辛島 誠伸さん(第2学年次)

中国・汕頭大学留学を終えて

1年生の時、先輩がこの留学に参加していた時から興味をもっていました。中国での1週間は毎日が充実していて、多くのことを学ぶことができたと思います。このプログラムに参加できてよかったと思います。

1日目は朝早くから関西空港に集合し、3時間かけて広州に行き、乗り換えて1時間かけて汕頭に到着しました。当たり前のことですが、日本語はいっさい通じず、英語もろくに話せない私は、慌てふためき友達に助けを求めたことは今でもよく覚えています。汕頭空港に着くと先生が迎えてくださり、バスに乗ってホテルに向かいました。ホテルに向かう道中では中国での交通事情に驚きを隠せませんでした。鳴り止まないクラクション音、4人乗りしているバイク、信号を平気で無視する歩行者など、日本では見ることのない景色の連続でした。

2日目は農村の貧困地域の医療を見学しました。無料で健康診断、問診、薬の処方などを行っており驚きました。日本では保険制度が整っており、多くの人が病院に通うことが出来ますが、中国では保険制度がうまく浸透しておらず、病院に通いたくても通えない人が多くいるそうです。中国での地域格差を目の当たりにした気がしました。また、そこには現地の学校に通っている学生もボランティアをしていました。早い段階から患者と接することが出来ることはとても良いことだと思いました。

3日目は汕頭大学での医療を見学しました。まずは大学院。私たちが最近使った実験道具が並んでいて、親近感が沸き、何より興味がもてました。中には、1億円を超える実験器具もあり、「中国はまだまだ日本には追いつかない」という考えが一気に覆されたように感じました。病院では、廊下に入院患者がいたことに驚かされました。医者の数、患者の数、ベッドの数、とまだまだ問題点は多くあるように思えました。最後に汕頭大学。広大な敷地に建物が転々と並んでいて圧倒されました。人体展示の部屋は実際の臓器や骨を使って展示していてとても分かりやすかったですが、驚きの連続で頭がついていきませんでした。

4日目は、まず午前中にホームビジットを行いまいた。家に着くとひとりの女性が私たちを出迎えてくれました。笑顔も見せていたので、そこまで症状は重くないのではと思っていましたが、医師が話し出すと状況は一変。患者の妻も涙を流し出して、中国語で何を言っているかはわかりませんでしたが、症状は深刻なものであるということだけはよくわかりました。話を聞くと、患者は食道がんの病歴をもち、他にも高血圧、痛風と病風と病を多く抱えていたそうです。初めてこのような場面に立ち会ったので、心の整理がつかないまま、訪問が終わりました。午後はホスピスで働く人たちの説明を受けました。日本でも往診は行われていますが、無償で医療を行ってはいないと思います。経済的に厳しい人たちを救い、平等にするということは素晴らしいことだと思いました。一方で、訪問している世帯は120世帯と町の人数から考えると圧倒的に少なく、往診できない人たちには電話対応をしているそうです。

5日目は午前中に2時間ほどかけて田舎の病院に向かいました。眼科の病院で多くの白内障治療が行われていました。午前中だけで、手術を3~4例行うこともあると聞きました。医師の体力を考慮すると危険なことのように思えますが、その分技術は向上するそうです。視力の回復は生きる上で最も大切なことだと思います。これまでに見学したことや聞いたことは、すべては患者のQOLの向上につながる。李嘉誠さんはQOLの向上の大切さを意識して活動しているのだと思いました。

6日目は口蓋口唇裂治療センター、感染症、精神科を見学しました。口蓋口唇裂は見た目に現れることが問題なので早期治療が重要だと聞きました。現在の医学ではお腹の中にいる段階で口蓋口唇裂かどうかがわかるそうです。もし、自分の子供がそうだったらと問われた時は、考えさせられました。精神科では病棟に入れてもらいました。精神病の患者に囲まれたことが今までなかったので貴重な体験となりました。

7日目は産婦人科を見学しました。男子は先生が実際に診断している姿を見ることはできませんでしたが、問診している姿は見ることはできました。紙に絵などを描いて患者が分かりやすいように説明していて、患者に寄り添って医療を行っていることが伺えました。その後、この1週間でお世話になった先生方と餃子を一緒に作って美味しく頂きました。

医療以外のことも様々なことを体験させていただき、中国の文化に触れることが出来ました。私自身、初めての海外ということもあり、最初は戸惑いも多かったですが、あらゆることが新鮮で、とてもいい経験になったと思います。最後になりましたが、中国に滞在している間、毎日面倒を見てくださった先生方、このような機会を与えてくださった兵庫医科大学の先生方のおかげで中国に対する考えも変わりましたし、視野も広がったのではないと実感しています。この経験を将来必ず役立てたいと思います。