小畑 有未さん(第2学年次)

汕頭大学研修を終えて

私たちは今回11月11日から11月18日まで中国の汕頭で研修をしました。私が今回この研修に応募した理由は、人口の多い中国の医療は日本と比べてどのように違うのか、貧困の差はどうなのか、中国の人はどのような人なのだろうか、ということを実際目で見て知りたかったからです。

1日目はほとんど移動でした。中国までの飛行時間は長く、飛行機の中で寝たり、友達と話したりしながら過ごしました。まず驚いたのは、飛行機の乗り換え場所である広州空港でトイレに行ったときトイレが壊れていたらしく清掃のおばさんがここのトイレは壊れているから使えないということを中国語で伝えてきました。私たちは最初何を言っているのかわからなかったのですが、皆でジェスチャーしてなんとか意思疎通が出来ました。それからまた飛行機に乗り、汕頭に着いた後、ホテルに向かいました。ホテルにたどり着くまでに驚いたのが交通状況です。車が多くて私たちが乗っていたバスも、車や人すれすれを通過していました。日本との差に驚きました。ホテルでは汕頭大学の先生方がwelcome dinner で私たちを出迎えてくださいました。どの先生方も日本語、英語がお上手で苦労せずコミュニケーションをとることが出来ました。汕頭大学がどんな大学かの説明も聞きました。その説明を聞き、これから実際に行って見学できると思うとワクワクしました。

2日目は貧困地域でボランティア活動をしました。そこには貧困地域で普段医療を受けることが出来ない人が主に患者さんとして来ていました。驚いたのが、患者さんの血圧を計ったり、心音を聞いたりしていたのが学生だったことです。その学生は2年生だったのですが、自分たちが同じことを出来るかと言われたら出来ないので、自分たちと中国の学生のレベルの差を感じました。患者さんの相談ブースでは学生が医師の隣に座っており、医師がどのように診察しているのかを勉強していました。2年生の時点でそれが出来ていることが私たちの大学との大きな差だと思いました。現地の子供たちもたくさん診察に来ていました。子供とは言葉が通じなくてもコミュニケーションをとることができ、一緒に遊びました。子供はどこの国の子でもかわいいと思いました。
それから貧困地域に住む一人暮らしの方の所へ訪問診療に向かいました。その方の家はたたみ二畳分くらいの広さで真っ暗でした。正直こんな所に人が住むのかと思いました。やはりまだ中国では貧富の差が大きいことを実感しました。

3日目は汕頭大学第一病院、医学院、汕頭大学へ行きました。大学院の実験室に行ったのですが設備などは日本とあまり変わらない印象でした。大学病院は日本の大学病院と違って圧倒的な人の多さに驚きました。さすが人口世界一の国です。衝撃だったのが、エレベーターが来た途端、乗っていた人が降りる前に待っていた人が乗り込もうとしたことです。日本人の譲り合いの精神は素晴らしいと改めて実感しました。病院の中は少し汚く、入院患者さんのベッドが足りず、廊下で入院している人もいて、とても驚きました。引率してくださった服部先生いわく、日本ではありえないことだそうです。
それから漢方薬の作り方も見学しました。漢方薬を扱う人は特別な免許がいるそうで、昔ながらの道具で漢方の元となるものを切っていました。漢方専門の薬剤師さんが医師からのオーダーを見ながら薬を調合していました。漢方薬の中には蝉の抜け殻などもあり驚きました。
その後、汕頭大学に行きました。汕頭大学は兵庫医科大学と違い、とても大きくて設備も充実していました。医学部の校舎の中に人体博物館があり、自分の大学では見ることが出来ないものを見ることができ、大変勉強になりました。汕頭大学の学生が博物館の案内をしてくれたのですが、英語が堪能で、あまり英語を話せない自分と差を感じました。医学部の建物の中には他にシミュレーションルームがあり、そこで医療の実践的な練習ができ、兵庫医科大学との設備の差に驚きました。その後、図書館にも行きました。日本の地域にある図書館よりも大きく、蔵書数も学生の自習スペースも充実していました。体育館も国際交流センターもすべてが大きくて設備が充実していました。

4日目はホスピスの訪問診療の見学をしました。日本ではそのようなことをしたことがなかったので、少し緊張しました。まず、過去に食道癌を患っていた患者さんの家に行きました。医師や看護師さんたちが患者さんと話をしているとき、急に痛がっている夫を見た妻が泣き出しました。しかし、そこにいた医師や看護師さんたちは冷静に対応していました。自分がもし医師だったらどうするのだろうと考えたとき、おそらくパニックになるだろうと思いました。そのようなときに私も冷静に対応できる医師になりたいと思いました。
その後ショッピングをした後、ホスピスの説明を受けました。その中でとても印象的だった話が、末期癌の若い女の子の誕生日会を汕頭大学の学生がしたという話です。自分と同年代の学生と話ができたことでその日だけは女の子は元気になって笑顔も浮かべていたそうです。この話を聞いて、人は人と話すだけでも元気になれるのだと思いました。また、学生が普段からこのようなボランティアに参加していることにも驚きました。

5日目は農村地域にある眼科を訪ねました。最初は中国の農村の医療はあまり発達しておらず、医師の技術も低いのだろうと思っていました。しかし、実際に行くと自分が思っていたイメージと真逆でした。中国は人口が多いからこそ、医師が手術をする回数が日本にいるよりも多く技術が高いことがわかりました。しかし、農村地域には病院が一つしかなく深刻な医師不足で困っているそうです。この日訪ねた眼科も大きい病院でしたが、医師が3人しかいませんでした。病院数も少ないので、今中国政府が対策を考えているそうです。

6日目は口唇口蓋裂の病棟へ行きました。その病棟で、実際に手術を受けた後の患者さんを見せていただきました。口唇口蓋裂については学校の授業で習っていたので写真では見たことがありましたが、実際に見たことはありませんでした。手術した後の患者さんはきれいに直っており、あまり口唇口蓋裂を患っていたというのがわかりませんでした。日本での口唇口蓋裂の治療技術は分からないのですが、中国でも高い技術をもっていると思いました。 それから乳児のICUに行きました。人生で初めてICUに入り、初めて未熟児を見ました。小さな体にたくさんのチューブがつけられていてとてもかわいそうでした。途中で急変した赤ちゃんがいたのですが、その場の医師がすぐに対応しており、医師は常に緊張感を持っていなければならないということ、落ち着いて正確に処置する能力が求められることを改めて認識しました。
その後、感染症病棟に行きました。他の病棟と隔離されていて、中国でもちゃんと感染症対策がとられていることが分かりました。
さらに、汕頭大学の眼科病棟にも行きました。眼科だけで病院がすごく大きくて驚きました。また、病院の中に研究室もあって驚きました。私はこの日、朝起きた瞬間から眼が痛くて、実際に中国の眼科の先生に見ていただきました。診断は迅速、丁寧で日本と全く変わりませんでした。
次に訪ねた精神科は、庭や作品を作るところ、ゲームをするところなど設備が整っていてすごく充実しているところだと思いました。

7日目は午前中にお土産を買った後、産婦人科を見に行きました。産婦人科では不妊治療を行っている様子を見ることが出来ました。患者さんが治療をしている様子を見るのは初めてで、治療中すごく苦しそうでした。そんな患者さんを気にかけながらも、私たちに治療の説明を日本語でしてくださって本当にありがたかったです。
その後、今までお世話になった方々と一緒に餃子を作り、餃子パーティをしました。作り方を教えてもらいながら自分たちで餃子の皮から作りました。出来た餃子はモチモチでとてもおいしかったです。

この一週間は自分にとって忘れられない一週間となりました。このような体験が出来たのも兵庫医科大学と汕頭大学のおかげです。特に同行してくださった服部先生、たくさんの手続きをしてくださった国際交流センターの鳥井さん、そして程先生をはじめとする中国で案内してくださった先生方、留学を支援してくださった李嘉誠さん本当にありがとうございました。今回学び得たことを、今後これからの自分に活かしていきたいと思います。本当にありがとうございました。