平山 沙季さん(第5学年次)

ワシントン大学研修を終えて

8月3日から10日にかけて5年生10名でアメリカのシアトルに行きました。そこで、King先生やMcCormick先生をはじめとする先生方の貴重な講義を受けることができました。
まず、今回のワシントン大学の研修に行こうと思った理由についてですが、私は兵庫医科大学に入学した時から、在学中に海外に行って勉強したいと漠然と考えていました。時間的に余裕のある学生の間に海外へ行って見聞を広めるべきだと考えていました。ですが実際の学生生活はなかなか時間が確保しづらく、意識しなければいくらでも時間は過ぎていきました。そんな折に知ったこの研修はまさに私にとって渡りに船でした。素晴らしい機会に巡り合えた奇跡に感謝しています。

シアトルでの日々は毎日が勉強であり、特別な日でした。ワシントン大学だけでなく、Seattle Children’s Hospital, Seattle Cancer Care Alliance, Providence Hospice of Seattle, Northwest Kidney Center、Harborview Medical Center でも施設見学させていただき、どの施設で大変貴重な講義を受けさせていただきました。そのなかでも特に印象に残っているものを紹介します。

Green先生の尊厳死についての講義でした。ワシントン州はオレゴン州に次いで2019年現在尊厳死が認められている州です。ワシントン州でのバルビタール(致死薬)の処方は年々増えているそうです。この事実をみるだけで尊厳死の必要性がわかるかと思います。対象年齢は18歳以上、ワシントン州在住で余命が6か月未満であることが条件になります。患者さんは3回にわたって依頼します。2回目、3回目は文書での同意である必要があります。そして、1人目の医師が同意したら、その医師は別の2人目の医者に余命の診断を依頼します。2人目の医師も余命が6カ月以内という診断をして、2人の医師が同意したことになると、この患者さんは無事、尊厳死を受ける条件がそろいます。医師はこの判断を拒否することも可能であり、その場合は他の医師を紹介する義務があるということでした。医師はバルビタールを患者に処方して、薬を患者の近くに置く、もしくは、手に乗せることまではできますが、それを実際に飲むか飲まないかは患者の判断に委ねられるということでした。日本には尊厳死に関する規定はありませんが、あるドクターが経験した尊厳死した患者さんのお話です。末期がん患者さんで自分の家の湖の上のテラスで夕日を見ながら死にたいという患者さんでした。その患者さんはドクターを誘って一緒にテラスで夕日に照らされながらワインを飲み、最後に薬をドクターから受け取ってワインでその薬を飲んでから約30分後に亡くなりました。この患者さんを担当したドクターはこの経験のことをとても感動させられた経験だったと語ったそうです。しかし、もう一度バルビタールを処方したいかと聞くと二度としたくないと答えたそうです。実際バルビタールを一度処方した医師の多くはもう処方したくないというそうです。はじめ私はその気持ちがわからなかったのですが、確かに私たちは人を救うために医師を目指しているのであって、殺すためではありません。尊厳死がその人を救っていると思えるようには私たち残される側にはまだまだ時間が必要なようです。

最後に今回の貴重な体験の数々を提供してくださった枚方療育園の山西先生、右も左もわからない私たちを引率してくださった関先生ご夫妻、蒲生先生、私たちが安全に研修を行えるように守ってくださった近藤先生、中村先生、この研修をスムーズに運行してくださった櫻井さん、梅澤さんに感謝申し上げます。そしてシアトルでは私たちを温かく歓迎し、たくさんのすばらしい講義を提供してくださったKing先生やMcCormick先生、私たちの理解を深めてくださったTuridさん、よしこさんにも深く感謝しております。この素晴らしい研修に参加させていただき、本当にありがとうございました。