の治療介入と患者の希望、QOL、患者の周辺環境の4つから構成されます。日本でも同じように重要視されている内容で個々に考えることはあっても、全てが同等に大切でそれを書き出していくという点は大きく違うなと感じました。この考え方は日本でも実践できると思い、学ぶ事ができて良かったです。2つ目に印象に強く残った内容はCHAPLAINSです。これは日本にはない職業といっても過言では無いと思います。初めにCHAPLAINSの役割は緩和ケアを必要としている患者さんに精神的なサポートをする事です。一見日本でいうカウンセラーと相違ないのでは無いかと思ったのですが、人種のるつぼと言われるアメリカにおいては宗教的な価値観や人種による価値観など様々な考え方があり、これを全て統括して話を聞いて精神的に寄り添い、患者さん自身に病気を乗り越える勇気を持たせるという話を聞いて全く違うものだと思いました。またCHAPLAINSになるために宗教団体からの支援や神学科の卒業、医療的教育の受講、毎年講義を受けるなど(ここに書いたのはごく一部)のかなり厳しい条件が課されており、アメリカ国内でどれだけ重要視されているかわかりました。日本では医者が患者さんの心のケアも任されているが、やはりその専門ではないという点でうまくいかない時も多いのではないかと思いました。講義の最後にKing先生がこのCHAPLAINSという職業は日本でも必要かという質問に深く考えさせられました。それは心のケアという観点では必要だと思うし、現時点の日本では満足に精神的なサポートが行われているとは言えない現状があると思います。しかし日本人は自分の弱さや考えている事を話す事を嫌う傾向にあり、果たして上手に機能するのだろうか、とも思いました。この講義を受けて患者さん自身の価値観や考え方がいかに大事かという事に気付くことができましたし、日本ではどうすれば心のケアを上手にできるのか、またどのような仕組みがあれば良いのかを考えさせられる良い機会になりました。3つ目は小児ホスピスでの講義が心に響きました。この講義では実際の患者さんの話を例に出して説明してくれました。子供と大人のホスピスは同じ人ではあるものの全くの別物だと感じました。それは、子供には治療段階で良くなったり悪くなったりを繰り返し、その都度患者自身が何をしたいかが変わってくるということでした。更には親と密接な関係にもあり、両親とも話し合い、理解し合わなければいけないという点です。よって、小児ホスピス医は子供だけでなく両親をもケアしなければなりません。最後に先生が「よくこの仕事をしていて辛くないのか?と聞かれる。答えは、辛い。しかし必要としている人がいるから私は続ける」という言葉には感銘を受けました。この講義を受けて日本のホスピス制度に興味を持ち、何か自分自身できることはないかと、これからの医者人生をかけて見つけていきたいと思いました。上記の内容は特に印象に残った講義について述べたのですが、ほかの講義も大変身になるお話でよく考えさせられる内容ばかりでした。英語力をもっとブラッシュアップさせて幅広い見識を備え、日本の医療に貢献したいと強く思いました。また同時に日本の医療の優れているところを海外に向けて発信し、ワールドワイドに働きたいと考えられるようになりました。講義以外の時間は毎晩美味しいレストランに行き、ある日はクルージング貸切で湖一周などもありました。休日はスターバックス1号店や、マーケットなどにも連れて行っていただきました。全てがかけがえのない思い出で一緒に行ったメンバーにも感謝したいです。 最後になりましたが、今回の研修でシアトル現地でお世話になったMcCormick 先生、King先生を始め講義をしてくださった先生方、通訳のTuridさんに感謝申し上げます。 またこのような貴重な機会を設けてくださった山西先生、現地での引率をしていただいた関先生、中野先生、富田先生、蒲生先生、7日間コーディネートしてくださった枚方療育園の金澤さん、梶原さんに心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。