篠原 有紀子さん(第2学年次)

中国・汕頭大学留学を終えて

2017年11月11日から11月18日まで中国の汕頭大学に留学させていただきました。この留学プログラムに参加した先輩から、とても興味深く、貴重な経験ができると聞き、参加を決意しました。中国に行ったこともなかったため、不安もありましたが、日本では体験できないような体験をたくさんさせていただき、このプログラムに参加できて本当に良かったです。

1日目は関西国際空港に集まり、9時に離陸する飛行機に乗りました。汕頭に到着したのは予定より少し遅い17時でした。汕頭との時差は一時間ほどで時差ボケもありませんでした。汕頭の空港から私達が宿泊するホテルまでの移動はバスでした。中国の交通は日本ほど整っておらず、車間距離という概念がありませんでした。ホテルに着くまでぶつかるのではないかと何度もヒヤヒヤしました。ホテルには李嘉誠基金の会長の方をはじめ、これから1週間私達がお世話になる先生方がいらっしゃいました。先生方は日本にも渡航されたことがある方ばかりでしたので、日本語が堪能で、言葉の壁にぶつかるということはありませんでした。ウェルカムディナーでは私たちがいつも食べている中華料理とは全く異なった味の中華料理に皆で驚きました。ホテルの部屋はとても綺麗で、驚くほどでした。

2日目は農村地域でのボランティア活動に参加させてもらいました。汕頭大学の2年生がマイクロバスから続々と降りてくるのを見て、2年生でボランティアに興味があるとは意識が高いと思いました。看護学科の生徒さんは血圧を測定したり、子供の体重や色覚、視力について学生が主体となって検査していました。同じ2年生でしたが、もう既に患者さんと接していることに驚きました。ボランティアとして老人ホームに行くことなどはありますが、実践的内容を含めた実習にこれほど早い段階から参加ができて羨ましいと思いました。医学部の生徒さんは、ボランティアで来られている先生の横に座ってお話を聞いていました。これも日本では見たことがない光景だったので驚きました。この日一番印象に残ったことは、看護科の生徒さんの話です。彼はアメリカで医師になりたいと言っており、中国で医師になりたくない理由は、患者や患者の家族に殺される医師が少なくはないからだと答えました。日本で医師が患者や患者の家族によって殺されるなど聞いたことがなかったので、国によって医師の扱いにも差があると感じ、日本での医師のあり方を考えさせられるきっかけになりました。

3日目は汕頭大学の大学院と汕頭大学のキャンパス、腫瘍・癌センターを訪問しました。汕頭大学の大学院は兵庫医科大学の共同研のようなところでした。実習で使用したフローサイトメトリーだけでなく、数億する次世代シークエンサーが設置されており、高価な実験器具を購入できる財力に驚きました。次に行った腫瘍・癌センターではTrue Beamというこれもまた数億する治療機器がありました。このTrue Beamはアジアで最初にこちらに取り入れられたそうです。正直、北京などの大都市ではなく、汕頭にこのようなすごい機器があることに驚きました。次に汕頭大学に行きました。汕頭大学は総合大学で、医学部の建物はアルファベットのOのような形をしていました。キャンパスの広さだけでなく、人体生命科学館というたくさんの模型を置いてある施設と実習設備の良さに驚きました。人体生命科学館は日本では倫理的な観点から設置に疑問を抱くような模型も多く、倫理観の違いを感じました。その日の夕食は国際交流センターという留学生の宿泊施設も入っているホテルのような施設でいただきました。本当に美しく、大学内にこんな施設があるとは本当に恵まれていると思いました。

4日目は訪問診療に同行しました。私たちが訪れた家庭は私たちの分まで椅子を出してくれるなど、とても和やかな雰囲気でしたが、先生の問診が始まると突然奥様が泣き出してしまいました。今までこういった場面に遭遇したことはなかったので、皆で驚いてしまいました。医療に携わるというのはこういう場面にも立ち会うものなのだと再確認しました。薬の処方においてですが、劇薬のモルヒネを普通に渡していることに驚きました。また、コデイン、モルヒネ、オメプラゾールなど今年の夏の薬理学で学んだことのある薬の名前が出てきたので、勉強しておいてよかったです。

5日目は2時間かけて眼科を見に行きました。思っていたよりも田舎で、道が舗装されていないのが印象的でした。その眼科の外来患者数はとても多く、チョウ先生という女医さんは午前中だけで3~4例の白内障の手術をすると聞きました。白内障の手術は細かいものなので、体力よりも精神的に疲れるので、早く若手にバトンタッチをしたい、とおっしゃっていました。兵庫医科大学では片目の手術に3万円かかるのに対し中国では両目と薬も含めて3万5千円と聞き、支援が充実しているなと思いました。

6日目はNICUを訪問したのが一番印象的でした。赤ちゃんたちはとても小さく、動いていることにまず感動しました。こんなに小さくても生きているんだと思い、赤ちゃんの生命力とこんなに小さくても生かすことのできる医療にも感動しました。次に訪れたのは口唇口蓋裂専門の形成外科でした。口唇口蓋裂専門があることにまず驚きました。口唇口蓋裂は以前まで外科で処置をしていたそうですが、医療の進歩により、早くから治療が行えるようになったため専門外科ができたそうです。この口唇口蓋裂ですが、遺伝子に原因があると考えられていると始めて知りました。この原因遺伝子がわかれば口唇口蓋裂の患者数は激減すると思います。ですから、早く原因遺伝子が発見されることを願いました。

7日目は産婦人科に行きました。産婦人科は女性にとって妊娠などのデリケートな問題を扱う科ですが、中国の産婦人科は日本と違い、ドアも開けっ放しで患者さんの後ろにすぐに患者さんがいるというプライバシーなんて感じさせないスタイルでした。女性は思いつめてしまいがちで処置が手遅れになることもあるのが産婦人科なので、このオープンなスタイルは女性にとって他の人も同じように悩んでいると知るきっかけ作りになるのではないかと思いました。その日の夜は皮から手作りの餃子をいただきました。とても美味しく、最後の夜を楽しみました。

今回の留学では書き尽くせないような体験をすることができました。本当にこの留学プログラムに参加することができてよかったと思います。

最後になりましたが、このような機会を与えてくださった兵庫医科大学の先生方、李嘉誠基金の方々、お忙しい中いろいろな案内をしてくださった汕頭大学の先生方とそのご家族、付き添いで来てくださった服部先生、一緒にプログラムに参加してくれた皆に心から感謝を申し上げます。本当にありがとうございました。