川本 聡さん(第5学年次)

ワシントン大学研修 報告書

この度、私はワシントン大学医学部生命倫理プログラムに参加させていただいたので報告します。この研修プログラムでは4日間にかけてワシントン大学をはじめ、さまざまな関連施設で行われる研修に参加させていただきました。その中でも特に心に残ったことを報告します。

まずはDr. McCormickによる4box methodについての講義でした。この考え方はこの4日間のあらゆる講義のもととなる考え方で、それぞれの症例について1. medical indication(医学的適用)2. patient preference(患者の意向)3. quolity of life(生命の質)4. contextual features(患者背景)に分けてそれぞれの枠組みごとに問題を整理していき、医療的問題を体系的に整理していく考え方です。医療倫理に関する問題は法律のようにルールがあるわけではないので考えにくく、ときに衝突を生んでしまうけれども、この考え方に則るとすべての臨床上問題となってくることは体系的に処理が可能で、またあらゆる症例に応用が可能だと思うので、複雑な背景で考えることが難しい症例でも当てはめることが可能であり、倫理的選択のプロセスのひとつとなる非常に重要な考え方だと思いました。余談ですが、僕が外病院を病院見学で訪れた時にそこの雑誌の企画の対談テーマのひとつにこの医療倫理の4 box methodsについてのものがあり、改めてすごい講義を直接受けることができたのだと感動しました。また、Dr.Kingによるチャプレンについての講義も非常に興味深かったです。Dr.Kingは実際にワシントン大学の系列病院で働かれているチャプレンの方です。チャプレンというのは日本に住んでいるとあまり聞きなじみのないものかもしれませんが、病院や施設で働く聖職者のことです。日本では少し理解するのが難しいスピリチュアルな面から患者をケアしていく職業です。日本ではアメリカほど宗教による力が強くないので、まだ普及していないのだと思われますが、今後日本が超高齢化社会を迎え、終末期ケアの必要性がさらに叫ばれる中、人生の終わりを満足いくものにするためにはチャプレンのような病院での患者の苦痛を全人的に取り除いていく職業が必要になってくることも十分に考えられます。事実として、チャプレンはアメリカ国民の84%が必要な職業であると答えています。私も高齢化の進む日本でよりよい終末期ケアを考えていく中でチャプレンによる話を聞くことができたのは非常に良い機会となりました。また、日本で医師となる私たちもチャプレンがどのようなことに心がけて患者の苦痛を取り除こうとしているのか、どうすれば患者の苦しみを和らげることができるのか、というケアについて学ぶ必要があると感じました。また、ほかの方も書いているかもしれませんが、King先生が開いてくださったホームパーティはとても楽しかったです!!King先生、そのご家族、本当にありがとうございました。施設見学ではすべてが新鮮で刺激的でした。とくにNortheast Kidney Centerの見学について記したいと思います。Northwest Kidney Centerは1962年に設立された世界で初めての慢性腎不全に対して人工透析が行われた施設であり、現在でも人工透析に対して世界のトップランナーであるセンターです。こちらではワシントン大学のDr.Scribnerがシャント手術を開発し、最初の人工透析に至るまでの様々な装置を拝見したり、人工透析の歴史や現在行われている人工透析の最新技術を見たり、人工透析が始まった当初、どの患者に人工透析を受けさせるかという倫理的問題が存在したという話を聞くことができたりと様々な範囲のお話をこの施設のPresidentであるJoyce Jackson先生から伺うことができました。人工透析を必要とする患者は人工透析なしでは生存が不可能です。しかし人工透析、特に日本で主流である血液透析は一般的に週に3回通院し、1回4時間程度の透析治療を受けなければ生きることができません。そういった状況を改善するために、持ち運び可能な人工透析の機械の開発や、腹膜透析の代用など透析に関して座学だけでは学ぶことのできないことを実際に自分の目を通して学ぶことができました。私はこれまで正直なところ腎臓、特に人工透析に関して座学のみでは理解することが難しく感じられて、覚えることも多く、面白いと思ったことはなかったのですが、この施設から得られるものすべて私にとって非常に刺激的であり、腎臓に関して、特に人工透析に対してとても興味を持つようになりました。フェアウェルパーティでは授業をしてくださった先生方やワシントン大学で活躍する日本人の先生にもお話を伺うことができました。こちらでも各方面で活躍されている先生方と自分の言葉を通して会話することで様々な刺激をいただくことができました。もしこれを読んで、今後このプログラムに参加予定の人がいれば、ぜひこの機会で勇気をもって数多くの先生に話しかけてみてください!!各先生方非常に優しく接してくださり、とても面白い話を沢山してくださいました。この場は今思い返しても本当に貴重な場であったし、自分の口を通すからこそ得られるものがたくさんありました。その内容はここでは割愛させていただきますが、この場は特に、積極的にチャレンジすることが大事だと思いました。授業のない時間には、シアトルの医療施設以外の見学も行いました。シアトルはAmazon、Microsoft、Costcoなど世界的にも有名な大企業の本社が数多くあり、大都市でした。そのような点でも日本では得られないような刺激を受けることができました。また、コーヒーの町でもあるシアトルは、スターバックスやタリーズコーヒー、シアトルコーヒーなど日本にも多くあるコーヒー店の1号店もあり日本にも浸透している文化を生み出している町でもあり、街を歩いて回るだけでも非常に面白かったです。日本のコンビニ感覚でスターバックスがあり、コーヒー大好き文化を肌で感じることができました。また、何度か並びましたが、念願であったスターバックス1号店にも行くこともできました。今回の1週間は自分の医学部生活の中でも間違いなく、もっとも濃厚な1週間となりました。この研修を企画してくださった山西先生や関先生、蒲生先生をはじめ枚方療育園の方々や引率に携わってくださった先生方、ワシントン大学でレクチャーを開いてくださった先生方、この留学に関わっていただいたすべての方へ、本当にありがとうございました。